あなたに伝えたい政治の話 / 171(文藝春秋)安倍政権の中期を振り返り 「戦後レジームからの脱却」の内実を論じる|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年1月5日 / 新聞掲載日:2019年1月4日(第3271号)

安倍政権の中期を振り返り
「戦後レジームからの脱却」の内実を論じる

あなたに伝えたい政治の話
著 者:三浦 瑠麗
出版社:文藝春秋
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近頃、日本政治に退屈してませんか。政局と噂話に長けた「赤坂太郎」の筆も鈍りがちな昨今、メディアの皆さんも、強行採決だとか戦前を髣髴させるとか、劇的な文句もすべて使い果たしてしまって、絞り切ったぼろ雑巾みたいになっているのではないかと思います。

私は2014年に論壇というものに足を踏み入れました。第二次以降の安倍長期政権前期、野党再編と第三極への期待など、その場その場に考えたことを、溢れるようにブログに書いてきました。それをまとめ、2014年末の衆院選の結果を総括して文春新書として刊行したのが2015年2月。読み返すといまでも、小選挙区制が根付いた後の日本政治のダイナミズムを捉えようとしていた当時の新鮮な思いが蘇ります。

ただ、人間は歳を取ります。政権も歳を取るのです。あれから四年。長い長い四年間でした。安倍政権はなぜこれほど長く続いてきたのでしょうか。外交では長期政権を活かして日本のプレゼンスを拡大し、日米関係を強化した安倍政権ですが、内政での評価は一定していません。とりわけ、経済政策をめぐる評価はリフレ派・反リフレ派の論争に収斂し、それ以外のところが論じきられていません。また防衛問題では、安保法制をめぐる攻防は一体何だったのか、この政策転換は同盟との兼ね合いではどのような意味合いを持っていたのかについても放っておかれたままです。人びとの記憶は短期的で、2015年の日本政治の狂騒は歴史の一ページとなろうとしています。

本書は、そんな安倍政権の中期を振り返り、長期安定政権の理由に迫りつつ、政権が自ら歴史的使命として認識してきた「戦後レジームからの脱却」の内実を論じています。安倍政権が、比較的短期に刻んだ衆院選で勝つ短期政権の積み重ねであるということは指摘されてきました。けれども、その短期サイクルの中で起こることが、一体どのような戦略に基づいているのかについては語られていません。もちろん、本書は政界全体やメディア、社会にまで議論の射程を広げてその時々の現象に対する論考を提示しています。時代を論じるにあたって重要な論点は、安倍政権の歴史的位置づけを含みつつ、それを超え、この時代の日本社会における政治だと思うからです。

人間は近い歴史を疎みがちです。遠い過去における長期安定政権の功罪を論じる際には、歴史に対するロマンを持って取り組むであろう研究者も、現在の政権に対してそのような分析を行うことはなかなかない。現に、安倍政権についての論考は極端な賞賛と極端な非難が目立ちます。けれども、感じたことや社会の雰囲気を書き留めておかなければ、後世の歴史家に残すべき同時代の資料もまた乏しいというべきでしょう。その点では、本書の元になった「山猫日記」はまさしく一個人の日記なのであって、その域を出るものではありません。あの時代とは何だったのか。娘が大きくなってそう問われたとき、伝えたかったことを書き留めておいたのです。
この記事の中でご紹介した本
あなたに伝えたい政治の話/文藝春秋
あなたに伝えたい政治の話
著 者:三浦 瑠麗
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「あなたに伝えたい政治の話」出版社のホームページはこちら
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