日本酒はなぜうまいのか?和食が世界をリードする 【日本文明研究所シンポジウム載録】|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2016年7月1日 / 新聞掲載日:2016年7月1日(第3146号)

日本酒はなぜうまいのか?和食が世界をリードする
【日本文明研究所シンポジウム載録】

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日本文明研究所、第四回シンポジウムが、五月二四日に東京・渋谷の日本経済大学で行われた。今回のテーマは「日本酒」。登壇者は、今や日本を代表する日本酒ブランド「獺祭」の蔵元・旭酒造(株)代表取締役社長の桜井博志氏と、皇學館大学非常勤講師の竹田恒泰氏、国税庁醸造試験所の鑑定官を経て現在日本薬科大学特任教授、東京大学名誉教授の北本勝ひこ氏。開会を前に、会場に冷えた「獺祭」が振る舞われ、心地よい空気の中、北本氏が「日本酒と私の?菌人生」を講演。その後、当研究所所長で作家の猪瀬直樹氏の司会で「日本酒はなぜうまいのか?~和食が世界をリードする」をテーマに、『古事記』から日本酒の世界進出まで、幅広く語られた。その一部を載録する。(編集部)
日本酒――そのおいしさの変遷

猪瀬
 会場の皆さんにも試飲していただきましたが、いかがでしたか? 「獺祭」には辛味と甘味と渋味が同時に広がるような、味の幅がありますよね。
竹田
 味があり香りも華やかな純米大吟醸ですね。
桜井
 「獺祭」の前は、爽やかですらっとした、香りが立つ味のない酒が持て囃されました。それが社会情勢とともに、味を求めるようになった。おいしさは時代にそって変わってきたと感じています。
猪瀬
 新潟の「越乃寒梅」のブームぐらいから、お酒の飲み方が変わったかもしれませんね。今はいいお酒を「冷酒」で飲みますが、それ以前は、燗をつけず瓶から茶碗につぐのは「ひやざけ」と、割と蔑んで呼ばれたように思います。日本酒の特級、一級、二級という級別制度が、一九八九年の酒税法改正で廃止され、大吟醸、吟醸、純米酒といった表示基準ができた。精米歩合七〇%以下は本醸造と定められていますね。さらに精米歩合六〇%以下、つまり米を四〇%も削るのが吟醸、五〇%削ると大吟醸になります。昔は醸造用アルコールが混ぜられた質の悪い酒もあったでしょう。酒税法改正が、日本酒の品質低下を食い止めたと言えるのでしょうか。
北本
 級別制度は作り手の申告制でしたが、改正後の表示基準には明確な規定があり、その点では品質の向上に一役買っていると言えるかもしれません。
しかし醸造用アルコールを添加することは、必ずしも酒の品質を下げるということではないんです。猪瀬さんのイメージされているのは、醸造アルコールをもろみの二倍加えた、三倍増醸清酒――三増ではないかと思います。そういう悪酒は、ほとんどなくなりましたね。ただ、醸造用アルコールは、今でも本醸造には少量入っています。本醸造とは昔ながらの酒で、江戸時代に「柱焼酎」という、米焼酎等を添加しアルコール度数を上げることで火落ちしにくくした製法の流れをくみます。ブレンディッドウイスキーのカティーサークも同じスタイルです。
猪瀬
 なるほど、伝統的な醸造アルコールの使い方が生きているわけですね。ところで「獺祭」は二三%まで米を削っています。なんだかもったいない気もしますが、おいしさを突き詰めると、そういう作り方になってくるのでしょうか。
桜井
 理論的には、大吟醸は米の外側五〇%を取り除けばいいのですが、米は自然のものですから、どこに真中があるか分りません。五〇%削っても、糠やタンパク質など、除きたいものが残ってしまう可能性があるんです。山田錦は高精米しても崩れにくい米で、実は「獺祭 磨き その先へ」という、二三%以上削った酒も作っています。
猪瀬
