はじめての選挙権 書評|眞方 忠道(南窓社 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月15日 / 新聞掲載日:2018年12月14日(第3269号)

はじめての選挙権 書評
希望の書、連帯の書
最終的に目指される「心の革命」

はじめての選挙権
著 者:眞方 忠道、千葉 眞
出版社:南窓社
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 本書は若者の政治的無関心という問題に応える書であり、当事者に「心の革命」(pp. 60―61)、「魂の立て直し」(pp. 42―43、117)を奨めるねらいを秘める。では、本書に出遭い、投票行動へと促される若者が直ちに増えるかと問えば、現実との溝は深い―特に、政治に背を向け、活字とは異なる表現媒体に浸っている集団を想像すれば。

背景にある問題は古くて新しい。近代代表制民主主義の歴史を顧みる時、商工業中心の分業社会における市民の政治的無関心という問題は、早くも18世紀、マンデヴィル、ルソー、スミスらの示唆に留まらず、ファーガソン『市民社会史論』(1867)第4部で論じられている。その後現代にいたる選挙権拡大の歴史において政治的無関心、さらには若者の低投票率の問題も、日本に限らず繰り返し浮上する。

2015年公職選挙法が改正され18歳にまで選挙権が下げられてからの国政選挙の投票率が、20歳代投票率が3割台にまで下がるということは、5割台全体投票率と併せて確かに日本の民主政を脅かす意味で深刻である。この状況で、員数を絶対視する党派はもちろん政治過程、選挙行動の専門家も要因を分析する一方、権力に群がる者は利害打算から数々可能な戦略を試行していることも間違いない。こんな日本社会に本書をおけば、さまざまな社会的評価軸から先行類書との比較も併せ甲乙多様な評価を考え得る。

とはいえ、評者は、本書の編者らの固有の意図に立って内在的評価を試みる時、現代の政治的無関心にシニカルになることを編者らと共に選択しない。むしろ、民主主義が機能不全を起こす時代にあって、本書を希望の書、連帯の書として歓迎する。

ではどこに希望を見出すか。本書は、投票行動にあって自ら一人一人が投票先を決定するためのしっかりしたものさしを築くことを第一に奨める。このために、身近な日本の諸課題が、多様な背景の複数の論者により、歴史的考察、外国事情、国際ガバナンス、生物学的人間論等から掘り下げられ、読者自身自己の考えに気づき相対化するための工夫が施されている。そこで最も重要なことは、目先の政治的目標の達成ではない。もちろん現代の政治課題を無視しているわけではないが、最終的に目指されていることは「心の革命」である。自ら考え抜き自らの良心に向き合うことの重要性を問うている。

本書は、隠れた党派的プロパガンダとは別次元にある。副題「年若き友に」という呼びかけは精神の清新さへの希求とも映る。それと同時に、概して両論併記でありつつも諸論の論行が結ぶ一つの焦点は、人類の普遍的原理を協働して追求する営みである。

現代日本の政治課題を出発点としながら、この地球に生きる人間として、国境の枠組みにとらわれることなく、いかにして地球規模で全人類的に普遍的に成り立つような原理に立てるかを各所で考えさせられる。ここに、評者は、21世紀の地球に生きる人類に問われている、世界市民による民主主義の可能性を見る。
この記事の中でご紹介した本
はじめての選挙権/南窓社
はじめての選挙権
著 者:眞方 忠道、千葉 眞
出版社:南窓社
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