2018年回顧 日本史 古代史 歴史研究の根幹である 史料に関する研究成果|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月23日 / 新聞掲載日:2018年12月21日(第3270号)

2018年回顧 日本史 古代史
歴史研究の根幹である 史料に関する研究成果

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今年の収穫として注目されることは、地味だが歴史研究の根幹である史料に関する研究成果が多いこと。代表的な収穫が遠藤慶太・河内春人・関根淳・細井浩志『日本書紀の誕生』(八木書店)で、まず前史として天皇記や古事記・帝紀を論じ、日本書紀の成立・受容と展開に関して各自分担執筆している。大平和典『日本後紀の研究』(国書刊行会)は欠脱が多い日本後紀の諸写本について検証、つづいて編纂過程と編纂者である藤原緒嗣、二十巻本に関して詳述する。正史である日本後紀の本格的研究書。

つぎに古事記・万葉集や木簡などを扱った収穫。菅野雅雄『古事記講話』(おうふう)、古事記の成立を述べ、神話についても論述する。馬場基『日本古代木簡論』(吉川弘文館)は、木簡研究の第一人者である著者が、長年の研究蓄積を披歴したもの。字面だけでなく、作る・使う・捨てる場面など木簡を多面的に考察する。奈良文化財研究所で日々木簡に触れる著者ならでは成果。山本幸男『正倉院文書と造寺官人』(塙書房)は、正倉院文書を駆使して写経所の官人である安都雄足らの実態を解説する。瀧音能之『風土記から見る日本列島の古代史』(平凡社)は、風土記をもとに古代人の祈り・日々の楽しみなど庶民の生活を注視する。荊木美行『東アジア金石文と日本古代史』(汲古書院)は、広開土王碑などの金石文から古代史を考究する。川崎晃『万葉の史的世界』(慶応義塾大学出版会)は、万葉集を題材に大津皇子・藤原不比等などの人物考察に加えて、時刻・色彩語などを取扱う特徴ある内容。また史料の翻刻では手前みそだが、公卿官人日記の逸文を集成した写本の影印・翻刻本である木本好信・樋口健太郎『朔旦冬至部類』(武蔵野書院)と、院政期の平時範の日記逸文を集成・翻刻した木本好信・中丸貴史・樋口健太郎『時範記逸文集成』(岩田書院)がある。
人物と氏族をテーマとしたものに河内春人『倭の五王』(中央公論新社)がある。珍から興までの倭国の動向、武が宋に送った上表文について検証し、讃以下がどの天皇に比定されるかを追究しながら五王の実像を整理する。大橋信弥『小野妹子・毛人・毛野』(ミネルヴァ書房)、遣隋使で知られる小野妹子から平安時代の好古や道風まで小野氏の群像を追う。古藤真平『宇多天皇の日記を読む』(臨川書店)は、宇多天皇の日記を通して阿衡事件の実情や壺切御剣賜与の実態を叙述する。

朧谷寿『藤原彰子』(ミネルヴァ書房)は、一条天皇の中宮で、後一条・後朱雀天皇を生み、国母として政治力を発揮して、父御堂関白道長の権勢とともにあった藤原彰子の生涯を辿るが、歴史的手法を駆使した貴重な成果。同じく彰子について桜井宏徳・中西智子・福家俊幸『藤原彰子の文化圏と文学世界』(武蔵野書院)がある。彰子の文学活動を紫式部日記や御堂関白集をテキストとして解き明かす。樋口健太郎『九条兼実』(戎光祥出版)は、九条兼実の日記である玉葉の記事から兼実と摂関家の動向や平家物語によって作られた虚構の歴史像に修正を迫る。

また氏族の個別研究としては倉本一宏『藤原氏の研究』(雄山閣)と『藤原氏』(中央公論新社)がある。前者は奈良時代末までの藤原氏の権力掌握過程と展開を描き、後者は鎌倉時代の五摂家分立までを概観する。岡野友彦『源氏長者』(吉川弘文館)は、源氏の誕生から公家源氏と武家源氏など源氏を総体的に論究する。

これら以外に藤原氏と渡来人との交流などに論及した加藤謙吉『日本古代の豪族と渡来人』(雄山閣)、平城宮や恭仁宮の内裏を検討した橋本義則『日本古代宮都史の研究』(青史出版)、遣唐使や巡礼僧・商客を論じた森公章『古代日中関係史の展開』(敬文舎)もある。(きもと・よしのぶ氏=龍谷大学特任教授・古代史)
この記事の中でご紹介した本
 倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア/中央公論新社
倭の五王 王位継承と五世紀の東アジア
著 者:河内 春人
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
日本書紀の誕生―編纂と受容の歴史―/八木書店
日本書紀の誕生―編纂と受容の歴史―
著 者:遠藤 慶太、河内 春人
出版社:八木書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「日本書紀の誕生―編纂と受容の歴史―」出版社のホームページはこちら
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