梅内美華子『横断歩道 ゼブラ・ゾーン』(1994) 階段を二段跳びして上がりゆく待ち合わせのなき北大路駅 |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2018年12月31日 / 新聞掲載日:2018年12月28日(第3271号)

階段を二段跳びして上がりゆく待ち合わせのなき北大路駅
梅内美華子『横断歩道 ゼブラ・ゾーン』(1994)

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北大路駅は京都市営地下鉄烏丸線の駅。作者が同志社大学に在学していた時期の歌である。開業当初は起点駅だったが、一九九〇年に北山駅まで延伸し中間駅となっている。やはり京都が輩出したロックバンド「くるり」のバンド名は、この北大路駅の乗り場案内に「くるり」とした逆U字マークがあしらわれていたからという逸話がある。

現在の北大路駅は周辺に商業施設が増えて人通りが多くなっているが、この歌の詠まれた時点ではまだまだ閑散とした静かな駅だったのだろう。人目など気にせずに、二段跳びでだんだんと駆け上ってゆく。しかも、待ち合わせで急いでいたりするわけでもないのに。目の前に広がる自由を体いっぱいで受け止めようとする、衝動のような二段跳びだ。若さへの賛歌ともいえるだろう。北大路駅は京都でも有数のバスターミナルがあるので、これからバスに乗って気ままな一人旅にでも出るのかもしれない。

別に北大路駅でなくてもどんな駅名であってもいいことは否定できない。しかし、階段が常に人でごった返しているような大きなターミナル駅では成立しないことは間違いない。この解放感あるイメージに似つかわしい駅は、大きな都市なら一つか二つはあるだろうけれど、意外と限られてくる。北大路駅はなかなか鋭いチョイスだった。前述の通り当初は起点駅であった北大路駅。この歌の場合は延伸前の終着駅だった頃の北大路駅のイメージが似つかわしいのかもしれない。(やまだ・わたる=歌人)
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