ロスジェネの逆襲 書評|池井戸 潤(文藝春秋 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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【書評キャンパス】大学生がススメる本
更新日:2019年1月26日 / 新聞掲載日:2019年1月25日(第3274号)

池井戸 潤著『ロスジェネの逆襲』

ロスジェネの逆襲
著 者:池井戸 潤
出版社:文藝春秋
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正しいことを正しいと言える。それは、どんなに強くて勇気のいることなのだろう。自分が正しいと思っていても、周りと意見が異なれば「変わり者」扱いをされる。そのような扱いを受けるのを恐れ、周りと意見を合わせ、自己主張を避ける。実に日本人に多い特徴である。

ところが、本書の主人公、半沢直樹は違う。仕事を自分の評価や出世のためではなく、顧客のため、世の中のためにすることを信念とし、自分に有利に働くよう仕事をするような身勝手な人には、たとえそれが上司であろうと正論をぶつける。自分の意見を臆することなく言い、悪に立ち向かうことができる。それが半沢なのである。

本書は、そんな半沢直樹シリーズの第三作目である。

東京中央銀行から銀行子会社である東京セントラル証券へ出向した半沢であるが、東京セントラル証券の業績は思わしいものではなかった。そんな時に、IT業界でトップの座にいる「電脳雑技集団」の社長から、ライバル会社を買収したいという大きな依頼が舞い込んでくる。東京セントラル証券は、着々とライバル会社の買収を進めていたが、親会社の東京中央銀行に卑劣な手段で依頼を横取りされる。そんなことをされて半沢が黙っているはずがなく、部下の森山とともに、東京中央銀行に挑むのであった。

本書で半沢は言っている。「やられたら、倍返しだ」と。親会社から出向していると、大抵は親会社に戻ることを考え、親会社に立てつくことなどできない。しかし半沢は、東京中央銀行に二度と戻れない可能性があると知りながらも、自分が正しいと思ったことを貫き通すのである。

社会人であると、「理不尽なことに耐えることが当然」という風潮があると聞く。理不尽なことを我慢し、それを乗り越えることで成長すると思われているからだろう。しかし、実際の所、理不尽に耐えることと成長することに因果関係はない。ほとんどの場合が心をすり減らしたり健康を損ねるだけであろう。半沢の部下である森山も、当初は東京セントラル証券で銀行の出向者から扱き使われる日々を理不尽に感じていた。しかし、半沢と仕事をし、共に戦うことで、森山の仕事に対する姿勢は変わり、精神的に成長することができる。半沢を上司に持つ森山が羨ましい。半沢のような上司は、現実にはなかなかいない。だからこそ、半沢に憧れるし、自分もいつの日か半沢のような上司になりたい。

組織の人間だからといって周囲に合わせ、均質的な人間になる必要などない。わたしは、本書を読み終え、自分の意見を正直に、そして自由に発言する勇気が湧いた。本書は、社会の理不尽と闘うことを諦めてしまったすべての大人に読んでほしい一冊である。
この記事の中でご紹介した本
ロスジェネの逆襲/文藝春秋
ロスジェネの逆襲
著 者:池井戸 潤
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「ロスジェネの逆襲」出版社のホームページはこちら
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