歴史の見方、書き方につながる 歴史をめぐるくふうを凝らした切り口|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月23日 / 新聞掲載日:2018年12月21日(第3270号)

歴史の見方、書き方につながる
歴史をめぐるくふうを凝らした切り口

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昨年一二月に刊行された二冊の新書が、語る、聞く、書く、切り口において歴史をめぐるくふうを凝らしてみせた(大門正克『語る歴史、聞く歴史―オーラル・ヒストリーの現場から』岩波書店、吉田裕『日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実』中央公論新社)。前者は「人びとの生きられた歴史」に目をむけ、「凄惨な戦場の現実」を描く後者は、昨年刊行の中村江里『戦争とトラウマ―不可視化された日本兵の戦争神経症』(吉川弘文館)や笠原十九司『日中戦争全史』上下(高文研)が示した歴史の見方、書き方につながる。
「戦後」七三年を数えた今年は、その戦後がひとと唄と場所をとおして書かれ、「周縁化された人々」「ハーフ」「時代」「戦後日本」をめぐる議論の枠組みが提起された(下地ローレンス吉孝『「混血」と「日本人」―ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』青土社、上田誠二『「混血児」の戦後史』青弓社、永嶺重敏『「リンゴの唄」の真実―戦後初めての流行歌を追う』同前、逆井聡人『〈焼跡〉の戦後空間論』同前)。

戦前から戦時へ、そして戦後をもつなぐ事態を植民地帝国日本との見方からとらえるとき、その論点が整理され(日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』岩波書店)、「いくつもの帝国日本と、いくつもの戦後日本が、主題を変えながら重畳するように登場する姿」をとらえようとした論集がまとめられ(杉原達編『戦後日本の〈帝国〉経験―断裂し重なり合う歴史と対峙する』青弓社)、その時代の相が、「認識」(横井香織『帝国日本のアジア認識―統治下台湾における調査と人材育成』岩田書院)と「思想」(黒川みどりほか編『竹内好とその時代―歴史学からの対話』有志舎)を主題として、前者は堅実な調査をふまえ、後者は継続する討論と対話という観点から、歴史として記された。

「世界史」叙述をめぐる試みが、「シリーズ日本の中の世界史」として始まり(南塚信吾『「連動」する世界史―一九世紀世界の中の日本』岩波書店)、既刊のシリーズにつらなる(南塚信吾責任編集『情報がつなぐ世界史』МINERVA世界史叢書六、ミネルヴァ書房)。

沖縄とはどこか、そこにはわたしたちのなにがあらわれているのか(松島泰勝『琉球 奪われた骨―遺骨に刻まれた植民地主義』岩波書店、新城郁夫『沖縄に連なる―思想と運動が出会うところ』同前)、復興とはどこでのことをいうのか、それはわたしたちにとってなにであるのか(中田英樹ほか編『復興に抗する―地域開発の経験と東日本大震災後の日本』有志舎、内尾太一『復興と尊厳―震災後を生きる南三陸町の軌跡』東京大学出版会、吉田千亜『その後の福島―原発事故後を生きる人々』人文書院)。

歴史の知り方も書き方も、この二冊に教わる(朴沙羅『家の歴史を書く』筑摩書房、永野三智『みな、やっとの思いで坂をのぼる―水俣病患者相談のいま』ころから)。(あべ・やすなり=滋賀大学教員・近代日本社会史)
この記事の中でご紹介した本
語る歴史,聞く歴史   オーラル・ヒストリーの現場から/岩波書店
語る歴史,聞く歴史   オーラル・ヒストリーの現場から
著 者:大門 正克
出版社:岩波書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「リンゴの唄」の真実 戦後初めての流行歌を追う/青弓社
「リンゴの唄」の真実 戦後初めての流行歌を追う
著 者:永嶺 重敏
出版社:青弓社
以下のオンライン書店でご購入できます
「「リンゴの唄」の真実 戦後初めての流行歌を追う」出版社のホームページはこちら
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