柄谷行人氏ロングインタビュー  普遍的な世界史の構造を解明するために  『世界史の実験』(岩波新書)刊行を機に|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月1日 / 新聞掲載日:2019年3月1日(第3279号)

柄谷行人氏ロングインタビュー
普遍的な世界史の構造を解明するために
『世界史の実験』(岩波新書)刊行を機に

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第5回
戦争と地震、『先祖の話』

――話題を変えます。柳田国男の著作を、学生の頃に読まれたといわれました。それが「柳田国男試論」に繋がっていく。その後、『遊動論』を執筆される際、柳田全集を全巻再読され、アンソロジー『「小さきもの」の思想』を編まれることになります。三〇代の時に読んだ柳田と、歳月を経た後に読まれた柳田では、印象の違いは?
柄谷 
 それほどありませんね。ただ、今度の本では、以前には書くのを避けていたことを幾つか書きました。たとえば「祖霊」についてです。私が大学生の頃、柳田を読んで一番気になったのは、霊のことでした。私の叔父は第二次大戦の際、学徒動員で、ルソン島で戦死したんですよ。私は覚えていないのですが、寝室に彼の写真が飾ってあったので、それを見ながら育ったのです。柳田の『先祖の話』を読んで考えたのは、叔父の霊はどこに行ったのか、ということです。変な話ですが。

柳田によれば、霊は死後裏山に行って、子孫を見守る。しかし、外地で死ねば行くところがない。海外で戦死した者の霊が、靖国神社になんて行くはずがない。あれは国家神道にもとづく空虚な場所であり、死んだ若者の霊が行くわけがない。では、どうするのか。柳田は『先祖の話』で、そのことを真剣に考えていました。それで、死んだ若者たちの養子になり、彼らを先祖にしてあげようということを提唱したのです。

私がつぎに『先祖の話』を読み返したのは、父親が六甲山の麓の病院で死んだ時です。これが「裏山」かと思った。その次は、阪神淡路大震災(一九九五年)の時です。そして、その次が、東北大震災(二〇一一年)のあと。こうやって見ると、私の場合、戦争、地震、柳田の『先祖の話』の三つがつながっていることがわかります。だから、先ほどいったように、地震のあと柳田のことを考えたのは、偶然ではなく、一種の反復強迫なのではないかという気がします。
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