小泉純一郎ロングインタビュー(聞き手=佐藤嘉幸) 総理大臣が「原発ゼロ」を訴えれば反対する勢力はいなくなる 『原発ゼロ、やればできる』(太田出版)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年2月8日 / 新聞掲載日:2019年2月8日(第3276号)

小泉純一郎ロングインタビュー(聞き手=佐藤嘉幸)
総理大臣が「原発ゼロ」を訴えれば反対する勢力はいなくなる
『原発ゼロ、やればできる』(太田出版)刊行を機に

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第2回
呆れた「第五次基本エネルギー計画」

小泉 純一郎氏
小泉 
 事故からもう八年経とうとしているのに、去年の七月、また経産省が呆れた計画を出している。その「第五次基本エネルギー計画」は、二〇三〇年に向けて、電源構成比率の目標数値を設定しているが、再生可能エネルギー二二~二四%、原子力発電二〇~二二%、化石燃料五六%、つまり、今後も原発エネルギーを基幹電源として維持すると明記しているんだ。反省がまったくない。経産省は、電力会社の安全性を監督、監視する機能を担っていることを忘れている。これは、本当に酷い。事故に懲りず、反省もせず、今後も同じように、原発で二〇~二二%の電源を維持していく、と抜け抜けと言い張る図々しさ、厚かましさ。あの優秀な経産官僚が、どうしてこんなに驕ってしまったのか、原発にこだわるのか。さっぱりわからないね。私には、憤りしか感じられない。
佐藤 
 経産省は二〇三〇年の時点で二〇~二二%の電源を原発で作ることを目標にしているわけですが、実際には、原発再稼働は遅々として進まず、老朽原発の廃炉は進み、新規原発の建設も不可能ということで、この計画は「画に描いた餅」になっています。他方で、世界の潮流は自然エネルギーの方に向かっており、経産省の計画に基づいてエネルギー政策を進めていたら、世界から取り残されてしまう。むしろ自然エネルギーを基幹電源にして、分散型エネルギー生産システムを構築していくべき時期に来ているのです。それなのに日本は、相変らず二〇世紀的な、今となっては過去のものとなった電源生産の思想、つまり原発のような中央集権的、大規模電源生産システムに依存するという考え方から抜けられていません。
小泉 
 最近、これまた酷くて、呆れたことがあったんだ。九州では太陽光発電がどんどん拡大している。そうなると原発はいらなくなってしまうから、九州電力は太陽光発電を「出力抑制」する(発電量が過多になる日中に一時的に発電を停止)ことにしたんだ。さらに、そうした方針に経産省も乗っかっちゃっている。普通に考えれば、電気が余っているなら原発を止めるべきで、太陽光発電を止めるなんてそんな馬鹿なことするな、と言うべきところを、逆なんだ。このこと一つ見ても、経産省は、完全に電力会社の虜になってしまっている。事故調査委員会が言っていることそのものだ。原発事故に対して反省のかけらもない。呆れ果てるしかないね。
佐藤 
 そうした意味で小泉さんは、原発事故後に自らを恥じ、反省し、原発に対する態度を一八〇度転換された。しかし、現在の自民党の政治家は果たしてどうなんでしょうか。もちろん脱原発の考えを持っている方もおられるかもしれませんが、それを実際に表明する人は稀です。例えば河野太郎さんのように、大臣に任命されて政府の中に入ってしまうと、脱原発の方針は一切口にできなくなり、実際何ら発言しなくなってしまう。それだけではなく、ほとんどの自民党の政治家が、脱原発について何も語らない。なぜ、これほどまでに何も言えないのでしょうか。
小泉 
 それは私が聞きたい。なぜ言わないのか。まったくわからない。
佐藤 
 政府は、原発推進路線を依然として進め続けています。安倍政権は原発輸出計画を進めていますが、原発が非常に高コスト化している現状もあり、すべての計画が頓挫してしまいました。今年一月には、日立によるイギリスへの原発輸出計画が凍結されたことが発表されました。安全性の面だけではなく、経済的にも、原発推進政策は袋小路に入っていると見ていいのでしょうか。
小泉 
 八方塞がりだと言っていい。原発輸出なんてやっていたら、すべて駄目になる。
小泉 
 日本以外の多くの国は、むしろ原発から離れたいと思っている。自然エネルギーを拡大していこうという方針があって、原発をやめる方向に進んでいる。福島原発事故前は原発はコストが安いと言っていたけれど、安全対策を考えると、他の電源よりもはるかに費用がかかる。税金も使う。専門家も、事故前は原発は一基五〇〇〇億円ぐらいでできると言っていたが、今はそんなわけにはいかない。一兆円を超えるというのが定説になってきている。原発メーカーも、本当は採算がとれないことがわかっているんだと思う。

それに加えて、CO2を出さないクリーン・エネルギーだと言っていたのも、真っ赤な嘘だとわかってしまった。考えてみれば、ウラン燃料を燃やして出る廃棄物の捨て場所がない。処分場がないわけだ。CO2どころじゃない、もっと危険な廃棄物を出しながら、処分場がないんだからね。私はよく言っているんだ。産業廃棄物を処分する産廃会社は、自分で廃棄物を処分する場所を作らない限り、都道府県知事は、産廃の会社を作らせない、許可を下さない。産業廃棄物に比べれば、原発のゴミ、核のゴミは、はるかに環境を破壊する危険性がある。人類に対する影響が大きい。にもかかわらず、処分場がない。それをわかっていながら、どうして原発を進めるのか。さっぱりわからないね。
佐藤 
 非常に無責任ですね。
小泉 
 無責任もいいところだ。仮に私の言ってることが間違ってるというんだったら、質問に来ればいい。経産省の説明は全部嘘だ、君ら恥ずかしくないか、とまで言っているんだから、抗議に来ればいいんだ。実際に、いつでも話すから質問に来いと言っている。せめて一人ぐらいはそういう人間がいてもいいと思うんだけど、誰も来ない。おかしなことだ。政府も経産省も、抗議できないんだと思うね。
佐藤 
 誰ひとり抗議にも来ないというのは、自ら言っていたことが嘘であると証明してしまったようなものですね。その上で、原発推進政策を選んでいる。不条理極まりないことです。
小泉 
 こんなことをやっていて、本当に国民から支持されるのか。
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この記事の中でご紹介した本
原発ゼロ、やればできる/太田出版
原発ゼロ、やればできる
著 者:小泉 純一郎
出版社:太田出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「原発ゼロ、やればできる」出版社のホームページはこちら
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