沖ななも『一粒』(2003) 北浦和 南浦和 西浦和 東浦和 武蔵浦和 中浦和と無冠の浦和 |書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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現代短歌むしめがね
更新日:2019年2月12日 / 新聞掲載日:2019年2月8日(第3276号)

北浦和 南浦和 西浦和 東浦和 武蔵浦和 中浦和と無冠の浦和
沖ななも『一粒』(2003)

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埼玉県育ちで、『埼玉 地名ぶらり詠み歩き』(さきたま出版会)なんていう埼玉の地名を取り扱った著書もある歌人の一首。なんと「浦和」には東西南北すべてが付いた駅名がそれぞれ存在する。さらに武蔵浦和と中浦和なるものまであり、いちばん歴史が古い本家本元の浦和駅は、「無冠の浦和」とオチをつける。

なおこの七つの駅のうち北浦和、南浦和、武蔵浦和、中浦和は浦和駅から2キロメートル圏内にあるという密集具合である。大胆に五七五七七をはみ出して、早口でむりやり収めるような歌のつくりになっているのも、浦和という地域のぎゅっと凝縮されたイメージと重なっている。短歌はだいたい五つのブロックに分けて読むことが多いので、「北浦和/南浦和 西浦和/東浦和/武蔵浦和 中浦和と/無冠の浦和」なんて切り方で読むのが適当だろうか。最後の「無冠の浦和」は王者の余裕を見せてゆっくりと音数通りに読ませる、という点だけは譲れないところだ。

「無冠の浦和」という締め方にユーモアを感じさせる歌であるが、二〇〇一年に浦和市・大宮市・与野市合併によって「さいたま市」が誕生したことがひそかな伏線だろう。「浦和」の民としてのささやかな抵抗といえる一首なのだ。

ちなみに、二〇一七年にこの「浦和」シリーズにもう一つ新顔が加わった。埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線の浦和美園駅である。なんと浦和の後ろに続けてゆく新パターン。浦和の増殖はまだまだ続くのだろうか。
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