2018年回顧 西洋史 「世界史」「グローバルヒストリー」 一般向けの教養書が相次いで刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月23日 / 新聞掲載日:2018年12月21日(第3270号)

2018年回顧 西洋史
「世界史」「グローバルヒストリー」
一般向けの教養書が相次いで刊行

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今年は「世界史」や「グローバルヒストリー」と銘打った一般向けの教養書が相次いで刊行された。「新しい世界史」を提唱する羽田正『グローバル化と世界史』(東京大学出版会)は、その名も「グローバルヒストリー」シリーズの第一巻に当たる。玉木俊明『ヨーロッパ 繁栄の一九世紀史』(ちくま新書)は、第一次世界大戦前のヨーロッパのグローバル化を論じている。北村厚『教養のグローバル・ヒストリー』(ミネルヴァ書房)は、世界史Bの教科書を基にした通史。アジアの視点から世界史を眺望したものとしては、岡本隆司『世界史序説』(ちくま新書)や鈴木董『文字と組織の世界史』(山川出版社)などがある。専門書の中では、磯部裕幸『アフリカ眠り病とドイツ植民地主義』(みすず書房)やユルゲン・コッカ『資本主義の歴史』(山井敏章訳・人文書院)が、通常の一国史観を越える射程を持った研究成果と言ってよい。

また今年は第一次世界大戦終結百周年であり、四年前の勃発百周年と比べて盛り上がりに欠けるものの、関連書籍の刊行はやはり見られた。敗戦で退位したドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の伝記などは、竹中亨『ヴィルヘルム2世』(中公新書)と義井博『ヴィルヘルム2世と第一次世界大戦』(清水書院)の二種類が出ている。リチャード・エヴァンズ『力の追求』(井出匠ほか訳・白水社)は、第一次世界大戦に至るまでの百年間の歴史を描いた大著で、これもグローバルヒストリーを標榜している。なお同じ著者の『第三帝国の到来』(大木毅ほか訳・白水社)も今年に刊行されており、こちらはビスマルク帝国の創建からヒトラーの権力掌握までをカバーしている。

これらの文脈から外れるが、個別のテーマを扱った専門書や教養書でも興味深い著作がいくつも出されている。まず専門書では、近年にわかに注目を浴び、今年の『思想』(第一一三二号・岩波書店)でも特集が組まれた「感情の歴史学」の研究成果として、ウーテ・フレーフェルト『歴史の中の感情』(櫻井文子訳・東京外国語大学出版会)が早くも刊行された。また、わが国でも名高い歴史家アラン・コルバンの最新作『処女崇拝の系譜』(山田登世子ほか訳・藤原書店)もある。これまで売春婦等のセクシャリティの実態に関する歴史は饒舌に語られてきた反面、「夢の乙女」の幻影(処女崇拝)についての研究はなおざりにされてきた。本書はその欠落を埋めるべく、古典古代から二〇世紀に至るまでの神話や文学で描かれた処女の表象を論じたもの。

次に教養書としては、本村凌二『教養としての「ローマ史」の読み方』(PHP研究所)と佐藤彰一『宣教のヨーロッパ』(中公新書)を挙げておきたい。前者は長年古代ローマ史を研究してきた著者の手になるローマ史の入門書、後者は言わずと知れた中世ヨーロッパ史の大家による「中世修道会シリーズ」の最新刊である。(むらかみ・ひろあき=筑波大学人文社会系助教・ドイツ近現代史)
この記事の中でご紹介した本
グローバル化と世界史 /東京大学出版会
グローバル化と世界史 
著 者:羽田 正
出版社:東京大学出版会
以下のオンライン書店でご購入できます
「グローバル化と世界史 」出版社のホームページはこちら
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