参加者:デーナ・ルイス(翻訳家)、高橋良平(フリー編集者)、大和田始(翻訳家) 司会・本文構成:岡和田晃 文字起こし:柳剛麻澄 山野浩一氏追悼パネル 電子版限定(4) SFセミナー2018合宿企画 於:鳳鳴館森川別館【東京】|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月14日

参加者:デーナ・ルイス(翻訳家)、高橋良平(フリー編集者)、大和田始(翻訳家) 司会・本文構成:岡和田晃 文字起こし:柳剛麻澄
山野浩一氏追悼パネル 電子版限定(4)
SFセミナー2018合宿企画 於:鳳鳴館森川別館【東京】

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第1回
●1:今後、どの小説を英訳する?

岡和田 
お越しいただいてありがとうございました。昼の企画(山野浩一氏追悼パネル 電子版限定(3))の続きということで、ざっくばらんな話を聞いていければと思います。
山野浩一さんと一緒に70年代のNW-SFワークショップをやられた方というのが今回のゲストの基準として選んでおりますので、昼の企画では語り足りなかった事からお話いただければと思います。
ではデーナさんの方から。開始前の雑談で山野さんの次の小説を訳すとしたら「X電車で行こう」も面白いんじゃないかという話をされていましたが……。
デーナ 
「鳥は今どこを飛ぶか」を翻訳した当時、なにを翻訳するかを考えながら、山野さんの短編をいくつか読みまして、その中で一番好きになった作品が「鳥はいまどこを飛ぶか」と「X電車で行こう」だったんです。けれども、どちらを実際に翻訳しようかと迷いまして、当時は1970年代の終わり頃だったので、海外の読者は「X電車で行こう」に出てくるX電車の東京の地下鉄網での動きが絶対にわからないだろうと思い、翻訳不可能と思っていたんです。
しかし今ですと、海外での漫画やアニメの普及で、向こうのファンがコミケに参加するために日本へ来たり、日本のアニメが米国の映画館で全国上映されてたりしていますし、また、先に岡和田さんが指摘したように山野さんの「X電車で行こう」の出版から何十年も経過しており、地下鉄の新しいラインも作りあげられていますので、今なら海外の読者は大雑把に「東京にはいっぱい地下鉄が通っている」と知っているので、「X電車で行こう」がやっと翻訳可能になったのかなと思います。
岡和田 
当時の電車のラインと今では全然違うので、かえって訳しやすいんじゃないかみたいな話?
デーナ 
えぇ、えぇ。その頃は無理だったと思うんですけど、今ですとかえって可能になっているかと思います。
立花眞奈美(SFセミナースタッフ) 
東京でも大阪でもそうだと思うんですけど、ものすごい、迷路みたいな地下鉄があるのはもうけっこう知られてきているということ?
デーナ 
えぇ、そうです。海外でも知られてきています。今なら向こうでは、東京メトロの地図が印刷されているようなアクセサリーまでありますので。ですから、その当時は日本の事情が海外で知られていなかったために翻訳不可能だったものが、今では読者の日本についての知識が上がっていて、その結果翻訳可能になっているというふうに思っています。そして、いま「X電車」の次に翻訳したいと思っている作品は、最近『NOVA』に出ていた――。
岡和田 
『NOVA 書き下ろし日本SFコレクション10』(河出文庫、2013年)の「地獄八景」?

デーナ 
えぇ。しかし、「地獄八景」は、なかなか文化的に違うので訳しにくいかと思います。
岡和田 
落語が元ネタなので。
立花 
鳥の絵がありましたね。ホシヅルに似ている(岡和田注:「Where do the birds fly now?」のタイプライター打ち英訳原稿に手書きされているホシヅルの絵のこと)。
岡和田 
ホシヅルですね。日本アニメが海外で見られるようになったのでやりやすくなったというのは、「X電車で行こう」がりんたろう監督でアニメ化されているからですね。
デーナ 
いいえ、そうでもありません。「X電車」のアニメ版が大変短いもので、海外で広く普及しなかったのであまり知られてないと思います。特にアメリカ周辺では、見ている人は非常に少ないと思います。
岡和田 
30分くらいですね。そうですね、アメリカの人で知っている人は少ないかなと私も思います。
デーナ 
個人的には嫌いですけど(笑)。山野さんの伝えようとしている事とはなんか違うような。
岡和田 
どこまで脚本に山野さんが噛んでいるのか不明ですが、だいぶ日本のアニメのコードに合わせようとしてる感がありますよね。
「地獄八景」をやりたいというのはどうしてですか?
デーナ 
その当時山野さんが自分の文章(『NOVA10』に載っていた作者コメント)で書いていたんですけど、ずーっとフィクションを何も書いていなかったので、編集者に何か楽しいものを書いてくれと頼まれた時点で、自分でも驚いたんですけど、「地獄八景」が意外とすっすっすっと出てきた、と。そしてまた、亡くなられる前に最後に出版されたフィクションでもあり……そのふたつの要素が重要です。そして最後に、海外の、少なくともアメリカ人の死後観とだいぶ違うので、みんな面白がるんじゃないかな、と。
岡和田 
そうですね。かなり仏教的な要素が入ってますよね。
デーナ 
是枝裕和監督だったか、20年前くらいに出た映画で、亡くなるとビルに入って、自分の人生で一番大切な、至福の、宝にしている一瞬を再現するスタジオがあるという映画なんですけど、「地獄八景」を読んでいると、それと同じような印象があります。
山野浩一と足立正生の共作による脚本『なりすまし』

岡和田 
『ワンダフルライフ』(1999年)との類似性を感じる、ということでしょうか。
山野さんは2005年か2006年に映画の脚本を一本書いているんですね。『なりすまし』という脚本で、これは映画監督の足立正生さんと共著で、製本までされて関係者向けの冊子として配られています。これは携帯電話や女子高生、当時は村上ファンドやライブドアの詐欺などがあったのですが、そういった当時の現代的な風俗要素もかなり入っています。
山野さんは他にも単行本になっていない作品があって、この今映しているのが「M.C.エッシャーのふしぎ世界」。これは「GORO」という若者向けの雑誌に連載していて、エッシャーの絵に文を添えているんですね。なぜこれが入れられないかというと、エッシャーの絵というのが大変版権料が高いんです。
デーナ 
絵なしでわかりますか?
岡和田 
わかります。あった方がなおいいでしょうけど。

「地獄八景」は英語で読むと味わいが違いそうで読んでみたいですね。
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