パガニョーをたずねて 〝炉〟 小原 佐和子|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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パガニョーをたずねて
更新日:2019年2月26日 / 新聞掲載日:2019年2月22日(第3278号)

パガニョーをたずねて 〝炉〟
小原 佐和子

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©Sawako OBARA

ヒンラートナイ村にはまだ公共の電気が通っていない。夕食をすませた頃には部屋の中は真っ暗になるし、標高800メートルの山の村は冷えるので、日本の囲炉裏のような炉の周囲には自然と人が集まってくる。

炉ではお姉さんが様々な種類の豆を酒の肴に煎ってくれている。お母さんは火明りを頼りに糸を紡ぐ。家族や近所の村人も加わってあれこれとおしゃべりが続くなか「亡くなった人、つまり御先祖様はどこにいると思いますか?」たずねてみると、目の前の炉を指差した。

この村で訪ねたいくつかの家には必ず炉があった。大きな竹組みで、煮炊きの他に儀礼の場としての役割、上部に数段ある火棚は調味料の保存、肉や魚の燻製や自家採種の防虫と様々に活用する。そして、さらには御祖先様もいるのだ。

炉を囲んでの語らいは眠くなるまで続く。子どもからお年寄りまで毎日こうして同じ時を過ごす。この家が出来てからの歳月をこの炉はずっと見守っていたと思うと、炉が御先祖様に見えてきたのだった。(おばら・さわこ=写真家)
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