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American Picture Book Review
更新日:2018年12月25日 / 新聞掲載日:2018年12月21日(第3270号)

『異義あり』

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『I Dissent』
Debbie Levy著・Elizabeth Baddeley画
(Simon & Schuster)
米国最高裁判事9人の中で85歳と最高齢のルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBG)は、今年11月に転んで肋骨を3本も折った。しかし、これしきのことで職務を放棄するRBGではない。過去に2度、ガンを克服している。今回もすでに法廷に復帰し、バリバリのリベラル判事として本書のタイトルともなっている「異議あり!」を元気に発し続けている。

RBGは一見、小柄でオシャレな老婦人だが、アメリカ人女性の生き方を大きく変えた偉人だ。1933年、ニューヨークのブルックリンでユダヤ系の家庭に生まれたRBGは学校の成績は抜群でスポーツも得意だったが、家庭科はまるでダメだった。「なぜ女の子は料理?男子みたいに木工がしたいのに!」

RGBが男女の不平等を思い知らされた瞬間だ。やがてロースクールへと進むが、当時は「女性は家庭に」という時代であり、ユダヤ系への差別もあった。いくつもの障壁に阻まれたが、夫に恵まれた。妻の苦手な料理を一手に引き受けてくれたのだった。それでも子育てと勉学/仕事の両立は厳しいものとなったが、RBGは女性の権利のために戦う弁護士として名を知られていく。女性だけでなく、妻に先立たれて子育てする男性に、当時はなかった寡夫の権利を勝ち取ることもした。その功績を認めたクリントン大統領に指名され、RBGは米国史上2人目の女性最高裁判事となった。

アメリカは大統領に大きな注目が集まるが、終身制の最高裁判事こそ、国の行く末に大きな影響を与える。中絶、同性婚、人種、信仰、教育など重要な問題が最高裁によって判断され、国が軌道修正していくためだ。判事の欠員が出ると大統領が新たな判事を指名する。高齢のRBGはオバマ大統領の任期中に辞任すべきという声が出た理由だ。共和党の大統領に交代してから退くと、保守派の判事が指名されてしまうのだ。だが、RBGは「可能な限り、判事を続ける」とはねのけた。当時、大統領選の最中にあったトランプを「思いついたことを何でも口にする」と酷評することもした。

この辺りから若い女性たちがRBGをヒーローとみなすようになった。同郷ブルックリン出身の巨体ギャングスタ・ラッパーThe Notorious B.I.G.になぞらえてRBGと呼ばれるようになり(この愛称は本人も気に入っている模様)、トレードマークである法服に着ける襟飾りを模したアクセサリーも発売された。伝記が出版され、半生を描いた映画も公開間近だ。そして、この絵本である。RBGの子供時代、1930〜50年代風のタイポグラフィを多用した本作は古き良きニューヨークへのノスタルジーを醸しつつ、少女はもちろん、大人の女性をも奮い立たせる内容となっている。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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