 酒造りには様々な工程がありますが、究極のおいしさは、精米歩合のシビアな数字に比例すると考えていいわけですか。
桜井
 それだけとはいいきれないですが、結果として磨いた方がおいしいお酒が生まれやすいということです。最初はただただ日本一の精米歩合を目指して磨いてみただけでした。酒造りの専門家には、一定以上米を磨くことに意味はないと言う方もいました。でも実際作ってみると、精米歩合が低い酒の方がおいしかったし、料理にも合いました。
北本
 数十年前にコンピュータ制御の精米機が出来て、五〇%でも三五%でも機械で精米できるようになった。それ以前は五〇%まで米を搗くのに、約三日間精米杜氏が搗き続ける必要があったのです。物理的に七〇〇㎏ぐらいの小さな仕込みが限界でした。今日の「獺祭」のおいしさには、コンピュータ制御の精米機も貢献していると思います。
桜井
 そうした技術革新に加えて、日本人が日本酒においしさを求め出したことが、日本酒を変えてきたと思っています。
日本酒と海外進出、伝統と技術革新

猪瀬
 海外文化の流入で比較対象ができ、和食や日本酒に新たにおいしさを求めるようになったのかもしれませんね。和食は二〇一三年末、ユネスコ無形文化遺産になりました。今後は、例えばワインと日本酒を比較する物差しを作っていくことが求められますね。
桜井
 蔵元としては、異業種格闘戦で勝っていける、「絶対的なおいしさ」を目指していくしかないですね。日本の伝統的な文化だ、と言ったところで、海外では通用しない。抵抗もありますが、最近、例えばフレンチの帝王と言われるロブションが「獺祭」を飲んで、「一瞬で恋に落ちた」と言ってくれました。
猪瀬
「獺祭」を輸出している国はどれくらいあるのですか。
桜井
 マスコミ的には二〇か国と言っていますが、一、二ケースから大使館に送っている所も含めれば一〇〇か国を越えています。
竹田
 二年程前、パリでレストランに入ったところ、日本酒が置いてありました。随分変わったな、と日本酒をオーダーしようとして、その価格に驚きました。なんとワンショット五〇〇ユーロ、当時の七万円です。ボトルじゃないですよ。日本なら一升瓶で数千円のお酒です。どのように値付けされているのか聞いたところ、仕入れ価格は関係ない、この酒はこの値段で出すに値する味なのだと。今後、欧米の金持ちが日本酒の魅力に気づき、国際価格がどんどん上って、ロマネ・コンティのように一本数十万みたいなことになったら、多くの日本人が日本酒を飲めなくなるのではないかと危惧しています(笑)。海外に日本酒の魅力が伝わることがうれしい反面、酒蔵の仕込み量は決まっていて、急に二倍、三倍とは作れませんから。
猪瀬
 「獺祭」は海外でいくらぐらいで飲まれているんですか。
桜井
 アメリカで二倍、ヨーロッパで四倍近い金額です。仕入れ価格は関係ないとの話でしたが、フランスのレストランでは大抵、仕入れ価格の三倍をかけますから、単純計算で「獺祭」も日本で買う十二倍の価格ということになります。
竹田
 逆に言えば、日本酒は、ロマネ・コンティと並ぶ価格で取引されるだけの価値がある。しかし、おいしいお酒が造られるようになり、日本酒ブームと言われながらも、国内では毎年数%ずつ消費量が下っている状況ですよね。
桜井
 今まで日本酒のお客さんと思っていた団塊の世代以上が、焼酎に行ったきり帰ってこない状況です。日本酒の一人当たりの消費量が多い秋田、新潟、島根で、売り上げが落ちています。一方東京は、微増ながら伸びている。若い世代が日本酒を発見している、という状況があるのではないかと思っています。
竹田
 私は、「取りあえずビール」が良くないと思うんです。日本中で日々行われている乾杯の一割が日本酒になるだけで、毎年数%ずつの減少は下げ止まるのではないか。少し意識的に日本酒を飲むようにする、「とりあえずビール」をやめるということで、皆様いかがでしょうか(笑)。
猪瀬
