ロッセリーニの現代性 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く95|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年2月26日 / 新聞掲載日:2019年2月22日(第3278号)

ロッセリーニの現代性 ジャン・ドゥーシェ氏に聞く95

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HK 
 ロッセリーニがシチリアのドキュメンタリー『一つの島の観念』を撮ったのは67年です。アメリカのテレビ局のために、イタリア放送協会の協力のもと撮影しました。『戦火のかなた』のようなネオレアリズモからは遠ざかり、『インディア』のようなドキュメンタリーになっています。
JD 
 美しい作品でしたか。
HK 
 非常に美しい作品でした。
JD 
 驚くようなことではありません。どの作品であっても、ロッセリーニの映画は素晴らしいものです。加えて、私は当時、『ルイ14世の権力掌握』から始まる見事な作品群を、何度も観ていました。『ルイ14世』は、ロッセリーニの最も美しい作品の一本です。
HK 
 パスカル、デカルト、ソクラテス、メディチ、デ・ガスペリも僕の頭の中には、50年代の作品よりも強く焼きついています。
JD 
 それらの作品も見事なものです。いずれの作品をとっても、私にとってのロッセリーニは最も偉大な映画作家の一人です。
HK 
 そのロッセリーニですが、僕の考えでは、二つの重要な柱があったのだと思います。一方が、『神の道化師、フランチェスコ』です。これが、彼のフィルモグラフィーの中でも最も決定的な作品だったのだと理解しています。もう一つは、『アモーレ』です。
JD 
 同じ意見です。他にも重要な作品はありますが、最も重要な転換点となったのは、その二つです。
HK 
 『アモーレ』は、50年代のイングリッド・バーグマンとの一連の作品から『黒い魂』に至るまでの、ロッセリーニの私生活と関わりのある作品を作る上での重要な契機だったはずです。しかし、その後を含めて考えると、『神の道化師、フランチェスコ』の重要さが非常に強く出てきます。
JD 
 つまり、ロッセリーニはドキュメンタリーの路線へと戻ったのです。しかし、そのドキュメンタリーとは、他の多くの人が考えているようなドキュメンタリーではありません。ロッセリーニによるドキュメンタリーとは、撮影することの真実に他ならないのです。出来事の事実ということです。物語を尊重しながらも、「生」を見せるというドキュメンタリーの方法です。真理の表面だけを見せることによって、真理を見せるということができないわけではないということを、ロッセリーニは理解していたのです。
HK 
 僕は、そのようにして『インディア』を何度も観ています。インドについてのドキュメンタリーでありながら、一つの物語でもあります。『一つの島の観念』は、それをさらに推し進めたものだったとおもいます。映画の作りとしては、クラシック映画のような物語の起伏は身を潜め、シチリアという島の美しさと歴史を淡々と物語る作品でした。『フランチェスコ』のあり得たかもしれない過去と『アモーレ』のありのままの現在が、共存した作品だったと思います。
JD 
 ロッセリーニよる「ドキュメンタリー作品」は、映画史の中でも非常に重要なものばかりです。
HK 
 作品終わりに啓示のようなものが現れると、ロッセリーニの映画については比喩的によく言われていますが、60年代に入るとそのようなことはなくなっていきます。
JD 
 確かに作品の終わりに、何かが現れるというのは事実です。しかし、ロッセリーニの映画で本当に美しいのは、現実が生まれるということです。その現実の中に、超現実が存在しているのです。つまり、現実の中の崇高さこそが問題となるのです。しかしながら、その崇高さは、すぐに見えるわけではないのです。作品が終わるにつれて、私たちは何かを見いだすことができるのです。
HK 
 非常にいい表現だと思います。多くの人が語るのは、観客の持つロッセリーニの映画に対する信仰のような関係、そこから啓示という言葉が生まています。しかし、ドゥーシェさんはロッセリーニの美しさについて語っています。
JD 
 それは、一種の信仰でもあります。非常に詩的な考え方です。
〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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