柊明日香『そして、春』(2017) それぞれの踏切に家の名をつけて「西村踏切」は今に残れり |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2019年1月22日 / 新聞掲載日:2019年1月18日(第3273号)

それぞれの踏切に家の名をつけて「西村踏切」は今に残れり
柊明日香『そして、春』(2017)

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JR北海道は廃線が続いており、今年度中には札沼線(学園都市線)の北海道医療大学〜新十津川間が廃止されることが決まっている。廃止区間からは外れているものの、私の実家もその沿線にあるので少し寂しい気分にもなる。この歌の作者の出身地は、2016年に廃線となった留萌〜増毛間にあったらしい。通学に使っていた青春の路線がなくなってしまった感慨を綴った連作「故郷の駅」に、この一首が入っている。踏切にはたいてい番号が振られて識別されるが、場合によっては固有名が付けられていることがある。地名に由来していることが多いが、田舎では近くの家に住む個人の名を付けることもあるのだろう。

「西村踏切」という名前だけは残っているものの、その名の由来となった西村家はとっくの昔にその地を去っていたのかもしれない。抜け殻のように、踏切にだけ人名がこびりついて残されていた。単に事実を提示しただけのようなシンプルな一首であるが、ここには確かに作者が感じた胸のざわつきが表現されている。

この歌の気になるポイントとして、「西村」という名字のチョイスがある。「西村踏切」という名前にしたことで四句目が字余りになっている。二文字の名前(小野とか多田とか)に変えればちゃんと定型には収まるのにわざわざそうしたことで、逆にリアリティが生まれる。このように、リアリズムの手法として字余りや字足らずが使われることが短歌には結構多い。
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