 確かに、いつから「とりあえずビール」になったのでしょうね。一方「獺祭」は最近、一般的な居酒屋にも置いてありますね。
桜井
 私は、「幻の銘酒」というような希少性によるブランドの価値付けは、あくどいと思っています。出来る限り「獺祭」を飲んでもらえる場を広げ、徹底的においしさで勝負して、次も「獺祭」を選んでもらえればと。なにも、日本酒業界がエルメスのマネをしなくていい。
猪瀬
 山口県の一酒造が全国ブランドになったら、普通は生産量が追い付かない。でも旭酒造はいいものを普及させるための、大量生産システムを作り上げ、高級店だけでなく、居酒屋にも高品質のものを供給できる体制を作ってきた。どんな伝統産業も直面しているのが、職人の高齢化と後継者問題です。杜氏も例外ではありませんが、旭酒造には若い人たちが勤めていますよね。また伝統的な冬仕込みだけでなく、夏仕込みの酒も造り、一年中工場を稼働させるシステムが整っています。
桜井
 旭酒造の社員の平均年齢は、二六・九歳です。以前は、夏は田んぼ仕事をし、閑散期の冬場は杜氏に出るというように、農村と酒蔵がリンクしていました。でも杜氏制度は、日本経済の発展で、農村とともに崩壊しました。伝統を守り新規参入を排除すれば、産業は細りゆくばかり。日本酒産業を残すためには、若い人たちに酒造りを教えていかなければなりません。また今は稲作中心の生活ではなく、日本が持つ空調技術を使えば、夏場の冷蔵管理も容易ですから、一年中酒造りをするのが合理的な選択です。技術を追い、品質を高めていく。そうすることで、世界という壁に対して、正面突破をはかろうとしています。
今まで日本酒業界で、米に対する水分量や、発酵過程、?の成育過程の処置判断など、杜氏の勘と経験が担ってきたところを、「獺祭」はデジタルの力で、綿密に数値化しています。発酵の度合いを日々数値で叩き出し、それに基づく〇・一度単位の微妙な温度コントロールは人がやる。そこは機械化しないんです。例えば刺身は、機械で切るより人の方がおいしく切れるでしょう。そうした微妙な作業は、人の方がうまいんですよ。
『古事記』で神事だった酒造り

猪瀬
 北本さん、そもそも鑑定官は国税庁の管轄ですね。最近、第三のビールの影響で酒税は少し減り一・四兆、煙草は小売価格が上ったため二・二兆ですが、それぞれ消費税の一%近い大きな税源です。
北本
 ドイツにはビールの醸造法がありますが、日本は酒税法で、酒造法ではないんですよね。八九年の酒税法改正は、大変革でした。しかしそもそもが酒税法ですから、質のいい酒を造ろうという発想より、いかに税金を負担させるかに主眼が置かれます。日本酒業界はひとえに、旭酒造をはじめ、全国の蔵元が一生懸命にいいお酒を造り続けることで、品質が上ってきたのだと思います。
猪瀬
 二〇一五年には規格が厳格化され、日本産の米を使った、国内生産のもののみ、日本酒と表示できることになりました。
北本
 これははじめての酒造法的な概念と言えますね。日本酒は外国でもたくさん作られていて、中でも韓国には最も規模の大きな工場があります。そこで造られたものは、二〇一五年以降は日本に入ってきても「清酒」としか表示できなくなります。
猪瀬
 この方針は、国内生産者を保護することにも繋がりますよね。酒米の生産農家を増やさない限りは、いい日本酒も造れない。
桜井
 山田錦は「酒米の帝王」と言われる優れた米ですが、生産量を増やすことを考えずに、現状の枠内でいくら新たな方針を立てても、新規参入が阻害されるだけ。発展性がないですよね。山田錦を旭酒造が買い過ぎている、と非難されるのですが、そんなこと言ってないで山田錦の生産量を増やして欲しい。日本の農業は毎年八万tずつ米の生産が落ちている状況ですから、増やせばいいだけの話です。山田錦は普通の飯米よりはるかに高い米ですし。山田錦は兵庫県では三農協だけが推奨農協となっています。が、どうしても足りないので、それ以外の農協に、山田錦を作ってもらえるように頼んだことがあります。その夕方、全農の部長から携帯に電話がかかってきて、勝手に米の作付を頼むのはやめてほしいと。
