高木仁三郎 反原子力文選 核化学者の市民科学者への道 書評|高木 仁三郎(未来社)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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読書人紙面掲載 書評
更新日:2019年3月2日 / 新聞掲載日:2019年3月1日(第3279号)

高木仁三郎 反原子力文選 核化学者の市民科学者への道 書評
高木仁三郎の生き様から学ぶ
現代科学技術に対する基本姿勢から自然観、世代間倫理まで

高木仁三郎 反原子力文選 核化学者の市民科学者への道
著 者:高木 仁三郎
編集者:佐々木 力
出版社:未来社
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できれば、「文庫X」のようなかたちで売って欲しい(売りたい)本である。

『高木仁三郎 反原子力文選』と名付けられたこの本は、「高木仁三郎」「反原子力」というキーワードから、特定の個人・限定されたテーマの論文集という印象を与えてしまうかもしれない。むしろ高木仁三郎を知らない人に、あるいは福島原発事故を経験しても、まだ、原発問題の深刻さや根深さを実感していないような人にこそ、何気なく手にとり、読み始めて欲しい。

冒頭、編者である佐々木力氏の「解説的序論 日本戦後学問思想史のなかの高木仁三郎」は、科学哲学、社会思想史の論考としては、大変、勉強になるが、一般の読者には、やや敷居が高いかもしれない。本書に収められた高木仁三郎の論文は、一般向けに書かれた短いものが主体であり身構えずに読むためには、第一部の「被害者であり、加害者であること」あたりからがおすすめである。「専門的批判の組織化」や「現代科学の超克」に関わる節も多くの人に読んで欲しいが順番はあとでもよい。

――アメリカの核開発に携わった人たちの記録を、最近いくつかまとめて読み直してみて、彼らに決定的に欠けているのは、加害者としての意識であると痛感した。それがまた、彼らをして、自らの開発した核が結局、自分自身をも襲うかもしれないということ、すなわち被害者としての自らを想像することを妨げているのである。やはり、核を生み出すものは、「狂気」ではなく、無自覚である。そのことに気付いたとき、「核のない世界」への歩み出しが始まるだろう。――

これが「被害者であり、加害者であること」の締めくくりの一節だ。高木仁三郎は、この文章を1982年に書いている。文脈としては、核兵器開発に関わるものだが、商業利用としての原発のもたらす過酷事故にも、当然、通じるものがある。私たちは、この4年後にチェルノブイリ原発事故を経験した。それでもまだ、「被害者としての自らを想像すること」が十分に出来ないまま、2011年3月の東日本大震災・福島原発事故を迎えてしまった。 高木仁三郎は、ただ原発のみを批判したのではない。この「文選」に収録された論文を通じて、高木仁三郎の現代科学技術に対する基本姿勢から、自然観、将来世代に対する世代間倫理をふくむ思想の広さ、深さに触れることができる。

――問題は技術の問題ではない。私たちが望んでいる社会とはどのようなものであり、そのなかで何のためにどんなエネルギーが必要となるのかを根本から考え直し、それに必要な社会的努力をしていくことである/かんじんなことは、エネルギーこそが価値や文化の源泉だとする価値観の転換である。――(「くらしからみた巨大科学技術」)

原発依存から再生可能エネルギーへ転換すれば良い、というような姿勢ではないことは、「ソフトさとは何か――ソフト・パスへの一視点」でも語られている。このような社会のあり方についての主張も、ただ論じるだけではなく、自らの生活を問い直すとともに、望ましい社会に向けて、「必要な社会的努力をしていく」ところが高木仁三郎である。

高木仁三郎は、死の直前に残したメッセージ「友へ」の中で、自らの人生を振り返り、「体制内のごく標準的な一科学者として一生を終わっても何の不思議もない人間を、多くの方たちが温かい手をさしのべて鍛え直してくれました。それによって、とにかくも「反原発の市民科学者」としての一生を貫徹することが出来ました」と述べた。「文選」巻末の年表には、論文発表、出版等の経過とともに、原子力資料情報室の代表として、原発をめぐる裁判の証人として、さらに脱原発法制定運動の推進役として、高木仁三郎がいかに精力的に行動したかが記されており、この年表自体、読み応えがある。附論の「高木仁三郎という生き方」、「高木仁三郎へのいやがらせ」とあわせて、いま、高木仁三郎の生き様から学ぶための貴重なテキストである。
この記事の中でご紹介した本
高木仁三郎 反原子力文選 核化学者の市民科学者への道/未来社
高木仁三郎 反原子力文選 核化学者の市民科学者への道
著 者:高木 仁三郎
編集者:佐々木 力
出版社:未来社
以下のオンライン書店でご購入できます
「高木仁三郎 反原子力文選 核化学者の市民科学者への道」出版社のホームページはこちら
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