自殺会議 書評|末井 昭(朝日出版社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年2月23日 / 新聞掲載日:2019年2月22日(第3278号)

自殺会議 書評
自殺するくらい必死に生きている人が好き
すべての生きる人へのエール

自殺会議
著 者:末井 昭
出版社:朝日出版社
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自殺会議(末井 昭)朝日出版社
自殺会議
末井 昭
朝日出版社
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「自殺する人が好き」

著者の末井昭は、本書の前書きでそう断言する。「自殺はダメ」でもなければ、「自殺は本人の自由だ」でもない。自殺をする人に魅了されているというのだ。

末井は、決して自殺の賛成者ではない。それどころか、幼い頃に不倫の末にダイナマイト自殺によって母親を失った遺族であり、随所で人に自殺してほしくないと書いている。

そんな彼が自殺をする人を好きだというのは、なぜなのだろう――。

本書は、自殺にかかわる十名の人たちに、末井が当事者として会いに行き、自殺についての考え方を聞いたり、意見を交わしたりするノンフィクションだ。

登場する十名の中には、息子を自殺させてしまったと考える映画監督の原一男、自殺の少ない町の研究をする岡檀、自殺の名所である東尋坊で救済活動をしている茂幸雄、躁うつ病でありながら自殺希望者からの電話相談を受けている坂口恭平などがいる。
十名はそれぞれまったく異なる体験や意見を持っている。ある人は自殺を本人の選択の一つだと考え、ある人は人生をかけて見知らぬ人の自殺を食い止めようとする、またある人は家族が自殺した理由について悩みつづけている。みな何が正しいのか間違っているのかわからない中で、自分なりの答えを見つけ出しているかのようだ。
末井の真骨頂は彼らの言葉に賛同するわけでも否定するわけでもなく、軽妙な語り口ですべてを受け入れていくことだろう。
こんなに真剣に自殺防止のために向き合っている人がいるんだ、君は遺族としての体験をジョークにして笑い飛ばしてもいいんだ、大切な人を失った悲しみを表現することによって社会で活躍したっていいんだ……。
こうした末井の考え方は、人生に苦しんでいる人たち一人ひとりの生き方を認め、目線を変えれば人生はこんなに生きやすくなるのだとつたえているようだ。きっと読者は自分を認めてもらい、新しい道を示してもらったような気持ちになるだろう。

なぜ、末井の言葉はこんなにも温かいのだろうか。

もしかしたら末井自身が自殺する人を好きになることで、母親の自殺を受け入れたからかもしれない。

自殺は、この世に遺された者の心に非常に重たい体験としてのしかかる。多くの人々はそれを心の傷として背負い、何十年もの間、折に触れて思い出しては悲嘆にくれたり、後悔したりする。それでも、人は何かしらの形で過去を受け入れて、その後の人生を生きていかなければならない。

末井も多分に漏れず、若い頃はその経験を表す方法がわからなかったそうだ。しかし、社会に出て母親の自殺を語れるようになってから、表現の一つにしてみたり、母親と似たような女性と恋に落ちてみたり、母親と同様に不倫をしてみたりする。
末井はそういうことをくり返すことで、自殺した母親を真の意味で受け入れていったのではないか。だからこそ、自殺をする人を好きだと発言しながら、生きてほしいと言い切ることができるのだ。
「僕は自殺するくらい必死に生きている人が好きだ。だからこそ、君に生きていてほしい」
そのようなメッセージが、末井の言葉には込められている。それは死んでいった母親へのメッセージであり、すべての生きる人へのエールなのだろう。
生きることに苦しさを抱えている人に、ぜひ読んでもらいたい一冊だ。
この記事の中でご紹介した本
自殺会議/朝日出版社
自殺会議
著 者:末井 昭
出版社:朝日出版社
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