革命とサブカル 「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅 書評|安彦 良和(言視舎)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年12月29日 / 新聞掲載日:2019年1月4日(第3271号)

革命とサブカル 「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅 書評
親しさと緊張感と率直さに溢れる
人間的な感興に満ちた対談パート

革命とサブカル 「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅
著 者:安彦 良和
出版社:言視舎
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革命とサブカル。その二つに何の関係もないと感じる読者もいるかもしれない。しかし、両者には密接な関係がある。

一九六〇年代、大衆運動、学生運動の時代。豊かさと教育の機会の拡大を背景に、より自由と民主主義と個人の決定権を要求した全世界的な異議申し立て運動が起こった。「サブカルチャー=大衆文化」は、この異議申し立て運動と随伴する形で発展した。ロックやヒッピーなどを想定すると分かりやすいだろう。権威主義的な主流文化に対し、サブ=従属的な文化が叛乱し、別種の生き方を模索したのだ。

このことは、人物の重なりからも裏付けることができる。学生運動に参加した人々のうちの何人かは、政治的な意味での革命を目指すのではなく、文化領域を通じて何か(価値観・世の中)を変えようとした。映画監督、エロ本屋、ミュージシャン、お笑い芸人、編集者、漫画家、アニメ作家、小説家などなど、様々な職種で人々は活動した。

安彦良和は、その代表的な一人だ。『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイン・作画監督、『宇宙戦艦ヤマト』の絵コンテなど、日本のアニメ史を語るうえで必ず名前が挙がる作品で重要な役割を果たした人物として知られる彼は、新左翼の活動家だった。

安彦良和の「革命」「運動」へのコミットメントがどのぐらい本気だったのかは、本書の対談相手からも窺い知れる。弘前大学で学生運動をやっていた良和の近くにいたのが、連合赤軍による浅間山荘事件のリンチ事件に加わっていた青砥幹夫と植垣康弘(『兵士たちの連合赤軍』著者)である。安彦は彼らのもとを訪ね、インタビューをする。本書のハイライトは、安彦がかつての「革命」の意味を探るために、かつての同志と会い、話しているパートである。インタビューというより、かつての戦友が思い出話をするというような、親しさと緊張感と率直さが溢れている雰囲気が良い。

青砥、植垣氏を含む様々な人々が、当時のこと、その後の人生、反省、悔恨などを率直に語る対談パートは、非常に人間的な感興に満ちている。学生運動や、連合赤軍事件すら、ちゃんと人間の顔をしたものとして浮かび上がってくるのだ。ある状況の中に人間がいて、葛藤して、理想を信じて行動し、時に騙されたり間違えたりしていた、それはぼくらと同じような一人の人間だった、と、当たり前の理解をしなくてはいけないのだと、つくづく反省させられた。

本書のもう一つの読みどころは、安彦の現在への強い批判的な意志の表明だろう。安彦が「サブカル」と呼んでいるものは、評者が冒頭で述べた「サブカルチャー」の意味とは異なっている。政治の季節が終わり、政治や社会のことは特に意識しなくても良くなった世代のことを「サブカル世代」という括りで捉えているのだ。具体的には、七〇年代と、二〇一〇年代の国会前などでデモが頻発する時代のあいだ、それを安彦は「巨大な空白」と呼ぶ。「俺は空白を相手にして、そこでものを作ってきた」(九七頁)そのことの意味を、安彦は問おうとしている。

アニメ研究家の氷川竜介との対話で、「セカイ系」や「日常系」「なろう系」などの最近のサブカルチャーのジャンルが俎上に載せられる。「社会」「葛藤」がなく、尖ったところのない砂糖菓子のような作品の氾濫に、安彦は戸惑い、苛立ちを隠さない。社会や葛藤を描かないでどうする、と安彦は言いたげである。

移民、ポピュリズム、排外主義、差別。様々な現在の問題を直視し、国家に承認されているアニメの状況に驚きながら、安彦はサブカルを挑発する。「サブカルはゴミだ。アウト・ローだ」と述べ「ゴミだ、恥部だ、半端者だと自認して」「だけど、あなどってくれるなヨ」と開き直る気概が必要なのだと。これがサブカル・アナーキズム。安彦のサブカル屋としての矜持である。
この記事の中でご紹介した本
革命とサブカル 「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅/言視舎
革命とサブカル 「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅
著 者:安彦 良和
出版社:言視舎
以下のオンライン書店でご購入できます
「革命とサブカル 「あの時代」と「いま」をつなぐ議論の旅」出版社のホームページはこちら
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