猪瀬
 農協の作付規制は、つまり国による規制ですよね。これから二〇二〇年にむけて、外国人の来日が増え、日本文化が知られる機会ですから、阻害や規制ではなく、国の観光政策や、側面援助があるべきだと思いますね。 
桜井
 そうした攻防はありつつも、今は新潟と栃木でも山田錦を作ってもらっていて、昨年度農水省の推計では、山田錦が六二万六〇〇〇俵(三万七〇〇〇t)になりました。つい先頃まで三〇万俵台前半だったので、倍に増えています。国内の米の生産量は、八〇〇万t弱ですから、山田錦は〇・五%強にあたります。
猪瀬
 耕作放棄地なんかなくして、値段も高い山田錦を作ればいい、という前向きな発想ですよね。
桜井
 そうなれば農家は収益が上がり、次世代の跡継ぎ問題も解決します。
猪瀬
 ところで竹田さんもお酒を造っているとか。
竹田
 はい。『古事記』を軸に日本を学ぶ勉強会の一環で、酒造りをしています。非売品ですが、純米吟醸酒「國酒禊」と言います。日本は稲作文化ですが、今ではほとんどの人が田植えをしたことも、お酒を造ったこともないですよね。実際に酒造りを体験することで、何か日本というものを感じられるのではないかと、種もみを撒くところから田植え、稲刈りまで完全無農薬で酒米を育て、酒蔵の協力を得て、仕込みから絞り、瓶詰まで体験させていただいています。『古事記』は日本最古の歴史書で、ここに書かれていることが起源ということになりますが、酒造りは神事として記されています。
二〇一六年は伊勢志摩サミットの開催年ですが、伊勢神宮では毎秋、今年の五穀豊穣を感謝し来年の豊作を願う、神嘗祭が行なわれています。稲は「命の根」。神嘗祭は来年、日本人が命を長らえられるよう、神に祈る重要な祭です。神様の怒りに触れるようなことがあれば、来年の実りを約束していただけない。神前には間違いのないお米、お酒を差し上げなくてはいけないということで、神宮では神主自らが、田植えからお酒を造るところまで行います。白酒・黒酒・醴酒・清酒という、四種類のお酒が神前に上るのですが、そのうち清酒以外は、神宮で醸します。また醴酒は、神主が自ら育てた米で造られます。それぐらい酒は重要なものであり、酒がなければ祭は成り立たないのです。
猪瀬
 北本さん、ワインは一度発酵させるだけでできてしまう。それに比べて日本酒の工程は、?を成育し、酒母、もろみの仕込み等、複雑ですね。
北本
 ワインは工程がシンプルな分、原料のぶどうの出来が品質に直接影響します。一方の日本酒は、確かに酒造りの技術が重要ですね。そのため、私が醸造試験所にいた頃、極端な話、米は山田錦に拘らずとも日本晴でも充分いいお酒ができると考えていました。科学的な成分としては、山田錦も日本晴も差がほとんどないのです。ただ何十年も経て見ると、山田錦で作った酒の方がおいしい。科学的な数値の差が微小だからといって、結果に差がでないというわけではないことが分かりました。
猪瀬
 ゲノム解析を用いた研究では、日本の酒造りで使われている?菌が、日本独自の黴だと分かったとか。
北本
 はい。ゲノム解析の遺伝子情報で、中国で昔から紹興酒等に使っている?と、日本の?は、黴の種類が全く違うことが分かっています。
古くは「口噛みの酒」といって、神事では若い女性に米を噛ませるなどして、唾液中のアミラーゼでデンプンを糖化させ、酒を造っていたのです。しかしそれでは効率が悪く、大量生産できません。そのうちに糖化する材料として黴を発見した。それが?菌ですが、十年程前までは、他の様々な文化と共に中国大陸からやってきたと考えられていました。
