給食の歴史 書評|藤原 辰史(岩波書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年12月15日 / 新聞掲載日:2018年12月14日(第3269号)

給食の歴史

給食の歴史
著 者:藤原 辰史
出版社:岩波書店
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給食の歴史(藤原 辰史)岩波書店
給食の歴史
藤原 辰史
岩波書店
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〈給食〉という言葉から何を想像するだろうか。世代間によって、あるいは地域間によって様々な差があるだろう。本書は、書名が示すように、日本の給食について、世界各国の給食史も踏まえながら、その一三〇年に及ぶ歴史を正面からとらえ、多面的な領域から検証した一冊である。

著者は、第1章「舞台の構図」で、給食を次のように定義する。「食事時間を挟んで関係者が滞在する必要のある施設、たとえば工場、病院、学校で、まとまった量の食を配分して集団で食べること、またはその食べもののこと」(六頁)。本書では、主に学校給食にスポットを当て、五つの視角から論じる。①子どの貧困対策という視角、②「災害大国」の給食という視角、③運動史からの視角、④教育史からの視角、⑤世界史のなかにおける給食という視角――「給食とは実に多面的な分野を往来する魅力的かつ複雑な現象である。政治史、経済史、農業史、災害史、科学史、社会史、教育史、運動史。さまざまな歴史分野の統合によって初めて全体像が明らかになると言えるだろう」(二七―二八頁)。

つづく第2章から第5章では、「萌芽期」「占領期」「発展期」「行革期」という四期に分けて論じていく。そもそも日本近代における給食は、いつどこで発祥したのか。一八八九年、山形県の私立忠愛小学校で開始されたという。貧困子弟の教育が念頭に置かれてのことだった。「子どもの貧困」の問題は、それ以後も一貫して給食の背景にありつづける(「給食は、一度だって貧しい学童を救う任務から降りたことはない」(一七二頁)。

戦後の給食に関しては、一般的には、アメリカの影響下にあったことのみが強調されてきた(「アメリカ小麦戦略」一六二頁、等々)。それが一面的な見方でしかないことを、第3章「黒船再来」、第4章「置土産の意味」で検証する。また、給食に関しては、公的な制度で、上からの決定に学校などが従うイメージが強いが、細かく調べていくと、そうではない側面もあったことが明らかにされる。詳細に論じるスペースはないが、子どもたちのために、給食を、少しでも安全でおいしいものにしようと、日々努力を重ね、自らアイデアを出しつづけた現場の人間(教師や主婦、学校栄養職員)がいたのである。彼ら/彼女らの活動は、ほとんど知られていない。ここがひとつの読みどころである。

以上、5章の検証を経て、最終章で、「来るべき時代の給食のあり方」を模索する。「食べることは生きることの基本である。〔中略〕日本の二〇世紀史を規定する水銀汚染も放射能汚染も給食から学べる。人間がいきものの連鎖のうえにしかその生を維持できないことは、給食が教えてくれる」(二五五頁)。通読後、阿部和重『シンセミア』を再読したくなったことを付け加えておく。(A)
この記事の中でご紹介した本
給食の歴史/岩波書店
給食の歴史
著 者:藤原 辰史
出版社:岩波書店
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