岡野大嗣『サイレンと犀』(2014) E席の車窓に海がひろがってそれをAより見ているこころ |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年12月11日 / 新聞掲載日:2018年12月7日(第3268号)

E席の車窓に海がひろがってそれをAより見ているこころ
岡野大嗣『サイレンと犀』(2014)

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電車の中でA席に座りながら、反対側のE席の車窓にひろがっている海を眺めている。A席からも見渡せるくらいに車内が空いているのだろう。E席も無人か、もしくは景色に関心を払わないで車窓が全部見えるくらいにリクライニングシートを倒した客が陣取っているかだろう。いかにも日常にありえそうな一コマを、「A」や「E」といった席の記号で表現することによって、全席指定の車内が刑務所のように整然と管理された空間であるかのような印象を与えてくれる歌である。このように、社会に潜む「管理」の萌芽を見抜いてシニカルな歌に転換するのはこの作者の得意とするところだ。

ところでこの歌の舞台、どんな列車なのだろう。東海道新幹線もAからEの席があるが、海側がA席、山側がE席である(なので富士山がよく見えるE席から埋まっていくとか)。E席の方が海側になる車両はあるのだろうか。調べてみると、どうやら新大阪駅と鹿児島中央駅をつなぐ新幹線「みずほ」「さくら」の下り列車ならば、E席が海側に面することになるようだ。いわゆる九州新幹線鹿児島ルートである。新水俣駅から出水駅の区間は、E席の車窓から八代海を見ることができる。もっとも、トンネルの多い路線のため海が見えるのはほんの少しだけのようだが。この歌でイメージされるような、ぱあっと海が車窓に広がる感じではなさそうだ。なおこの区間、「さくら」なら停車するけれど、「みずほ」だと通過するのでご注意を。(やまだ・わたる=歌人)
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