小泉純一郎ロングインタビュー(聞き手=佐藤嘉幸) 総理大臣が「原発ゼロ」を訴えれば反対する勢力はいなくなる 『原発ゼロ、やればできる』(太田出版)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年2月8日 / 新聞掲載日:2019年2月8日(第3276号)

小泉純一郎ロングインタビュー(聞き手=佐藤嘉幸)
総理大臣が「原発ゼロ」を訴えれば反対する勢力はいなくなる
『原発ゼロ、やればできる』(太田出版)刊行を機に

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第4回
核廃棄物の処分場をめぐって

佐藤 
 先ほど、核廃棄物の処分場の話をされました。その点に関してもお伺いできますか。
小泉 
 原発というのは、「トイレなきマンション」と言われるように、ゴミを捨てる場所がない。今は主に、各原子力発電所の敷地内に保管するか、青森県むつ市の中間貯蔵施設に、核のゴミを、とりあえず貯蔵している。しかし、原発を続けていけば、ゴミはどんどん増えていく。将来的には、処分場が足りなくなることはわかりきっている。安全対策にしても、放射能が漏れちゃいけないから、大変なんだ。しかも何千年、何万年、危険性が減らないゴミであって、日本には処分するような場所を、現実的に作れない。そうしたゴミ処理問題一つとっても、まったく展望が開けないわけだ。
佐藤 
 フィンランドに建設中の、使用済み核燃料を埋める施設「オンカロ」を視察された話を、本の中で書かれています。
小泉 
 「オンカロ」というのは、フィンランド語で「空洞」とか「隠れ家」という意味らしいんだけれど、今や「オンカロ」という言葉は、核廃棄物処分場の代名詞にもなっている。現地で実際に見てみると、日本で、こういう施設ができるのか、大きな疑問を持った。というのは、フィンランドは、国土全体がほとんど硬い岩盤でできている、地盤が非常に強い国なんだ。さらに「オンカロ」があるオルキルオト島には、ヘルシンキ空港からジェット機で一時間、そこからまた車と船を使って、たどり着くまでにはかなりの時間がかかる。その処分場の入口も岩盤でできていて、地下四〇〇メートルの場所に、二キロメートル四方のゴミ捨て場を作っている。そういう場所は、日本にはない。しかもフィンランドには、四基しか原発がないんですよ。「オンカロ」は、そのうち二基分のゴミを貯蔵することしかできない。他の二基から出る廃棄物の処分場はまだ決まっていない。フィンランドの四基に比べて、日本には福島第一原発事故前に五四基もの原発があった。たとえばいま原発をやめたとしても、今までのゴミは処分しないといけない。外国は受け入れてくれない。日本国内のどこかで、千年万年、人に触れないように、ゴミが拡散しないような処分場を作らないといけない。それだけでも大変なのに、再稼働すれば、またゴミが増えていく。どう考えても、原発を続けていくのはおかしな話だね
佐藤 その点から考えても、原発が「クリーンなエネルギー」であるなどとは決して言えません。他方で、そうした核廃棄物の処分場を地方に押し付けようとする動きもあります。しかし、核廃棄物が危険なものであることは、受け入れる側にはわかりきっていることです。結果的に反対運動が起こり、日本では処分場を作る可能性はまったく開けていません。
小泉 
 みんな反対している。例えば、地方の自治体に対して、「核廃棄物の処分場を作ってくれれば補助金をあげるから、手をあげてください」と言っても、危険だとわかっているから、全然手をあげるところはない。それならばと言って、経産省が候補地を選定する。でも、そんなことしたって、候補地に決まったところは全部反対するに決まっている。原発を進めようとする人たちにとっては、お先真っ暗なんだ。
佐藤 
 客観的に見て、八方塞がりの状況になってきているわけですね。
小泉 
 先程言われたように、輸出だって全部可能性が断たれた。まさに行き場がない。
佐藤 
 原発は、安全対策のためのコストがどんどん高くなってきていますから、外国に売ろうとしても高すぎて採算が合わない。また原発を買う側としても、あれほど悲惨な事故を起こした日本の原発を導入しても大丈夫なんだろうか、という疑念を持つことは当然考えられます。
小泉 
 ゴミ処理、安全面の問題だけではない。原発っていうのは、環境に対しても、常にダメージを与える技術なんだ。原発は全部沿岸にある。これは専門家に聞いた話だけれど、ウラン燃料を燃やすときに、すごい熱が出る。それを冷やすためには、水が必要となる。この時に使う水が大量だから、沿岸に作って、海水を利用するしかない。大量の海水を汲みあげれば、どうなるか。そこにはプランクトンや微生物、魚介類、様々な生物が生息しているのだから、その地域の生態系が破壊されてしまう。また逆に、原子炉を冷やした後の温水は、海に放水される。今度は海水の温度が上がる。一度上がるだけでも生態系は敏感に変わる、とその専門家は言っていた。引き込む海水、放出される温水、原発は二重に環境を汚染している、環境破壊産業だということだ。原発が放水する温水は地球の温暖化にも関係しているんじゃないか、と私は思う。海を温めてしまっているんだから、それは当然陸地にも影響がある。
佐藤 
 科学者の水戸巌氏や小出裕章氏も、「原発は海温め装置と呼ぶべきだ」と言っていますね。
小泉 
 その通りだよ。
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この記事の中でご紹介した本
原発ゼロ、やればできる/太田出版
原発ゼロ、やればできる
著 者:小泉 純一郎
出版社:太田出版
以下のオンライン書店でご購入できます
「原発ゼロ、やればできる」出版社のホームページはこちら
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