『ナチス第三の男』(セドリック・ヒメネス監督作)公開記念 映画原作:『HHhH プラハ、1942年』 ローラン・ビネ氏インタビュー|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年1月25日 / 新聞掲載日:2019年1月25日(第3274号)

『ナチス第三の男』(セドリック・ヒメネス監督作)公開記念
映画原作:『HHhH プラハ、1942年』 ローラン・ビネ氏インタビュー

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HHhH(ローラン・ビネ)東京創元社
HHhH
ローラン・ビネ
東京創元社
  • オンライン書店で買う
〈小説と別物ではあるけれど、豪華キャスト、美しい音楽、そして東欧の雰囲気の再現も見事で、素晴らしい映画だ――ローラン・ビネ〉

二〇一〇年ゴンクール賞最優秀新人賞受賞作であり、日本では二〇一四年本屋大賞翻訳小説部門第1位の世界的ベストセラー『HHhH プラハ、1942年』を原作とした映画『ナチス第三の男』が、本日公開となる。公開を機に、著者のローラン・ビネ氏にメールインタビューをさせていただいた。 (編集部)
目 次

第1回
プラハの記憶と誇り

ローラン・ビネ(1972~ )=作家。パリ生まれ。パリ大学で現代文学を修め、兵役でフランス語教師としてスロヴァキアに赴任、その後、パリ第3大学、第8大学で教鞭を執る。『HHhH』が小説第一作。©JF Paga
――『HHhH プラハ、1942年』の中で、ローラン・ビネさんは終始、歴史的真実を創ってしまうこと、表現によって歴史が捻じ曲げられてしまうことに対し嫌悪を感じながら、迷い…消去し…表現する…を繰り返す過程を含め、ひとつの記憶を紡ぎあげておられます。そうしたビネさんの姿勢を、本書を通じて追っていくと、映画化による視覚化は、小説にもまして決定的で逃れようのない「創作」であると思えます。

しかし「小説と別物ではあるけれど」とことわりながら、映画『ナチス第三の男』については、ビネさんも賞讃しておられます。ご自身の書籍を原作に映画化されたことへの感想と、この映画についての感想を、少しお聞かせください。
ビネ  
 私は映像に感銘を受けました。私が頭の中で考えていたことが、突然スクリーン上で形になったのです。音楽と、生身のキャラクターたちとともに……もちろん、両者のビジョンが完全に一致したわけではありませんが、それは問題ではありません。

――そのように、フィクション化に存在する抗いようのない枷を受け止めながら、このナチス高官のラインハルト・ハイドリヒを巡って、歴史書やノンフィクション、ドキュメンタリーでなく、小説のかたちで書きつづけたのは、どのような思いがあってのことでしょうか。
ビネ  
 暗殺自体が驚くべき物語なので、まず、そこにフォーカスを当てたかったのです。そののち、ハイドリヒの出世もまた驚くべき物語だと気づきました。両方とも、西ヨーロッパではあまり知られていなかった。それでその二つについて書くことに決めたのです。

――本書の中では繰り返し、「〈歴史〉」という言葉が使われます。「〈歴史〉」とはどのようなものだと考えておられますか。
ビネ  
 フランス語では、歴史も物語も同じ単語《histoire》 です。でもその二つは違うものです。歴史は調べて正確に語ることが難しいけれど、決して忘れるべきではない。〝それが起こった〟からです。そしてそれに対処しなくてはならない。ルールは、決して起こらなかったフリをしてはならないということです。でもそれは、フィクションを用いてはならないという意味ではありません。あるいは、歴史で遊ぶなという意味でもない。私は、例えば、ユークロニアが大好きですが、それは〝もし~だったら〟というゲームだからです。ゲームです。でももしナチスが戦争に勝ったと真剣に言い張ったとしても、それはただのフェイクニュースにすぎない。
2019年1月25日より TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開  ©Photo by Bruno Calvo All rights reserved
――この小説を書いていく中で、ビネさんは一九四二年前後の過去へさまよいますが、その過去がだんだんにビネさんの現実と重なり合うようなところへ向っていく。歴史が、ビネさんの記憶として再構成されていきます。それがこのハイドリヒを巡る物語のクライマックスと重なり合い、読者の私もいつしか歴史に肉薄していました。いい意味でも悪い意味でも、小説の持つ力を、強く感じておられるのではないか、と思うのですが、そのことについて考えておられることを教えていただけますか。
ビネ  
 文学はとてもパワフルなツールです。どんなツールでも、良くも悪くも使うことができる。政治家たちはそのことをずいぶん昔から知っていました。それを彼らは〝ストーリーテリング〟と呼びます。

――日本のある作家が以前、人が死んだあとに残るものは「記憶と誇り」だと思っていると言いました。今回『HHhH』を読みながら、そのことを時折思い出していたのですが、ビネさんは「記憶」と「誇り」について、考えておられることはありますか。あれば教えていただきたいのですが。
ビネ  
 〝誇り〟とは、普通の人たちがどう行動したかということです。落下傘兵と彼らを助けたプラハの人々のことです。〝記憶〟とは、私たちが彼らを忘れてはならないということです。
この記事の中でご紹介した本
HHhH/東京創元社
HHhH
著 者:ローラン・ビネ
出版社:東京創元社
以下のオンライン書店でご購入できます
「HHhH」出版社のホームページはこちら
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