漢字の伝来で、固有語の大和言葉は訓読みとして残り、例えば「茶」が「チャ」と音読みしか持たないのは、漢字伝来以前に、お茶が日本になかったため、と言われています。「?」という漢字は、中国では「キョク」とか「キク」と読みますが、日本では「こうじ」と訓読みします。これはつまり、漢字が入ってきたときには既に、日本に「こうじ」という黴があったことを示していると考えられます。
仮説ですが、中国文化が伝わってきたとき、既に日本は優れた?文化を持っていたから、中国の?菌を取り入れる必要がなかったのではないか。日本の?は野生のものがうまく飼いならされ、鎌倉時代くらいから、専門の種?屋さえありました。比べて中国の?造りはアバウトで、家畜化できない。当時から酒には担税の義務がありましたが、種?が悪ければ酒が腐ります。当然いい種?屋があった地域は栄えました。
猪瀬
 種?屋とは、つまり日本独自のバイオビジネスが成立していたということですね。
麴文化と出汁文化、和食文化の展望

猪瀬
 甘味、酸味、塩味、苦味という四つの味に加えて、五つ目の味、旨味が発見されたのが二〇世紀。この旨味を発見したのも、日本人ですね。
北本
 洋食は、ミルクやバターのような油脂分を含みますが、和食はそれを使わない。淡泊な中に味わいをもたらす役割を、醤油や味醂、味噌、日本酒などの?文化と鰹や昆布などの出汁文化が担ってきたということですね。
猪瀬
 そうした和食文化を前提にしつつ、日本酒はこの先、普遍的な市場に到達することができるのか。世界のレストランで、ワインと並んで、日本酒をチョイスできるコースが、基本設定になるのかどうか。
桜井
 可能性は大いにあります。ただ現在は、フランスワインの海外輸出八〇〇〇億円に比べ、日本酒は一四〇億円程です。異文化との初めての遭遇ですから、最初はうまくいかなくて当たり前です。直接失敗を繰り返しながら、世界で勝ち抜ける日本酒として磨き上げていく他ない。ここが、日本酒業界が再生できるかどうかの分かれ目だと思います。
猪瀬
 僕は、竹田さんを中心に若い人たちが、酒造メーカーと組んで自分たちで酒造りを始めたことや、「獺祭」というブランドが急速に普及したことなど、割と日本酒に明るい展望を持っています。二〇二〇年の東京オリンピックへ向けて、日本酒はさらに海外で評価され、無形文化遺産になった和食も、ますます見直されるのではないか。日本人は自国の文化にもっと自信を持つべきです。
北本
 外国人に対して、和食の健康力のエビデンスがまだ不足していますね。?の研究を進めることで、和食の健康性がもっと具体的になり、日本酒や和食が世界的に広まることを願っています。
桜井
 「獺祭」は、「おいしいから食べて」とおばちゃんが裏の畑から大根を引っこ抜いてくれるような、そんなシンプルな考え方で海外に出て行こうと思っています。マーケティングより、とにかくおいしいから飲んで、と。そう言えるものを造って行こうと。
竹田
 ワインには「当たり年」がありますが、逆に言うと、ぶどうの出来が悪い年は、作り手が諦めてしまうわけですね。日本酒には、「当たり年」も「外れ年」もない。職人さんは、出来の悪い米だったら、努力すると言うんです。いい米とはコントロールしやすい米。でも出来の悪い米だからいい酒ができないかといったら、そんなことはない。ハラハラするけれど、手をかけていいお酒になったときの感動はひとしおだと。日本人の物作りの真髄は、そういうところにあると思っています。
猪瀬
 大阪の醤油が薄口なのは、礼文や利尻の昆布が北前船で入ってきていたため。一方の江戸は鰹出汁なので、濃口の醤油になる。日本各地に味の違いがあり、和食も一色ではないですよね。一つの伝統の中で多様な文化が花開いている。和の魅力を日本人が再発見して、自信をもって情報を発信し、海外の方にも、もっと日本酒と和食を味わっていただきたいと思っています。 
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