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American Picture Book Review
更新日:2019年1月29日 / 新聞掲載日:2018年1月25日(第3274号)

『キング牧師の偉大な言葉』

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『Martin's Big Words: The Life of Dr. Martin Luther King, Jr.』Doreen Rappaport著/Bryan Collier画(Hyperion Book)

公民権運動を率いたキング牧師。その生涯を伝える本作の原題は『マーティンのビッグ・ワード』となっている。ビッグ・ワードとは、一般人や子供が使わない難解な言葉を指す。マーティンこと少年期のキング牧師も教会で父の説教を聞き、いつか自分も父のようなビッグ・ワードを使いたいと憧れる。

ところが、後に牧師となったマーティンが人々に発した言葉は決して難解ではなく、それどころか至って平易だった。「ヘイト」の代わりに「ラヴ」、「分離」ではなく「共に」、「戦争」は止めて「平和」を。誰にでも分かるマーティンの言葉は易しさゆえに偉大(ビッグ)だった。

黒人の人権獲得に捧げられたキング牧師の人生が、この絵本では対象年齢5~8歳にも理解できる言葉で綴られていく。とは言え、「(運動に参加した人々は)留置所に入れられ、殴られ、殺された」という一節がある。キング牧師が暗殺された史実も、漆黒のページに文字のみで「彼は撃たれた」(改行)「死んだ」と記されている。キング牧師の人生とアメリカ黒人史は、幼い子供にすら曖昧に伝えられるものではないのだ。対のページには、ステンドグラスに囲まれたキング牧師の顔が大きく描かれており、絵本を読む子供を深い眼差しで見つめる。キング牧師の存在の大きさが、子供たちにおのずと伝わる。

今年は1月21日が祝日「キング牧師の日」だった。キング牧師の誕生日を祝日とする法案が最初に出されたのは1979年。スティーヴィー・ワンダーの『ハッピー・バースデー』は、一度は否決された祝日法案のキャンペーン曲として作られている。紆余曲折を経、晴れて祝日となったのが1986年。ただし、多くの州が独自判断で祝日と認めない、祝日とするが「公民権の日」などとし、キング牧師の名を省く、「キング牧師とロバート・E・リーの誕生日」と南軍の将軍の名を含めるなどした。黒人の誕生日を祝日とすることに、かつて奴隷制を敷いていた南部諸州の抵抗は激しかった。全50州が祝日とし、かつリー将軍の名が外されたのは、なんと2017年のことだった。これがアメリカの人種問題の現状だ。

同時に、地域によっては以前より祝日に合わせてキング牧師関連のイベントが開かれ、子供たちは学校でキング牧師の塗り絵を配られたり、学芸会でキング牧師の演説を演じたりもする。マーティンのビッグ・ワードは、確実に次世代へと受け継がれているのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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