異質性と同質性  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く (89)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年1月15日 / 新聞掲載日:2019年1月11日(第3172号)

異質性と同質性  ジャン・ドゥーシェ氏に聞く (89)

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シネマテーク・ブルゴーニュ近隣のホテルにて、左端にドゥーシェ
HK 
 異質性という問題から、話題をロッセリーニに移します。つい最近のことですが、2ヶ月ほど映画館に顔を出すことができず、自宅でずっとDVDを見ていました。最初は、未見のブロックバスター作品などをNetflixを通じて見ようと思ったのですが、結局ロッセリーニやベルイマンのような、すでに面白いとわかっている作品ばかり見てしまいました。
JD 
 偉大な映画作家の作品を見返すのは良いことです。
HK 
 それがきっかけでベルイマンの自伝を読み返したり、ロッセリーニのインタビュー集を手に取る機会もありました。以前は気にしていなかったのですが、ドゥーシェさんのロッセリーニに対するインタビューが出版されているようですね。
JD 
 ありえないことではありません。私は、ロッセリーニのことをよく知っていました。なので、私たちの会話がどこかに残っていても不思議ではありません。
HK 
 『カイエ』で行われた一連のインタビューの一部として、ジャン・ドマルキと一緒に話を聞きに行っています。その中で、非常に印象深いロッセリーニの言葉がありました。「私は、点を見せるのではない。待つことを見せるのだ」。この言葉が、ロッセリーニの映画の全てを表しているように思います。
JD 
 ロッセリーニ自身がそのように表現していたのですか。
HK 
 はい。同時にその言葉が、今日に至るまでドゥーシェさんが言い続けていることに、非常に近いと感じました。
JD 
 確かに、その通りです。点で映画を語るか、待つことで映画を見るかという点において、私は非常にロッセリーニ主義者です。
HK 
 それに加えて、シネマテークや映画祭で僕たちが今日でも目にする多くの映画は、作りが非常にロッセリーニ風ではないでしょうか。ロッセリーニの横でここ最近のアメリカ映画も見ていたのですが、非常に古い作られ方をしています。つまり、必ずしも今日作られている映画が現代以降のものではなく、反対に50年前の映画が今見ても現代風であると感じました。
JD 
 当然のことです。問題となるのは、今日の映画です。そして本当の意味で、今日の映画の基礎となっているのは、ロッセリーニです。なので、彼の映画が今日においても、現代的であり続けているのは当然です。
HK 
 現代映画と古典映画を区別するものとして、異質性と同質性という問題があります。現代映画とは異質性であり、古典映画は同質性でなりたっているという理解です。おそらくそのような考え方は『カイエ』の中にあったのではないでしょうか。
JD 
 確かに、そのような理解も不可能ではありません。しかし、そのような理解をしていたのは、『カイエ』の一部の人間たちだけです。つまり、古典映画に興味をさほど示さなかった批評家たちの持っていた考え方です。ヌーヴェルヴァーグの映画が始まる少し前、私たちの世代の批評家たちは、それまでの映画が連続性に重きをおいてなりたっているということを理解しました。これは、『カイエ』の批評家だけでなく他の批評家たちも、私たちとは異なる方法で、理解していたことです。『カイエ』は、連続性だけでなく不連続性による映画を模索することになったのです。これはゴダールが今日に至るまで続けています。物事とは必ずしもつなぎ合わさっているわけではない。しかし、出来事とは立ち替わり現れる偶然の集まりである。ゆえに「生」とは偶発性の連続です。一方で、古典的映画における「生」とはすでに準備されたもので、誰かによって抑制されているものです。これは映画に対する非常に哲学的な理解です。しかしながら、映画批評の両極として、そのような理解の違いは存在してきました。
HK 
 ドゥーシェさんの批評の中心にあり、長年かけて発展してきた「生」という考え方は非常に哲学的ですが、単純な古典と現代とは別の観点による、より包括的な概念のように感じます。

〈次号につづく〉
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