伊藤隆編『ソーシャル・チェンジ』 中央公論新社より刊行|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年2月15日 / 新聞掲載日:2019年2月8日(第3276号)

伊藤隆編『ソーシャル・チェンジ』 中央公論新社より刊行

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 伊藤隆編『ソーシャル・チェンジ 笹川陽平、日本財団と生き方を語る』が中央公論新社から刊行された。四六判・424頁・2600円。

街中を歩く。障害者の介護施設などの近くを通る時ふと気付くと「日本財団」と書かれたマイクロバスが停められているという光景に出会う。ああ、社会的弱者への支援活動を、この「日本財団」という機構が展開しているのだな、ということに思いが至る瞬間である。
では、この本のタイトルである「ソーシャル・チェンジ」とは何を意味するのであろうか。社会を変えていく、ということを標榜するこの機構の道筋を描き出し、単に社会的貢献を受け持つという目的だけでなく、地方の活性化や本来の日本を取り戻すために何をすべきか、そして世界における日本人の果たすべき役割まで「日本財団」の目的を語りつくすのが本書であった。
文中、社会課題を解決する手法として「日本財団という方法」を作りましたと書かれている箇所に出会う。そしてまた、小さな企業を興して、自分で汗をかいてお金を稼いでいる人や、もう少し社会のために役に立つ仕事をしたいという志のある人を、さらに教育していくことによって社会課題を解決する行動者になり得るのではないか、とも書かれている。そうか、社会を変えていくのは「人」なのか、「人」を育てていかなくては本当の社会課題の解決には結びつかないのか、ということに読み終わって気付かされる一冊である。
この結論に至るために東京大学名誉教授伊藤隆が財団会長の笹川陽平にインタビューし、オーラルヒストリーとしてまとめ上げた。日本財団は誰もが知っている陽平の父、笹川良一がモーターボート競走で得た莫大な資金で作り上げた「日本船舶振興会」が基となっているが、2代目の会長に曽野綾子を迎えた経緯、笹川陽平が会長となったことなどが語られて行く。この日本財団の歴史については、髙山文彦著『宿命の子 笹川一族の神話』(小学館刊、2014年)と併せて読むことをお奨めしたい。
読後、筆者の頭に残った感懐は次のような事柄である。「日本財団」の目的とするところはあまねく理解できた。崇高な理想とその実現にかけるエネルギーは、財団の投下する費用の大きさ以上に敬意を払わなくてはならないということも理解できた。しかし、そのほとんどが会長笹川陽平の理念によって支えられているということをどのように考えるべきであろうかということである。おそらくその理念は次代もきちんと受け継がれていくであろう。ただ、このような機構が偉大な実践者のあと、形だけが残ることにならないよう祈るばかりである。

余談ではあるが笹川陽平が多忙な中、日々書き続けているブログもまた驚きをもって読むことのできる注目のコーナーであることも伝えておきたい。(K)

中央公論新社 ☎03・5299・1730
この記事の中でご紹介した本
ソーシャル・チェンジ  笹川陽平、日本財団と生き方を語る/中央公論新社
ソーシャル・チェンジ  笹川陽平、日本財団と生き方を語る
著 者:伊藤 隆
出版社:中央公論新社
以下のオンライン書店でご購入できます
「ソーシャル・チェンジ  笹川陽平、日本財団と生き方を語る」出版社のホームページはこちら
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