川田正美『読書清遊』 日本古書通信社より刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年1月22日 / 新聞掲載日:2019年1月18日(第3273号)

川田正美『読書清遊』 日本古書通信社より刊行

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 川田正美著『暇つぶしはシェイクスピアで 読書清遊』が日本古書通信社から刊行された。A5判・554頁・クロース装・貼函入り・本体5500円。

2018年は「君たちはどう生きるか」という、おもに小学生、中学生に向けて人生を考える本が読み物としてよく売れた年であった。どの時代でもそうであるが特に日本人は自らの生き方について常に考え続けている民族ではないだろうか。中でも第一線を退いて日常の時間は余るほどあるが、次第に人としての意義ある時間が少なくなりつつある年齢の高い人は、渇するように何かを求めているように感じられる。

本書の著者は東北大学(工学・修士)を卒業後、科学の知識を基に企業で力を尽くし、いまはいわゆる「晴耕雨読」の悠々人生を送っているという人物。本書は一読するだけでよほどの読書家であったということをすぐに感じ取れる深みあるエッセイ集である。

5つに分けられた章から成り立っているが、日常で目にする草木や小動物に対する観察、シェイクスピアを代表とする作品や人名の変遷、言葉の語源やほんらいの意味に対する詳細な調査と検証、思わず顔をほころばせてしまうおかしみにあふれた小噺、などが読みやすい分量にまとめられている。しかもそこに込められている薀蓄たるや桁外れで、しかもこれまでの科学者として培われた癖であろうか、検証、考証の作業には驚かされる。例えば、庭作業の過程で語られる雑草の形状や特徴などは、傍に植物図鑑を置いて確かめながら読み進むとさぞかし楽しいであろう。なかでも圧巻なのはシェイクスピアに関する第3章である。天保13年の「英文鑑」という本に書かれているシャーケスピールという表記を筆頭に、418の表記をその使われた文献を紹介しつつ一覧表にしてあることである。よくぞ専門外のことをここまで調べつくしたものよと感心する一方、これほどまで暇を作ることができたものだと呆れながら読むことになっていく。この章のタイトルが「セキスビヤあります」と居酒屋の「エビスビールあります!」をもじってつけられているが、著者の駄洒落好きは各所に顔を出し、読む人はちょっと我慢してもらわなくてはならないだろう。

いずれにせよ、ゆとりある時間を持ちたいと願う人にとっては、著者の日常を真似ることで近づける、格好の書と言えるかもしれない。(K)

日本古書通信社 ☎03・3292・0508
この記事の中でご紹介した本
暇つぶしはシェイクスピアで 読書清遊/日本古書通信社
暇つぶしはシェイクスピアで 読書清遊
著 者:川田 正美
出版社:日本古書通信社
以下のオンライン書店でご購入できます
「暇つぶしはシェイクスピアで 読書清遊」出版社のホームページはこちら
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