連載 異質性と同質性 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 91|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年1月29日 / 新聞掲載日:2019年1月25日(第3274号)

連載 異質性と同質性 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く 91

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3クロード・シャブロル(右)とともに(2000年頃)
JD 
 フロベールの『ボヴァリィ夫人』は面白いものです。しかし、小説と映画の間にも歴史的な違いがあります。小説は19世紀の発明でした。それ以前にもすでに小説は存在していましたが、19世紀になって生まれる大きな運動としての文学とは別の形です。その意味で、19世紀が小説を発明したとも言えます。バルザック、フロベール、ドストエフスキーや、他の多くの偉大な作家が姿を表しています。彼らは小説家にとっての方法論を、本当の意味で確立しました。しかし、本当に驚かされるようなことをしたわけではなく、その反対に、ある出来事は別の出来事に続いて起きるということを示してみたのです。過去にあった出来事の帰結として出来事が起きる。そのようなところから、ある程度の変化も生まれましたが、物語を一つの動きの中で語ることは義務付けられていたのです。根本的なところで、「生」は当然のように連続するものでした。当然多くは作られた物語ですが、連続性という考えの上に作られています。しかし第二次世界大戦が終結した後、1950年頃になると、文学や音楽だけではなく、すべての表現分野において、断絶が始まります。断絶という考えが芸術の中に生まれるや否や、一貫性は失われます。問題となったのは、一貫性に対する断切です。あらゆる物事が様々な方向へと向かいだし、一貫性は妨げられることになったのです。そして、物語も別の語り方を探さなければいけなくなります。その中で新たな物語法は生まれました。
HK  
 ストローブが、シェーンベルクやブレヒトに非常に興味を抱いていたのは知っています。映画を撮り始めたきっかけも、シェーンベルクの音楽を聞いたことだったと思います。しかし、ルノワールやロッセリーニが直接、現代芸術に興味を抱いていたのかは耳にしたことがありません。
JD 
 彼らは、ストローブのように興味を持っていたわけではありません。
HK  
 その当時の芸術の流れとは直接的な関わりがないということですか。
JD 
 現代化の流れの中にはあります。しかし、彼らが直接的な影響を受けていたというべきではありません。いずれにせよ、現代化の流れの中にいたからこそ、ルノワールは彼の行きていた時代の人々にはあまり受け入れられなかったということを忘れてはいけません。ロッセリーニも、その当時では決して好まれている映画作家ではありませんでした。しかし、彼の熱狂的なファンがいたのも事実です。私の考えでは、現代映画を創ったのはロッセリーニです。例えルノワールが、ロッセリーニが行ったこと—二人の間には直接の流れがあります—をすでに理解していても、彼はロッセリーニが行ったことを実現することはできませんでした。しかし、ルノワールはすでに、後の映画を考え、実行し始めていたとも言えます。『ゲームの規則』は、この観点からも本当に驚くべき映画であるということがわかります。確かに、この映画は継起する出来事、連続性、一つの動きで成り立っています。しかし同時に、その連続性が破滅へと向かっていくのも自然と理解できます。崩壊していながらも、うわべでは物語の体裁をとり続けています。「うわべ」という表現を用いるのは、映画が出た当時の人の良識に反するような映画だったからです。彼らは、物語についていくことができなかったのです。
HK  
 今日になっても、物語を「よく」追いかけるのは大変だと思います。
JD 
 そうです。今でも、『ゲームの規則』に付いていくのは大変なことです。加えて、登場人物たちも、物語に追いかけることができません。自分たちの物語であるにも関わらず、理解することができないのです。『ゲームの規則』が、本当に面白い映画であるのは、誰もが物語に付いていけないという点にもあります。登場人物たちは、いかにして物語を展開するのかを探し求めます。しかし、その物語は、彼らが望むようには展開しません。全てが水面下で静かに展開されると思いながらも、絶対にそのようにはなりません。
〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=ヴァンサン・バロ)
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