ファスビンダー/同性愛の表象 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く (86)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2018年12月18日 / 新聞掲載日:2018年12月14日(第3269号)

ファスビンダー/同性愛の表象 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く (86)

このエントリーをはてなブックマークに追加
ドゥーシェ(左)とボーヴォワ(右)
(グザヴィエ・ボーヴォワ監督『メメント・モリ』より)
JD 
 ドイツ人だけでなく、フランスの多くの観客も、ファスビンダーを受け入れられていません。彼の映画にはフランス人達の受け入れたくない歴史が語られているのかもしれません。私個人は、ファスビンダーの映画をこの上なく評価しています。加えて、彼のことはよく知っていました。ファスビンダーだけではなく、ヴェルナー・シュレーターとダニエル・シュミットとも交流がありました。ファスビンダーは、その集団をまとめ上げるような役割をしていました。ファスビンダーについて、ただ一言選ぶのなら、驚かされるような映画を作ったと言うしかありません。過ぎ去ったばかりの20世紀において、最も仰天させられる作家でした。たった10年、15年の短い期間で、彼が行なったことを考えてください。映画を作り、舞台演出を行い、多くの書き物を残しました。当然、俳優でもありました。まるで幻覚を見させるようにして、多くの作品を残しました。一人の偉大な人間だったのです。あまり感じの良い人ではなく、本当に仲良くなれたとは言えませんが、芸術家としてのファスビンダーには、言葉を失ってしまいます。
HK 
 ただ単に映画作家だったわけではなく、むしろ「創作家」だったのですよね。
JD 
 その通り。ファスビンダーはクリエイターです。そして、彼の映画は唯一無二のものであり続けています。残念ながら、ファスビンダーに続くような人は出てきていません。今の所は、彼の仕事を引き継げている人はいないのです。
HK 
 一応、クリストフ・シュリゲンズィーフがいました。すでに死んでしまいましたが。
JD 
 記憶にありません。いい映画作家でしたか。
HK 
 僕は好きです。1997年に、かつてファスビンダーの映画に出演した俳優たちを集めて、ニュージャーマンシネマの歴史を締めくくる映画を撮っています。ファスビンダーへのオマージュとパロディだったと思います。

ドゥーシェさんは、「ファスビンダーが今日の映画の基礎になっている」とよく語っていますが、カンヌやベルリンに出品されている映画を見ると、扱っているテーマの点で、確かにその通りだと思わされます。例えば、同性愛を取り扱っているような映画は、映画館に行けば必ずと言っていいほど、封切られています。
JD 
 同性愛を扱っている映画は、近年増えつつあります。それは、長年にわたり抑圧され禁じられていたことへの反動です。実際には、映画における同性愛の表現とは見えないところで行われていたのです。もし映画を読み取ることができるのならば、特にアメリカ映画において、そのような表現を見ることができます。
HK 
 例えば、ニコラス・レイですね。
JD 
 その他にも多くの映画作家の作品に見ることができます。ニコラス・レイに関しては、はっきりと感じられる事柄です。映画の見かけ以上に同性愛という主題が見えますが、直接的に物語として取り扱うことはありませんでした。全ては、ほのめかされているだけです。同性愛を取り扱うことができるようになったのは、1968年以降です。フランスでは68年の革命があり、その中で唯一勝利だったと言えるのは、世間の同性愛に対する認識が変わったことです。当時まで、世間から疎まれ、犯罪とまでされていた同性愛が、表向きには認められるようになり始めたのです。しかし現状では、ホモセクシャルという問題は陳腐な流行りになってしまっています。あらゆるところで、誰もが同性愛を取り扱った作品を作っています。しっかりと取り扱われてはいません。それでも限られた映画作家が、自分自身の問題と関わる時にだけ、面白いと思わせる作品を作っています。ファスビンダーはその点で、自分自身の問題の一部として、同性愛というところからも映画を作れていました。彼は、世間で言われるバイセクシュアルでした。しかし、多くの場合、映画を作る人と実生活が関わらない場合…例えばテシネを例にしてもいいのですが、彼は本当に同性愛を取り扱えているとは言えません。   〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
このエントリーをはてなブックマークに追加
ジャン・ドゥーシェ 氏の関連記事
久保 宏樹 氏の関連記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」のその他の記事
ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」をもっと見る >
芸術・娯楽 > 映画関連記事
映画の関連記事をもっと見る >