ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来 書評|ユヴァル・ノア・ハラリ](河出書房新社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
マイページで記事のブックマーク!
ログイン
マイページ登録

トップページ

特集

書評

連載

コラム

ニュース

読書人とは マイページ

  1. 読書人トップ
  2. 書評
  3. 読書人紙面掲載 書評
  4. 歴史・地理
  5. 歴史学
  6. ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来の書評
読書人紙面掲載 書評
更新日:2018年12月29日 / 新聞掲載日:2019年1月4日(第3271号)

ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来 書評
底知れぬ不気味さ
ビッグデータとアルゴリズムに権限を委譲

ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来
著 者:ユヴァル・ノア・ハラリ]
翻訳者:柴田 裕之
出版社:河出書房新社
このエントリーをはてなブックマークに追加
 底知れぬ不気味さの漂う書である。その不気味さを説明するために少し遠回りをしたい。

私はインターネットサービスでしばしば目にする映画や本の「オススメ機能」が苦手である。「あなたへのオススメはこれ」と提示される欄に、私の見たい映画、読みたい本がほとんど並んでいないからだ。最近では自分で映画と本のリストを作り、表計算ソフトでランダムに一つ抽出して次に見る・読む作品を決めている。そのほうが得体の知れないレコメンドアルゴリズムとやらに頼るよりも、よほど気楽である。

とはいえオススメ機能の精度が向上して、「まさにこれ」と思える作品が提示されるようになれば話は別だ。心の底から自分をワクワクさせる作品に出会えるなら、わざわざリストを自作するのはやめて、レコメンドアルゴリズムに従うようになるだろう。

私の好みを完全に反映するためには、私に関するありとあらゆるデータをシステムに与え続けなければならない。検索履歴、メールの送受信内容、ブログ、SNSでの投稿内容、商品の購入履歴、あるいはウェラブルデバイスを通じて得られる心拍数、活動記録などの生体データなどである。こちらが努力して与える必要はない。企業は進んでわれわれからデータを取っていく。原油が精製されて石油に変わるごとく、集められたビッグデータは高度なアルゴリズムで処理されて便利なサービスに生まれ変わる。

われわれの生活が効率的になったり、楽しくなったりするなら、データ活用も大いに結構。しかし本書を読んで、そんなに単純な話ではないことを思い知らされた。

私の好みを完璧に反映するオススメ機能とは一体どんな存在なのか。それは私と同じか、場合によっては私よりも私のことを知っている存在である。映画や本だけではない。就職先、結婚相手、命に関わる病気の治療法といった人生の重要な選択の場面でも、自分で選ぶよりも得する確率の高い選択肢を出してくれる。それに従って選べば私はハッピーになるはずである。しかし、本書は次のような問題を提起する。「自分の事は自分が一番知っている」という前提が崩れれば、われわれはビッグデータとアルゴリズムに、あらゆる選択の権限を委譲するのではないか。そのとき私は私のままでいられるのか。

もちろんビッグデータが今まで以上にビッグになっても、アルゴリズムの高度化が格段に進んでも、すべてが実現されるとは考えにくい。それでも著書は、われわれがビッグデータとアルゴリズムに権限を委譲することはあり得ると最後の章で語っている。不気味さが際立つのはここだ。なぜならここに至るまでに(日本語版で)400ページほどを費やし、人間が宗教を利用して動物の権限を奪い、想像上の神が人間の権限を奪ってきた歴史を本書がたどってきたことを思い出すからである。

オススメされるのは嫌いと断っておきながら恐縮だが、本書を是非オススメしたい。
この記事の中でご紹介した本
ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来/河出書房新社
ホモ・デウス 上 テクノロジーとサピエンスの未来
著 者:ユヴァル・ノア・ハラリ]
翻訳者:柴田 裕之
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来/河出書房新社
ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来
著 者:ユヴァル・ノア・ハラリ]
翻訳者:柴田 裕之
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「ホモ・デウス 下 テクノロジーとサピエンスの未来」出版社のホームページはこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加
緑 慎也 氏の関連記事
読書人紙面掲載 書評のその他の記事
読書人紙面掲載 書評をもっと見る >
歴史・地理 > 歴史学関連記事
歴史学の関連記事をもっと見る >