対談=小林康夫×中島隆博  知を生きる、水は流れる 『日本を解き放つ』(東京大学出版会)刊行記念対談 載録|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年2月15日 / 新聞掲載日:2019年2月15日(第3277号)

対談=小林康夫×中島隆博
知を生きる、水は流れる
『日本を解き放つ』(東京大学出版会)刊行記念対談 載録

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東京大学名誉教授・青山学院大学特任教授の小林康夫氏と東京大学東洋文化研究所教授の中島隆博氏が、『日本を解き放つ』(東京大学出版会)の刊行を記念して、ジュンク堂池袋本店で対談を行った。
本書は、日本文化の元となる日本の〈ことば〉〈からだ〉〈こころ〉について、空海、世阿弥、丸山眞男、漱石、鷗外、武満徹らのテキストを読み、応答し、語り合った重層的な一冊である。
そして迎えたイベントでは、「日本の〈美〉を解き放つ」と題し、本書を振り返るとともに、語りきれなかった日本の〈美〉を取り上げた。その刺激的な対談を載録させていただいた。
(編集部)
第1回
本を読み(呼びかけを聞き)、書く(応答する)

様式化
小林 康夫氏
小林 
 この『日本を解き放つ』は、珍しいタイプの本かもしれません。対談がポッとあるというのではなく、僕と中島さんそれぞれがエッセイを書き、書かれたものを読んで、対談しています。書く、読む、話す、質問する、ときに苛める(笑)、応答する、討議する……そういったいろいろな行為が詰まって一冊になっている。一般的な本の成り立ちを「解き放つ」。強いて言えば、そういう試みでもありました。

これが大勢で作るのだと、また密度が違ってくるんですよね。中島さんの編集で、『世界の語り方』(東京大学出版会)という、座談会を四本並べた二巻本が刊行されましたが、参加者の間をテーマが巡るうちに、問題の中心軸が、少しずつずれていくんです。でも今回のように、二人きりの対話では、相手が話題をずらそうとしても、ずらさせないぞと引き戻す(笑)。何度も同じ場所に戻り、思考を重ねることで、対話がどんどん煮詰まり、一人では行けなかったところまで到達できる。そういう面白さを実験した成果が、この本だと思っています。
中島  
 今回、哲学・思想のマクロ・パースペクティブの本を作るという構想をいただいて、一も二もなく飛びつきました。

小林さんはこれまで、フランス現代哲学を中心に研究してこられました。また僕は、中国哲学を中心にしてきています。でもそのスタンスは、フランスの哲学は素晴らしいものなので、研究してそれを日本に紹介します、というものではない。僕も同じです。バイではなく、第三の視点がなければ、グローバル化の時代の哲学には通用しないというのが、我々の共通認識です。そのときに第三の視点として、「日本」が現れてきたのです。三点測量で日本を改めて見直したとき、そこにはたぶん、これまでの日本研究の前提となってきたものとは、違うものが起こってくるだろう。

ということで、タイトルは『日本を解き放つ』となりました。
小林 
 誰がつけたの?
中島  
 僕です(笑)。
小林 
 こんなこと言っちゃって、中島さん責任とってくださいね(笑)。
中島  
 日本について考えると言っても、日本文化や哲学・思想についての研究論文を積み重ねるのではなく、日本をどう読むのか、その読み方から変えてみよう、という試みだったわけですよね。

読むとは、実に能動的な行為です。どの本を手に取るか、どんなふうに読んでいくかは、受け身の行為では決してない。そこには私たちが共有している、想像力の次元があります。それを「社会的想像力」と呼んでもいいと思いますが、そこに読者は参加していく。そしてその「社会的想像力」を共有し、変形したり、批判してもいいわけです。そういう場所がいま大事ではないか。

能動的な読書の経験がなければ、書くことはできないでしょう。我々は今回エッセイを書きましたが、それはつまり、自分たちが読んだものに対する、ある種の応答でした。「読む」とは「呼びかけを聞く」ということでもあります。どんな呼びかけをキャッチして、それにどう応答するのか。それは読者それぞれの責任に依っています。今回はそれをとことん見せ合った、という気がしています。
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この記事の中でご紹介した本
日本を解き放つ/http://www.utp.or.jp/book/b383233.html
日本を解き放つ
著 者:小林 康夫
出版社:http://www.utp.or.jp/book/b383233.html
以下のオンライン書店でご購入できます
「日本を解き放つ」出版社のホームページはこちら
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