みずとは なんじゃ? 書評|かこさとし (小峰書店)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年2月9日 / 新聞掲載日:2019年2月8日(第3276号)

かこさんから最後の贈り物   
世界を慈しむ科学的であたたかなまなざし

みずとは なんじゃ?
著 者:かこさとし
イラストレーター:鈴木 まもる
出版社:小峰書店
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 「みずとは なんじゃ?」は、二〇一八年五月に亡くなった、かこさとし氏最後の著作。もう絵は描けないから、と、絵本作家の鈴木まもる氏に絵は託し、綿密な打ち合わせを重ねながら完成したという。

六歳になったばかりの息子と、読んでみた。彼は「だるまちゃん」「からすのパンやさん」シリーズは読んでいる。

かこさとしさんのいちばん新しいご本だよ、と誘うと彼は大乗り気でやってきた。どうやらこれはかこ氏の著作の中でも、「だるまちゃん」シリーズのような「お話もの」でなく、サイエンス的なリサーチに基づいた「探究もの」の系統に属する本のようだ。息子には、こちらの系統はほとんど読ませたことがないので、興味が持続するか心配しながら読み始めた。

が、杞憂だった。科学的な知識に基づいて「水」を紹介しつつも、その言葉の選び方がなんともやさしい。水に熱を加えると水蒸気になる、という説明をするのに「みずは、まるでにんじゃのように すがたをけして みえなくなったり、たくみなしばいのやくしゃのように すがたを かえることが できるのです」という具合。ほかにも水は料理人、医者、クーラー、布団などに喩えられ、子どもだけでなく大人の私の心にも、その大切さがそれこそ水のようにぐんぐんしみ込んで理解できる。読み手の生活体験に根ざした喩えをうまく用いながら、「水」についてあらゆる角度から掘り下げていく。

満々と水をたたえた地球が見開きいっぱいに描かれたページにいたって、息子は「ちきゅうは、どっさり、たからもの(水)があるんだー。やったぁ!」と喜びの声をあげた。地球上の水分が水蒸気となって空にのぼり、また雨になって降るくだりでは「水って超すごいね」「まるで『きせき』の日だね」と。本で体験するセンス・オブ・ワンダーである。

読み終わって数日経っても、「水っていったいどこからできてるの?」「水って、影がないのかな?」など、水のことをあれこれ話している。

なんというか、まるでだるまちゃんやかみなりちゃんのことを話すような親しさで、水に感心したり、水に疑問を抱いたりしているのである。

これはきっと、かこさとし氏の世界を見る目がそうだからなんだろう。彼の目には、自然現象も、だるまちゃんも、人間も、動物も、植物も、地下鉄のしくみも、むしばも、等しく愛しく、映っていたのだろう。それをサイエンティフィックな知的探究心で掘り下げていくのが、もともと化学技術者であったかこ氏らしい。科学的でありながら、その優しく分け隔てのない態度が、「このように世界と向き合うんだよ」というメッセージとして、ちゃんと子どもにも伝わっている。

鈴木まもる氏の親密な絵も、ひと役買っている。奇をてらわない画風であるがゆえに、子ども達には、自分の身近にあるあれが描かれているのだなと、すんなり理解できる。そして一冊を通して登場する三人の子どもの誰かしらに、自分やきょうだいを投影するだろう。また、絵の中の子どもの持つコップにからすのパンやさんが描かれていたりと、かこ氏の小さなファンにはたまらない愛あるしかけも多くほどこされている。最初、「かこさとしさんの本なのに、絵がちがう」とすぐに気づいたうちの息子も、読み進めるうちに、やっぱりこれはかこさんの本なんだと、思ったようだった。

最後に、水や環境の守り手として、読者にも大きな役割があることが伝えられる。科学的な態度とあたたかなまなざしで世界を慈しむ、かこさとし氏からの最後の贈り物であった。(ふじた・ちおり=東京国立博物館研究員)
この記事の中でご紹介した本
みずとは なんじゃ?/小峰書店
みずとは なんじゃ?
著 者:かこさとし
イラストレーター:鈴木 まもる
出版社:小峰書店
以下のオンライン書店でご購入できます
「みずとは なんじゃ?」出版社のホームページはこちら
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