『ダンシング・マザー』(文藝春秋)刊行記念 内田春菊さんロングインタビュ― 母との訣別|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年1月11日 / 新聞掲載日:2019年1月11日(第3272号)

『ダンシング・マザー』(文藝春秋)刊行記念
内田春菊さんロングインタビュ― 母との訣別

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第2回
被害当事者の声を届かせた

――刊行当時に『ファザーファッカー』を読んで、その衝撃はずっと心に残っていました。今回読み直してみて、改めて衝撃を受けたと同時にまったく古びていないことに驚きました。日本の社会の中で強い禁忌とされてきた「家族の闇」を小説として言語化した、今でいう当事者の声を社会に届かせた作品だと思います。今いろんなところで生きづらさが前面に出てきていますが、そういう心の傷や困難を抱えた人が声を上げた先駆け的な作品だったことに気づきました。そして『ダンシング・マザー』を同時に読み進めていったときに、娘である静子と母親の逸子、両方の声が多重音声で響いて、まるで舞台のようにあちらとこちらから声が聞こえてくるような思いがしました。
内田 
 『ファザーファッカー』は、娘の視点で東京弁で書いたのですが、『ダンシング・マザー』は母の視点で、長崎の方言で書いたんです。やっぱり方言って違いますね。ミュージカルも方言で書いて、「なんばしよっとか〜♪」みたい感じで、それはすごく可笑しいんですけど(笑)。先日、壇蜜ちゃんのラジオ番組でも「毒親」を言い出した最初の人ですねと言っていただいて、最初だったからこそ多分『ファザーファッカー』は賞選考とかで散々な目に遭ったんです。直木賞の選考ではえらい目に遭ってる感が伝わってきましたし、もう人でなしくらいに貶されて、本当に酷い作品だみたいに言われたんです。それを人類学者の中沢新一さんがBunkamuraドゥマゴ文学賞に選んでくださって。中沢さんは本当は『私たちは繁殖している』(ぶんか社)にあげたかったそうなんです。でも漫画だけでは難しくて、じゃあまだ何も賞を獲っていないから『ファザーファッカー』と組みにすれば文句はないだろうということで、二冊での受賞になったんです。ドゥマゴ文学賞の連絡が来たとき私は地方でライブをしていて、最初に電話を受けてくれた人が賞の名称を聞き取れなかったんですね。ドゥマゴ文学賞もまだ四回目であまり名前が知られていなくて、それで〝ルマゴ〞に聞こえたらしいんです。私がまたそのメモを見たら〝ハマゴ〞に見えて、「ハマゴ文学賞」って何だろうと(笑)。本当にありがたいことでした。 
――中沢新一さんはドゥマゴ文学賞で、「内田春菊という生き物の存在自体に賞をあげたい」「表現がそのまま生命である」という、素晴らしい選評を述べられています。遺言のつもりで書いた『ファザーファッカー』が、見事に小説化されて今につながっておられるのですね。
内田 
 『ファザーファッカー』を書いたときは、母があまりにお金のことを言うので頭にきたのも動機のひとつなんです。一番最近聞いた話ですが、結局遺言状で指定してもお金はやっぱり母のところにいくそうです。ただ遺言状があれば半分くらいになるそうなんです。かといって、もし私に子どもがいないときにうっかり死んで半分になったとしたら、その半分は誰がもらうのかとか、だから全部取られていたかもしれないですね。もう今はありがたいことに子どもが四人もいて、そんな心配はないのですが。 
――ご家族は内田さんの小説も読まれているのですか? 娘さんも小説を書き始めたそうですね。
内田 
 そうなんです。下の十八歳の娘が小説を書き始めて、私も読んでアドバイスしてあげたりしました。小説の最終版は読んでいないのですが頑張っています。娘は『ファザーファッカー』を途中まで読んで「もう環境にイライラする」とか言ってました。「読んで思ったんだけどさ、母ちゃんと自分と似てる気がした」と言っていて、自分で気づいてえらいねと言いましたけど。本当に激しい娘で、だから母が大変だったことも『ダンシング・マザー』を書いた今はよくわかります。娘は私よりもずっと美人で、顔は全然似ていないのですがこんなにも性格が似ていたんだなと日に日に思います。似ているのは手のひらのしわとか首のしわとかどうでもいいところで(笑)。顔とかプロポーションとかはイケメンさんの父親似なんです。中身が似なくて本当に良かったですけど。
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この記事の中でご紹介した本
ダンシング・マザー/文藝春秋
ダンシング・マザー
著 者:内田 春菊
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
ファザーファッカー/文藝春秋
ファザーファッカー
著 者:内田 春菊
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「ファザーファッカー」出版社のホームページはこちら
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