裸の王様 書評|開高 健(新潮社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2019年1月11日

子供が描くくすっと笑える絵の発想、子供と大人の対立など、今まであまりなかったような?新鮮に感じられる物語

裸の王様
著 者:開高 健
出版社:新潮社
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裸の王様(開高 健)新潮社
裸の王様
開高 健
新潮社
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今回は、第38回芥川賞を受賞した、開高健の「裸の王様」(初出・昭和33年3月文藝春秋新社刊『裸の王様』)。

主人公の〝ぼく〟は画塾を開いている。ある日、〝ぼく〟の知り合いで小学校教師の山田が担任しているクラスの子供、大田太郎が画塾にやってくる。

来た理由は、太郎の絵が男の子なのにも拘らず、下手な人形やチューリップの絵ばかりで、大手絵の具会社の家である大田家は困っていたからだった。

太郎は、画塾に来ても絵を描くことはなく、〝ぼく〟は困っていた。そんな太郎が興味を示したのは、画塾にいた何を書いても数字を守ろうとする変わった子のエビガニの絵だった。それを見た〝ぼく〟は太郎についてもっと知ろうとして、太郎と川原に遊びに行くことにする。その日を機に、太郎は毎週画塾で絵を描くようになり、絵もチューリップや人形から、感情を表現するような作風に変わっていった。

〝ぼく〟は、長年の夢だったアンデルセンの童話の挿絵と子供の絵を交換することを実現させようと、デンマークへ手紙を何度も送る。何とか願いが通じ、全国の子供から募集する絵のコンクールを開くことになった。太郎の絵にある自由な世界観を気に入った〝ぼく〟は、太郎にデンマークの「裸の王様」の童話をモチーフにした殿様の絵を出品させるが、大人たちからの評価はあまりにも低く、ほかの人が描いた、裸の王様の物語をそのまま模写したような絵が選出される。それに不服を覚えた主人公は子供の発想には大人にはない驚くべき、面白い発想があると審査員達に訴えた。〝ぼく〟は子供たちの自由な発想を守ろうとしたのだった。

話はユニークな場面も多くあり、楽しめたが、開高健という人物の経歴も少しユニークだった。名前は知っていた。サントリーの宣伝部で、キャッチコピーを売り出した。芥川賞を受賞した後は、朝日新聞社の特派員としてベトナム戦争を取材、その経験をもとに「輝ける闇」「夏の闇」「花終わる闇」の3部作を書いた。随筆や、エッセイなど幅広いジャンルで、活躍をした作家である。生まれたのは1930年、今から78年も昔。でも、文章は古い印象を受けない。本は、今と昔をつないでいるものではないのだろうか。歴史のつながりを感じる、そんな時はほかにもある。この書評連載を始めてから、昔の本を読むことが多くなった。本を読むときに必ず見ているのが最後のページの発行日。何版目の本を私は手にしたのか。ここにも、私は歴史を感じる。

子供の時、私はどんな世界を見ていたのだろうか。部屋の中のガラクタを掘り出すとよくわからない図工の作品が出てくる。森の妖精、しゃべるカプチーノ、魔女がいる国、虹色だけの国…。今の私にはなくて、幼い頃に見えていたキラキラの世界がそこにはあった。懐かしいものを手にしているうちになぜかわからないけれども、懐かしい気持ちとともに寂しい、悲しい気持ちになってきた。

子供が描くくすっと笑える絵の発想、子供と大人の対立など、今まであまりなかったような? 新鮮に感じられる物語だった。できれば、今のまま子供でいられればいいのにな…。


幼稚園の時に描いた絵です。ハートの葉っぱが可愛くてシクラメンの花を選んだのを今でも覚えているくらい、思い出のある絵です。
この記事の中でご紹介した本
裸の王様/新潮社
裸の王様
著 者:開高 健
出版社:新潮社
以下のオンライン書店でご購入できます
「裸の王様」出版社のホームページはこちら
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