小泉純一郎ロングインタビュー(聞き手=佐藤嘉幸) 総理大臣が「原発ゼロ」を訴えれば反対する勢力はいなくなる 『原発ゼロ、やればできる』(太田出版)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年2月8日 / 新聞掲載日:2019年2月8日(第3276号)

小泉純一郎ロングインタビュー(聞き手=佐藤嘉幸)
総理大臣が「原発ゼロ」を訴えれば反対する勢力はいなくなる
『原発ゼロ、やればできる』(太田出版)刊行を機に

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第3回
「原発ゼロ基本法案」と自然エネルギーへの転換

佐藤 
 そういう中で、小泉さんが顧問を務められている、原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)では、昨年一月、「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」を発表されました。これは非常に画期的な内容です。むしろ現状に鑑みれば、これしかないという最善の方針を打ち出されたと思います。全原発を即時停止し、自然エネルギーへ転換する様々な政策を打ち出していく。また同時に、政府が支援して原発立地自治体の産業転換を図っていく。そういう方針を打ち出された。そして、この基本法案に野党が乗り、微修正の上で「原発ゼロ基本法案」として国会に提出されました。この法案は、すぐにでも審議されるべきではないでしょうか。この法案を審議しない現在の政治そのものが最大の問題だと私は思います。世論調査によれば、六〇~七〇%の方々が脱原発を進めていくべきだと答えています。そうした人々の思いを実現するのは、まさに政治の役割ではないでしょうか。
小泉 
 自民党が原発を推進しているから、国会では審議されないんだろうけど、審議するかどうかは、やっぱり政府が原発をゼロにしようと思わないと駄目だな。やればできるのにやらない。歯がゆいな。それと、政治というのは、与党だけじゃなく野党もある。野党が強くなると、政治もしっかりしてくるんだ。今のこの状況を見て、野党は何をしてるんだ、と私は言いたい。与党を助けている感じがするね。
佐藤 
 肝心の野党が分裂してしまっていて、結果的に、与党にとっては漁夫の利となっています。
小泉 
 与党をしっかりさせるのは、野党の役割なんだ。もちろん与党の中でも、お互いに批判がなければいけない。しかし、より強く批判しなければならないのは、野党のはずなんだ。そこがうまくいっていない。そもそも審議する、しないという問題ではない。わかりきったことじゃないか。原発なんてなくても、自然エネルギーで電力は十分にまかなえる。「原発がなかったら、停電が起きる」、「一日、二日ならともかく、何ヵ月もの停電に、国民は我慢できない」と、推進論者は言っていた。しかし、原発がなくても停電が起きないことを、日本の国は証明してしまった。事実が証明したんだ。

現在、原発再稼働が少し始まっているけれど、福島第一原発事故が起きるまでは原発は五四基あった。そのうち稼働しているのが約四〇基。それで三〇%の電源を供給していた。あの事故の後、二年間は二基しか動いていない。その後の二年間はまったくのゼロ。にもかかわらず、まったく停電は起きなかった。原発なしでやっていけるのに、なぜすぐやらないのか。ドイツは、日本の事故を見てから、原発ゼロの方針を打ち出した。今やドイツの自然エネルギー比率は、日本が当時原発で供給していた、全電源に占める三〇%の電力を越えた。いくらか原発は残っているけれど、全体としては、自然エネルギーを拡大していっている。全電源の三〇%を越えるような電源を、自然エネルギーでやっていけることを証明したんだ。そういういい例があるのに、なぜ日本は学ばないのか。
佐藤 
 日本でも、自然エネルギー三〇%という数字は十分可能だと思います。
小泉 
 可能です。もう一五%にまでなっているわけだから。事故前は二%程度だった。それが今や、太陽光や風力発電などの自然エネルギーで、一五%程度の電力が作られている。原発が供給していた三〇%、本気になってやれば、一〇年経たずに達成できる。そうなれば、原発なしでやっていけるんだよ。
佐藤 
 今は、電力会社が自然エネルギーの出力抑制まで行って、強引に原発を存続させようとしています。しかし逆に言えば、出力制限が行われるほど多くの電気が、自然エネルギーによって作られているわけです。今後はむしろ、自然エネルギーにこそ可能性があるはずです。
小泉 
 原発を維持するために、自然エネルギーを抑えている。まったくどうかしているね。
佐藤 
 つい先日、経団連の中西宏明会長(日立製作所の会長でもある)が、年頭の定例会見で、次のような発言をしました。「東日本大震災から八年が経とうとしているが、東日本の原発は再稼働していない。国民が反対するものは造れない。全員が反対するものをエネルギー業者や日立といったベンダー(設備納入業者)が無理に造ることは、民主国家ではない」。中西さんは、原発に関して、国民的な議論の場を作っていくことを呼びかけています。中西さん自身は原発再稼働賛成という立場のようですが、国民的な議論を作っていくことは重要です。
小泉 
 中西さんの発言はいいんだけど、ならば、まずは日立で原発をやめろと言いたい。自分の会社なんだから、今すぐにできる。「日立は原発をやめて、自然エネルギーに転換します」と言うべきなんだ。その方が、話が早い。経団連会長の発言ならば、影響も大きい。現在の政府の方針に協力するのもいいけれど、政府に対してよりよい方向を促していくために、経団連会長と原発メーカーの日立が「原発をやめる」と言えば、もっと大きな影響力がある。
佐藤 
 原発メーカーが「原発はもう作らない」、「自然エネルギーに転換する」と宣言すれば、経済界もその方向に動いていくことが予想されます。
小泉 
 それに続く企業がどんどん出てくるよ。
佐藤 
 原発は、政治だけの問題ではなく経済の問題でもありますから、経済界からの動きが出て来ることも期待したいと思います。
小泉 
 自然エネルギーというのは、地産地消の問題とも深く関わっている。これは、与野党共通したこれからの課題でもある。大きな地域に一つの会社が電気を供給するのではない。どこかで事故や災害が起こっても、小さな地域単位で電源が供給できる、というのが自然エネルギーの根本的な考え方だからね。エネルギー地産地消は将来のあるべき方向であり、自然エネルギーへの転換はそれに向けてのいいチャンスだと思う。さらに日本は、自然エネルギーに恵まれているんだ。太陽、風、水、地熱だって利用できる。世界でも、稀に見る自然エネルギー大国なんだ。資源小国だった日本が、これから資源大国になる。
佐藤 
 重要なのは、自然エネルギーが、地方の経済を活性化するためにも役立つということですね。これまでは、大企業である電力会社が、利益を中央に吸い上げていた。しかし、今後は地方が自分たち自身の経済活動として自然エネルギーを推進していけば、その利益で地方が活性化される。こうした方向性は今後の日本にとって非常に重要です。地方が経済的に衰退して行く傾向がある中で、自然エネルギーが地方にとって大きな経済的活力になる。
小泉 
 自然エネルギーを拡大すると同時に、地域ごとに自然エネルギーを活用していく。新しい産業を興すという面でも、これが好ましい。
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この記事の中でご紹介した本
原発ゼロ、やればできる/太田出版
原発ゼロ、やればできる
著 者:小泉 純一郎
出版社:太田出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「原発ゼロ、やればできる」出版社のホームページはこちら
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