蛇を踏む 書評|川上 弘美(文藝春秋)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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書評アイドル 渡辺小春が読む芥川賞
更新日:2019年2月12日

川上さんの世界観からはもう抜け出せない

蛇を踏む
著 者:川上 弘美
出版社:文藝春秋
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蛇を踏む(川上 弘美)文藝春秋
蛇を踏む
川上 弘美
文藝春秋
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今回は、第115回を受賞した川上弘美さんの「蛇を踏む」(初出・『文藝界』平成8年3月号)を選んだ。選んだきっかけは、何かで読んだ川上さんの作品が頭から離れなくて、書店で見つけたときについ「あっ」と思い、手に取った。

読み終えてからも、私の頭からずっと離れなかったのは川上さんの不思議な世界観だ。あらすじを説明すると、ある日、独り暮らしの女性が蛇を踏んでしまう。するとその蛇が主人公のお母さんに化け、「どうして蛇の世界に来ないの」と誘惑をしながら家に住み着いてしまうという話なのだが・・・、その世界観はうまく言葉で表せられない。

川上弘美さんの作品は、とにかく面白くて、不気味で、一度ハマると抜け出せないのだ。

題名である「蛇を踏む」からも、なんだか不気味なイメージが想像できる。元々、蛇というのは、生物の中でも怖いイメージがあり、さらにそれを踏むとは縁起が悪い。蛇について少し気になったので調べてみると、蛇は大昔から信仰の対象だったようだ。例えば日本では、白蛇は幸福の象徴であり、お財布に蛇の抜け殻を入れると金運が上がるだとか。夜に口笛を吹くと蛇が襲ってくるとおばあちゃんから小さい頃に聞いたことがある。

イスラム教、ユダヤ教、キリスト教では、悪魔の化身とされているようだし、聖書のなかにもいろいろ登場する不思議な生物だ。

作中でもとても生々しい蛇のくねくねした気持ち悪い描写には、夢に出てきそうな恐ろしさを感じた。

お母さんに化けた蛇が彼女の前にやってきても追い出せなかったのは、独り暮らしの孤独感故なのだろうかと思う。

私は、一人で留守番をしているときはとても自由な時間だから好きだ。化粧をしたり、音楽を大音量で聞いて思いっきり踊ったり、家族の机をあさってみたり、静かだから勉強にも集中することができる。寂しいという気持ちよりも泥棒や変な人がやってくる怖さの方が大きい。むしろ今は、独り暮らしにとても憧れを持っている。

矛盾しているかもしれないけれど、やっぱり独りでいるのは悲しいとも思う。以前は本を読む、絵を描く、音楽を聴く、勉強する、独りで趣味に没頭することができるからそんな感情、私の中にはないと思っていた。けれども、友達や家族とけんかをして口を利かないで1日過ごすのはつらかった。心が通じ合える人がいない日々を過ごすことなんて私はできないとその時に感じたのだ。そんな中で化け物でもなんでも、目の前に現れたら・・・。一緒に過ごしてしまうかもしれない。 

川上さんの世界観からはもう抜け出せない。他にはない奇妙な感じがとても気に入ったので、次は「溺レる」「神様」と、ほかの作品も読んでみようと思う。好きな作家さんがまた増えた。
渡辺小春
蛇、踏んでみました。
この記事の中でご紹介した本
蛇を踏む/文藝春秋
蛇を踏む
著 者:川上 弘美
出版社:文藝春秋
以下のオンライン書店でご購入できます
「蛇を踏む」出版社のホームページはこちら
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