2018年 出版 動向 児童書、ビジネス書前年並み、文庫、新書、学参、実用書減少傾向 違法海賊版サイト、取次再編など|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月24日 / 新聞掲載日:2018年12月21日(第3270号)

2018年 出版 動向
児童書、ビジネス書前年並み、文庫、新書、学参、実用書減少傾向
違法海賊版サイト、取次再編など

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2018年の出版物販売実績は前年比約6%減となる見込みだ。内訳は書籍が約3%減、雑誌が約10%減の見込みで、低調な傾向が続いている。書籍は児童書やビジネス書は前年並みとなったが、文庫本、新書、学参、生活実用書など減少したジャンルが多かった。雑誌は豪華付録や人気アイドルを起用した特集で単発的に売れる号はあったが、休刊点数が増加し、定期誌の販売減少が続くなど、厳しい状況は変わらない。紙、電子版ともにコミックスの販売に影響を与えたとみられる違法海賊版サイトに関しては、4月に政府がサイトブロッキング(接続遮断)を各プロバイダーに要請し、業界内外で話題となった。この効果もあってか、夏以降はコミックスの販売が復調した。

出版物の輸送問題が取り沙汰されるなか、取次再編に関する大きなニュースも多かった。5月に楽天は、大阪屋栗田に追加出資し、子会社化すると発表。11月にはトーハンと日本出版販売が物流協業の検討を開始する基本合意書を締結。大手取次両社が協業を検討するのは、創業以来初となる。また、18年は西日本を中心とした記録的な豪雨や大阪府北部地震、北海道胆振東部地震など自然災害が相次ぎ、出版物の輸送遅延に影響した。

文芸書では、70代女性の生きる姿を東北弁の語り口で描いた若竹千佐子『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)が1月に芥川賞を受賞、50万部を突破するヒットとなった。著者の若竹千佐子は63歳の処女作にして同賞を射止めた。7月発表の芥川賞は高橋弘希『送り火』、直木賞は島本理生『ファーストラヴ』に決定し、文藝春秋のダブル受賞となった。4月に発表された第15回本屋大賞は辻村深月『かがみの孤城』(ポプラ社)に決定、受賞後もコンスタントに売れ続けた。川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』(サンマーク出版)は、9月に映画化され、シリーズ3作品で120万部を突破。10月にテレビドラマ化された池井戸潤『下町ロケット ゴースト』『同 ヤタガラス』(いずれも小学館)は各20万部超のヒット。文学賞受賞、映像化をきっかけに売り伸ばす動きは18年も顕著だった。「オーバーロード」(KADOKAWA)、「転生したらスライムだった件」(講談社)を筆頭としたweb発小説シリーズは引き続き好調。このほか〝中学生作家〟としてテレビ等で話題となった鈴木るりか『さよなら、田中さん』(小学館)は10万部超まで伸ばした。
ノンフィクション・読み物では、17年8月発売の『君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)が上半期を中心に猛烈な勢いで売れ、漫画版が203万部、新装版が52万部に達した。お笑い芸人・矢部太郎のコミックエッセイ『大家さんと僕』(新潮社)は第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞(4月発表)。幅広い世代から人気を集め、74万部の大ヒットとなった。タレント本では女優・石田ゆり子が日常を綴ったフォトエッセイ『Lily』(文藝春秋)が女性の支持を集めた。アイドル写真集が好調で、『乃木坂46写真集 乃木撮VOL.01』(講談社)は発売前から予約注文が殺到し、31万部のヒット。18年にブームとなったテレビドラマのガイド本『土曜ナイトドラマ おっさんずラブ公式ブック』(文藝春秋)はファンから人気で16万5千部に伸長した。スピリチュアル要素の強い、すみれ『かみさまは小学5年生』(サンマーク出版)は長期的に売れ続け、27万部に。英語学習へのニーズの高まりがあり、清水建二・すずきひろし『英単語の語源図鑑』(かんき出版)は30万部超の異例のヒットとなった。

ビジネス書は、ライトな読み物にヒットが多く、売り上げは堅調に推移した。特に田村耕太郎『頭に来てもアホとは戦うな!』(朝日新聞出版)は店頭での仕掛け販売やテレビでの紹介で大ブレイクし、60万部に達した。同様に人間関係のメンタル対策とビジネスを掛け合わせたテーマが人気で、堀江貴文・西野亮廣『バカとつき合うな』(徳間書店)や榎本博明『かかわると面倒くさい人』(日本経済新聞出版社)なども支持された。SBクリエイティブのビジネス書は広告展開が奏功し、齋藤孝『大人の語彙力ノート』(30万部)、落合陽一・堀江貴文『10年後の仕事図鑑』(23万5千部)、伊藤羊一『1分で話せ』(20万部)などヒットが相次いだ。

実用書は、牧田善二『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社、48万5千部)や石村友見『ゼロトレ』(サンマーク出版、80万部)、小林弘幸『死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい』(幻冬舎、16万5千部)などテレビで紹介され、大々的に広告展開した書籍が伸長するケースが目立った。学参は前年に「うんこ漢字ドリル」シリーズ(文響社)が大ヒットした反動と、教科書準拠版などの不振で大幅減となった。
トピックが多かったのは、児童書だ。なかでも今泉忠明監修「ざんねんないきもの事典」(高橋書店)がシリーズ3点で270万部を突破する大ヒット。ほかにも丸山貴史『わけあって絶滅しました。』、ブルック・バーカー『せつない動物図鑑』(いずれもダイヤモンド社)などユニークな動物生態本が人気を集め、売れ行きを牽引した。5月にポプラ社が発表した「小学生がえらぶ!〝こどもの本〟総選挙」で、1位となった「ざんねん~」のほか、「おしりたんてい」シリーズ(ポプラ社)などは売り上げ増につながった。小学館、講談社のDVD付き学習図鑑の売れ行きも好調だった。

文庫本は、18年も5%以上のマイナスとなる見込み。東野圭吾、湊かなえといった定番人気作家作品や映像化作品以外は不振という状況が続いている。8月に漫画家のさくらももこが逝去し、代表作であるコミックス「ちびまるこちゃん」とともに、『もものかんづめ』『たいのおかしら』などの集英社文庫のエッセイに再び注目が集まり、大増刷がかかる動きもあった。教養新書は、下重暁子『極上の孤独』(幻冬舎新書)や17年から続く日本史ブームで磯田道史『日本史の内幕』(中公新書)などは売れたが、全体的に低調だった。(くぼ・まさはる=出版科学研究所研究員)

    
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