二〇一八年の収穫!! 41人のアンケート|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月14日 / 新聞掲載日:2018年12月14日(第3269号)

二〇一八年の収穫!!
41人のアンケート

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「君たちはどうひょっこりするか」
illustration:矢部太郎 (Twitter:@tarouyabe)
年末恒例のアンケート特集「2018年の収穫」です! 今回もさまざまな分野の専門家、研究者、作家、書評家、編集者、書店の方などに、今年印象に残った三冊を自由に選んでいただきました。今年の読み忘れはありませんか? 見逃していた一冊がきっと見つかるはず!  (編集部)

【2018年の収穫 執筆者一覧】
青木亮人(近現代俳句研究者)/荒川洋治(現代詩作家)/江川純一(東京大学助教)/江南亜美子(書評家)/笈入建志(往来堂書店店主)/小野俊太郎(文芸評論家)/角田光代(作家)/角幡唯介(作家・探検家)/風間賢二(幻想文学研究家・翻訳家)/金原瑞人(翻訳家)/神藏美子(写真・映像作家)/橘髙真也(小学館・女性セブン編集部)/栗原康(アナキズム研究)/越川芳明(明治大学教授)/小林章夫(帝京大学教授)/小松美彦(東京大学教授)/佐久間文子(文芸ジャーナリスト)/佐々木力(中部大学高等学術研究所特任教授)/佐藤淳二(京都大学教授)/佐藤洋二郎(作家)/重信幸彦(民俗学)/宍戸立夫(三月書房店主)/柴野京子(上智大学准教授)/外岡秀俊(ジャーナリスト)/田中和生(文芸評論家)/谷藤悦史(早稲田大学教授)/豊﨑由美(書評家)/中村邦生(作家)/中森明夫(作家・アイドル評論家)/西野智紀(書評家)/東直子(歌人・作家)/福井健太(書評家)/福間健二(詩人・映画監督)/藤田直哉(SF・文芸評論家)/堀千晶(仏文学)/枡野浩一(歌人)/松永正訓(小児外科医・作家)/真鍋厚(評論家・著述家)/山本貴光(文筆家・ゲーム作家)/吉田裕(一橋大学特任教授)/明石健五(本紙編集長)
第1回
小林 章夫

グレアム・スウィフト『マザリング・サンデー』(真野泰訳、新潮クレスト・ブックス)。タイトルは「年に一度の里帰りの日」の意味。孤児院育ちのジェーンはこの日に忘れることのできない経験をする。恋人に会い、書斎でゆっくり本を眺める。そんな時、悲劇が起きる。年老いて作家として大成したジェーンはインタビューに答える。この中編を読んで何とも言えない気分に襲われた。登場人物の念入りな描き方、それを見事な日本語に翻訳した手腕。細部まで味わうと、せわしない現世を忘れ去る。

深緑野分『ベルリンは晴れているか』(筑摩書房)は、第2次大戦後、共同統治下に置かれたベルリンを舞台にしたミステリ。わくわくするような舞台設定の下で展開される物語だが、これも登場人物が目に浮かぶような描き方。若い日本人女性にこれほど大きな構想ができ、しかも微細な人間観察ができるとは。

渡辺昌宏『香りと歴史 7つの物語』(岩波ジュニア新書)は香りというはかない感覚に惹かれることが多い筆者にとって、実に豊かな歴史を味あわせてくれたもの。(こばやし・あきお=帝京大学教授・英文学)
外岡 秀俊

スコット・ギャロウェイ『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』(渡会圭子訳、東洋経済新報社)。IT界の四強グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの成り立ちと戦略を克明に活写する。四強に象徴される「勝者総取り」経済の仕組みをこれほど明快に論じた本はない。「トランプのアメリカ」の背景に潜む現実を理解する上で必読の書。

沢木耕太郎『銀河を渡る』(新潮社)。ベテラン作家の二十五年間の全エッセイ。好奇心を失わない瑞々しい筆と、読者を驚かせる熟達した技に、心地よい余韻が残る。『檀』や『凍』などの名作の舞台裏や高倉健に贈るメッセージなど、久々に読む愉しみを味わった。

橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)。新自由主義経済下で生じた格差が、負の遺産として次世代に連鎖することを膨大なデータをもとに示した。今後の社会の在りようを考える上での基本書といえる。(そとおか・ひでとし=ジャーナリスト)
荒川 洋治

シャーウッド・アンダーソン『ワインズバーグ、オハイオ』(上岡伸雄訳、新潮文庫)は、アメリカ現代文学の先駆者アンダーソンの代表作の待望の新訳。オハイオ州の架空の町ワインズバーグを舞台に、そこに暮らす人びとの、きびしい個別の軌跡を、あたたかみのある文章で描く。幾多の新趣向が登場。文学の感興を一気に高めた名作だ。

草森紳一・嵩文彦『「明日の王」詩と評論』(未知谷)は、草森紳一が、嵩文彦の詩集『明日の王』を論じる長文の評論(このほど発見された)と、対象となる詩集全編で構成。詩も評論も密度が高く、魅力に富む。「詩」と「詩論」の関わりを示す出色の著作。

坪内稔典『松尾芭蕉――俳句の世界をひらく』(あかね書房)は、子ども向けのシリーズ〈伝記を読もう〉の一冊。幼少期からの松尾芭蕉の歩みを、平明かつ印象的な表現でつづる。俳諧の基本事項や弟子たちの動静も鮮やかに伝わる好著。文学の理解は、このような書物によって前に進むのだと思う。(あらかわ・ようじ=現代詩作家)
柴野 京子

辛島デイヴィッド『Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち』(みすず書房)。村上春樹はなぜ「世界のムラカミ」になりえたのか?その契機をつくり、世界文学に押し上げていった編集者、翻訳者、出版社、エージェント。夥しいインタビューから、「七人の侍」さながらに、文学という商品を世に送り出す媒介者たちの戦略と情熱が立ち上がる。

内田洋子『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(方丈社)。偶然みつけた古書店は、本を作り、売り歩くことを中世から生業とする小さな村への入口だった。書物史の世界がそんなところに現存するのに驚き、不勉強を恥じ、軽やかにそれを引きあてて披露する著者の才覚に唖然とした。

若林恵『さよなら未来 エディターズ・クロニクル2010―2017』(岩波書店)。書かれた地点が過去の「最前線」であるのに何ひとつ古びず、今が今であり続けることを教えられる。はったりのない知性が爽快だ。(しばの・きょうこ=上智大学准教授・出版流通論)
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