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American Picture Book Review
更新日:2019年2月26日 / 新聞掲載日:2019年2月22日(第3278号)

『私みたいな肌の色』

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『Skin Like Mine』LaTashia M. Perry著/Bea Jackson画
(G Publishing)
テニスの大坂なおみ選手をアニメ化したCMが炎上した。大坂選手の肌が白く、まるで白人のように描かれていたからだ。「ありのままに描けばいいのに」「あまりにも本人と似ていない」と厳しく批判され、CMは取り下げられたが、「アニメなのに」「大坂選手は日本人でもあるのに」と、批判に納得できない声も多く聞かれた。この騒ぎはアメリカにおける黒人の肌の色にまつわる歴史と現状が日本では十分に理解されていないことから起こったと言える。

北米にアフリカからの黒人が初めて連れてこられたのは今からちょうど400年前の1619年。以後、約250年間の長きにわたって黒人奴隷制度が敷かれ、奴隷制廃止からはまだ150年ほどしか経っていない。奴隷解放後も差別は根強く残り、耐えきれなくなった黒人たちは公民権運動を起こした。リーダーや活動家は暗殺、リンチ、嫌がらせを乗り越え、1964年に人種差別を禁じる公民権法を勝ち得た。その後も差別がなくなることはなかったが、事態は徐々に改善され、10年前にはとうとう史上初の黒人大統領が誕生した。日本を含む諸外国では、これでアメリカの黒人差別は一旦キリがついたように受け取られたのかもしれない。現状はそうではなく、例えば黒人は今も「肌の色」の優劣に苦しめられている。「白人=美しい、黒人=醜い」「黒人の中では色が薄いほどよい」という価値観だ。この肌の色のヒエラルキーは日本人には想像もつかないほど徹底している。だからこそ黒人たちは1960年代に「ブラック・イズ・ビューティフル」というスローガンを生み出し、自尊心を育む努力を重ねてきた。ただし黒は概念上の色であり、実際には驚くほど多彩な茶色のバラエティがある。

『私みたいな肌の色』は、黒人の子供たちがそれぞれの肌の色の違いを認識し、「いろんな色があるほうが楽しい」「みんな同じだとつまんない」「私は自分の色が大好き」と謳う絵本だ。黒人社会には肌の色を食べものに例える風習がある。本作も「私の肌はピーナツバター」「妹はヘーゼルナッツ・スプレッド」「僕はブラウニー」「おじいちゃんはキャラメルソース」といった具合で、どれも誰からも愛されるスウィーツだ。オレオクッキーも登場する。白いクリームを挟んだ濃茶のココアクッキーは、実は「白人のように振る舞う黒人」を揶揄する際に使われる。だが本作ではあえてポジティブに転用し、親友同士の黒人と白人の少年を指している。肌の色はかくも繊細にして深刻な問題なのだ。

毎年2月は「黒人史月間」として、全米で黒人史や文化にまつわる多彩なイベントが催される。関連書籍や絵本もメディアによって多数紹介される。そこには肌の色に関する絵本も必ず含まれるのである。(どうもと・かおる=NY在住ライター)
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