第71回 野間文芸賞 第40回 野間文芸新人賞 第56回 野間児童文芸賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2018年12月28日 / 新聞掲載日:2019年1月4日(第3271号)

第71回 野間文芸賞 第40回 野間文芸新人賞 第56回 野間児童文芸賞 贈呈式開催

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2018年12月17日、東京都内で第71回野間文芸賞、第40回野間文芸新人賞、第56回野間児童文芸賞の贈呈式が行われ、野間文芸賞の橋本治氏(『草薙の剣』新潮社)、同新人賞の金子薫氏(『双子は驢馬に跨って』河出書房新社)と乗代雄介氏(『本物の読書家』講談社)、児童文芸賞の安東みきえ氏(『満月の娘たち』講談社)の四氏に賞が贈られた。
草薙の剣(橋本 治)新潮社
草薙の剣
橋本 治
新潮社
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野間文芸賞受賞の橋本治氏は当日体調不良により欠席。代わりに受賞作の編集担当者が橋本氏の挨拶を代読した。(一部抜粋)「(受賞に際して)『草薙の剣』の版元である新潮社の編集者から、「よろしければ私たちの方からもお祝いの品を贈りしたいが何がよろしいでしょうか?」というお言葉をいただいたようで、それを助手から聞いて、「うーん、なにが欲しいって別に何にもないな」と言ってしまいました。欲がないのではなくて、本当に何も欲しいものがないのです。「貰えるのなら原稿用紙かな」。するとそれを聞いた助手が「そりゃいいや」と言いました。「お前は俺を殺す気か」とは思いませんでしたが、少しそういう気分にもなりました。
実は私、まだ学生だった20代の前半からまっさらな原稿用紙を500枚買うと幸福になる人間でした。小説を書くというのではなく、卒論を書くための紙ですが、折り目のない白い原稿用紙が500枚茶色いパックの中に収まっているを見ると胸がドキドキしたのです。それだけではなくて、その原稿用紙が文字で埋められた後に、広げられた原稿用紙の上に両肘を乗せて静かに息を一つ吐き「ああ、終わった」とつぶやくのです。私の人生ははじめから終わらせることを目的にしてスタートしたみたいで不思議ですが、「ああ、終わった」の一言が幸福をもたらしてくれるのは事実でした。

今でこそ原稿用紙は助手に買いに行かせますが、ちょっとしんどいなと思うことはあっても、書き終えた幸福感は変わりません。だから今2000枚の原稿用紙をもらったら重荷でしょうが、500枚や1000枚の原稿用紙ならなんとかなるかな、とは思います。
書く内容まで決まっているというとプレッシャーになるので言いませんが、もういい年で立派な賞をもらったのだから「無理して続けるのはやめなさい」でもなく、「これを一歩としてもっとがんばりなさい」でもなく、自分の目の前に原稿用紙が見えたらなりゆきでその上を一歩一歩歩いていこうと思います。なりゆきまかせの私には一番ふさわしい生き方です。それで最後まで行けるか行けないかはわかりませんが、そういう当て所のない生き方が自分にはふさわしいのではないかと思います。ちなみに次に書く小説のタイトルは『正義の旗』です。あっ、言っちゃた、もうやめます」とコメントを読み上げた。
金子 薫氏
続いて新人賞受賞の二氏が登壇。先に金子氏が挨拶を述べた。「今日は立派な会場で立派な賞をいただき、感謝で心がいっぱいであっても僕は立派な言葉を言ってはいけないと思っています。何故なら僕は双子が監禁されている親子を探して旅をするような荒唐無稽で非常識なものを書かなければならない強迫観念があり、立派なことを言ってしまうとストンと収まって少し物足りなくなる。しかし、立派さを疑う姿勢すら立派かもしれないと思うと、もう立派の渦に相当巻き込まれてしまい、僕はこの立派さから逃げることができない。この立派さの砂漠からまるで驢馬に跨るようにスルスル逃げ続けられればなと思っています」と受賞作の内容に絡めたコメントをし、乗代氏にマイクを託す。
乗代 雄介氏
乗代氏は「僕はずっと一人で物語を書いてきて、唯一文学について意見を交わしたのが先日対談した保坂和志さんだけです。今まで周りと関係のないところでやってきたけれど、一人でやり続ける限界、関わりが生まれる現実もあります。今まで一人で書いてきたものが本となり、データにも残る。そして今この場に立って賞をいただいたことにより、歴代の受賞者とともに記録にも残りますが、今後は何を考え、どんな態度で臨めばいいか考えるきっかけにもなった受賞だと思います」と述べた。
安東 みきえ氏
最後に登壇した安東氏は「本作は自身初の長編作品です。私は作品に手を入れる時毎度1頁目の第1行から取り掛かる習慣があるので、その作業を繰り返しているうちに完成までに10年要してしまいましたが「神は細部に宿る」という言葉を信じ、細かい部分にこだわり書いた結果が今回の受賞に繋がったと思います」と喜びを語った。

式の終わりに際し、来年講談社創立110周年を記念した「野間出版文化賞」新設の案内が行われた。出版と関わりのある優れた表現活動を行った個人・団体を顕彰し、幅広いメディアを対象とした出版文化賞が野間三賞に新たに加わった。
この記事の中でご紹介した本
双子は驢馬に跨がって/河出書房新社
双子は驢馬に跨がって
著 者:金子 薫
出版社:河出書房新社
以下のオンライン書店でご購入できます
本物の読書家/講談社
本物の読書家
著 者:乗代 雄介
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
満月の娘たち/講談社
満月の娘たち
著 者:安東 みきえ
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
草薙の剣/新潮社
草薙の剣
著 者:橋本 治
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
「草薙の剣」出版社のホームページはこちら
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