CREATIVE SUPERPOWERS 書評|ローラ・ジョーダン・バーンバック(左右社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年2月2日 / 新聞掲載日:2019年2月1日(第3275号)

CREATIVE SUPERPOWERS 書評
非体系的「創造の教科書」
デジタル時代の創造者たちの孤絶と野望

CREATIVE SUPERPOWERS
著 者:ローラ・ジョーダン・バーンバック、ダニエル・フィアンダカ、マーク・アールズ、スコット・モリソン
出版社:左右社
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昨今、人工知能(AI)やロボットにまつわる話題が連日のようにマスコミを賑わしている。その多くは、ビッグデータと結びついたAIの進化によってどの職業職種が消滅するのかという雇用論や、将来どの企業が生き残り、あるいは衰退するのかといった産業構造論、または軍事に転用された場合の安全保障論といった分野に集中している。広範な層に最も身近な文化や思想の面で、この問題を取り上げる論考は意外に少ない。

多くの文化は、その文明の最大の繁栄期に、やや遅れて爛熟する傾向があった。ルネサンスはもとより、ウィーンの世紀末文化、戦後のアメリカのポップアートなどがその例だろう。しかし文化が様式化されて爛熟する前に、その流れを先取りし、告知する一群の先駆者がいたことも、また確かだ。彼らは芸術家であったり、人文学者であったり、詩人であったりした。デジタル革命が進行中の今、時代に先駆けてその流れを触知する人々といえば、広告やデザイン、アートからマーケティングにまたがる「クリエイター」たちだろう。

本書は、四人の編集者が、九か国の音楽家や建築家、帽子デザイナーなど多様な職種で活躍する十四人のクリエイターのエッセイを編んだ「AI時代の仕事術」、あるいは「創造の教科書」である。こう書けば、あるいは読者は今はやりの「ハウツー本」か、経営学の「マニュアル本」のようなものを想像するかもしれない。だがここには「絶対成功」の定式もなければ、マニュアルすらない。技術革新が幾何級数的に加速するデジタル社会にあって、どう創造性を高めるか、極めて個人的な体験に基づく悩みや「極意」が、非体系的に語られているのである。それこそ、デジタル社会にふさわしい「随想」のかたちで。 編者の一人ダニエル・フィアンダカは冒頭で、今の社会に必要な創造性を培うスーパーパワーを①メイキング②ハッキング③ティーチング④コピーイングの四つと定義する。メイキングとティーチングはアナログ世代にも歓迎されるが、ハッキングとコピーイングはその世代が眉を顰めそうだ。それを敢えて肯定的な意味に反転させたところに、新技術といかに折り合い、その力を自らの推進力に役立てようとするのか、現代の創造者たちの孤絶感と野望を垣間見る思いがした。

本書の成り立ちには、「森の木琴」というビデオで知られる原野守弘が深くかかわっている。巨大な木琴に見立てた森の斜面の構造物を、木の玉が落ちながら打鍵し、バッハの名曲を奏でるビデオだ。彼は「ものづくりを成功に導く七つの原理」を本書に寄せている。①知りすぎるな②いきなり考えるな③侵犯せよ④捨てろ⑤寝ろ⑥無駄のために無駄をつくるな⑥愛と尊敬である。 私は三年前の夏、北海道の「大雪森のガーデン」で、「森の木琴」の上川町バージョンを見て、その極限にまで削り落とした発想の強靭さと、「森」の環境との親和性に感銘を受けた。今必要な創造性とは、孤立を恐れない自尊心と、チームメイトとの信頼感に根差すことを、今回の収録エッセイで教えられた。

この本には、最先端の脳科学とのかかわりに触れたエッセイも多い。無理にアイデアを捻りだそうとするな。創造の神はとんでもない時、予想もしない場所に降臨する。古今変わらない知恵であり、脳科学とAI技術が追求している最先端の分野である。
この記事の中でご紹介した本
CREATIVE SUPERPOWERS/左右社
CREATIVE SUPERPOWERS
著 者:ローラ・ジョーダン・バーンバック、ダニエル・フィアンダカ、マーク・アールズ、スコット・モリソン
出版社:左右社
以下のオンライン書店でご購入できます
「CREATIVE SUPERPOWERS」出版社のホームページはこちら
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