第160回 芥川賞・直木賞 贈呈式開催|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月1日 / 新聞掲載日:2019年3月1日(第3279号)

第160回 芥川賞・直木賞 贈呈式開催

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左から、真藤順丈氏、町屋良平氏、上田岳弘氏
2月21日、東京都内で第160回芥川賞・直木賞の贈呈式が行われ、芥川賞の上田岳弘氏(「ニムロッド」『群像』12月号)と町屋良平氏(「1R1分34秒」『新潮』11月号)、直木賞の真藤順丈氏の『宝島』(講談社)に賞が贈呈された。

選考委員代表の挨拶で芥川賞選考委員の吉田修一氏は、「上田さんの「ニムロッド」では作家としての脚力みたいなものに驚かされた。読んでいくとバベルの塔のてっぺんまで読者を連れていく。そうしたダイナミックな舞台装置も作家としての脚力の一つだが、そこに神話や経済といった構えの大きなもの、「駄目な飛行機」のようにコミカルで愛着のあるようなものを並べることで相乗効果という意味で、それぞれのエピソードが跳躍するような印象を受けた。髙樹のぶ子さんはこの作品は人間の哀しみを描きながらその哀しみが人類の哀しみにまで昇華しているのではないかと仰っていたが、人類を描ける作家はそうそういない。

「1R1分34秒」の町屋さんの書かれる言葉にはちょっとたどたどしいところがある。ただ、そうした言葉が並ぶとその文章はすごく瑞々しくなるという不思議な文章を書かれる方で、作品中その言葉の拙さがそのまま情感を呼び、一行一行新鮮な気持ちで読める作品だと思った。この作品は拳闘といわれる荒々しい世界を描いているが暴力性をあまり感じない。それは作為的に書けるものではないと思っていて、作為を超えた先にある何か、そこが町屋さんの作家としての才能で凄み。町屋さんにしか見えない景色を一作一作丁寧に書き続けてくれることを期待している」と語った。

直木賞選考委員の桐野夏生氏は、「『オール讀物』に掲載された真藤さんの自伝エッセイを拝読して大変面白かった。座右の銘が〝めんぼくない〟だと書かれていたが、パワフルで饒舌な真藤作品について私のようなものが話すことはそれこそ〝めんぼくない〟気がする(笑)。沖縄の戦後史には決して忘れてはならない歴史がある。しかしながら『宝島』にはその悲劇すら乗り越えるポジティヴさがあって、この作品の成功の一つはユーモラスな語り口にあると言って過言ではない。軽妙ながらもツボを押さえて実にパワフルでこの饒舌なトーンは誰にも真似ることが出来ない。この語りは地霊とかそういう格好いい言葉でなく、空や海や風や街、そこに住まう人々といった存在全体で一つの人格のように感じられる。鎌倉時代の明恵上人という人が自分の住んでいた島に「恋しい」という手紙を書いてそれを島へ行く人に託したという話を思い出す。真藤さんの沖縄という小宇宙への愛を激しく感じた」と述べた。

受賞者の挨拶で上田氏は、「今回このような素晴らしい賞をいただいたが、文学賞に限らずこうした仕組みはある意味システムでもある。そういうシステムに縛られてしまう新人作家もいるかもしれないが、そういった従わせるものにはぜひとも反抗していかなくてはならない。反抗するのが作家の仕事だと僕は思っている。作中で〈誰もが心の奥底に抱えている根源的な衝動〉〈そんな衝動がきっと空っぽな世界を支えている〉と書いたが、僕もその衝動がなくならない限りは書いていきたい」と語った。

町屋氏は、「原稿の直しの最終段階で、〈なにかをただ続けるということがこんなにも傲慢なことだとはおもわなかった。〉という一文を付け加えた。自分が小説を書き続けていくということがどういうことなのか、そういう気持ちがどこかにあって言葉になったと思う。賞をきっかけに書き続けていく先でまた何かを続けていく傲慢さにぶつかることが出てくると思うがその傲慢さと向き合って書き続けていく」と決意を述べた。

直木賞の真藤氏は、「今日はジャージでなくスーツで来た。直木賞はすごいと感じたのは受賞が決まってからジャージが6着くらいお祝いで送られてきたこと」と会場を沸かせ、「『オール讀物』の自伝エッセイにうだつの上がらなかった日々のことを書いた。僕は追いつめられると寝てしまう癖があって頭がオーバーヒートして惰眠をむさぼってしまう。小説を発表した後は惰眠と果報待ちのパターンに陥っていたが、今後は小説が降りてくるのを待つのではなく、作中人物のようにフェンスを乗り越えて戦果を掴みとりに行くようなそういう書き手になりたい。惰眠と果報待ちの日々とはさよならをして小説を書いていくことで次の世代、新しい時代の書き手の燃料となり肥やしになっていければこんなに嬉しいことはない。今日は忘れられない一日になった」と感慨を述べた。
この記事の中でご紹介した本
宝島/講談社
宝島
著 者:真藤 順丈
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
ニムロッド/講談社
ニムロッド
著 者:上田 岳弘
出版社:講談社
以下のオンライン書店でご購入できます
「ニムロッド」出版社のホームページはこちら
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