ガメラの精神史 昭和から平成へ 書評|小野 俊太郎(小鳥遊書房 )|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年2月16日 / 新聞掲載日:2019年2月15日(第3277号)

〈ガメラ〉シリーズ12作を丹念に追う
時代背景や観客の姿まで検討する昭和・平成の「精神史」

ガメラの精神史 昭和から平成へ
著 者:小野 俊太郎
出版社:小鳥遊書房
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 口から火を吹く巨大な空飛ぶカメの怪獣、ガメラを見たことはあるだろうか。

一九六五年の『大怪獣ガメラ』から、二〇〇六年の『小さき勇者たち~ガメラ~』まで合計十二作が〈ガメラ〉映画だ。物語が連続している作品もあれば、まったく新しい設定のものもある。共通しているのはガメラが登場しているという点だ。本書は特撮映画〈ガメラ〉シリーズ十二作を発表された順で丹念に追うことで、作品が伝えるメッセージだけではなく、その時代背景や観客の姿まで検討する「精神史」だ。

著者である小野俊太郎は、特撮映画の本を多数出版している。『モスラの精神史』(講談社現代新書)、『大魔神の精神史』(角川oneテーマ21新書)、『ゴジラの精神史』(彩流社)の〈精神史〉シリーズに、本書『ガメラの精神史』も加わる。

怪獣映画というと、庵野秀明『シン・ゴジラ』(二〇一六年)のヒットを思い出す。ゴジラは強い。作品数は三十作を超え、ハリウッド版もある。関連書籍も膨大で、アマゾンのウェブサイトで「本」「ゴジラ」で検索すると優に千件を超えるヒットがある。他方で、「本」「ガメラ」で検索しても二百件弱。

では、ガメラはゴジラに比べて取るに足らない存在なのだろうか。「ゴジラと並ぶもう一つの「G作品」であるガメラ」と小野は言うが、言説の量だけ見ると「並ぶ」とは言えない。しかし本書を読むと単純な比較はあまり意味がないことに気がつく。特撮/怪獣という映画のサブジャンルを二つのGは競い合って豊かにしてきたからだ。

そもそもガメラとはどんな怪獣か。

製作は大映。「稀代の興行師でワンマン社長だった永田雅一が、ライバルの東宝のように特撮や怪獣映画が当たるという読みのなか、号令をかけて湯浅憲明監督に生み出させたのが、『大怪獣ガメラ』」。実は大映は六四年に『大群獣ネズラ』という映画を製作し、失敗した。ネズラの挽回作として構想されたのがガメラだった。「東宝ではない」「ゴジラではない」「ネズラでもない」という自分以外のものとの対比から、ガメラは誕生した。

第一作はヒットし続編が作られる。東映や、そしてテレビも特撮/怪獣作品を次々に作り、一九六〇年代後半に怪獣ブーム到来。だが大映は七一年に倒産。徳間書店の資本のもとで再建され、一九九五年には金子修介監督による平成〈ガメラ〉シリーズの一作目『ガメラ 大怪獣空中決戦』が、以降一九九六年『ガメラ2 レギオン襲来』、一九九九年『ガメラ3 邪神覚醒』と続く。人気作となったが『4』は作られることなく、大映とガメラは二〇〇二年には徳間から角川書店へと移る。「ガメラ映画は、『ガメラ1』の冒頭の漂流岩礁のガメラのように、再び漂流を始めることになる」と小野は言う。ガメラは特撮の海を漂流する怪獣でもある。

このようにゴジラに比べて「込み入った」背景をもつ〈ガメラ〉シリーズを、小野は丁寧に解説していく。軸となるのは大映・湯浅憲明監督の昭和ガメラと、金子修介監督の平成ガメラ三部作だ。前者は「子供の味方ガメラ」であり、戦後を風景にもつ。後者はテロ、災害、原発、コンピューター・ネットワークといった要素が風景に埋め込まれている。ガメラは「子供の味方」であるものの「子供の見方」は捨て去り、劇場では子供が恐怖のあまり泣き出すシーンもあったようだ。平成ガメラの特技監督・樋口真嗣は『シン・ゴジラ』の監督であり、平成ガメラは、平成が終わらんとしている今でも、その遺産が継承されている。小野は湯浅ガメラと金子ガメラを切断しない。「どちらも一カットで一動作しか演技ができない」ものとして、「金子ガメラ映画を湯浅ガメラ映画と結びつける」「怪獣=アイドル」論を導入する。

本書はガメラファンのみならず、映画/特撮/怪獣ファンや、怪獣映画を『シン・ゴジラ』しか知らない人でも楽しむことができる。昭和・平成の「精神史」が描かれているからだ。
この記事の中でご紹介した本
ガメラの精神史 昭和から平成へ /小鳥遊書房
ガメラの精神史 昭和から平成へ
著 者:小野 俊太郎
出版社:小鳥遊書房
以下のオンライン書店でご購入できます
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