岡本太郎×金子兜太×寺山修司 現在の前衛とはなにか ――三人の芸術家大いに語る‥‥ 『週刊読書人』1969(昭和44)年1月6日号(12/30日合併)|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月3日 / 新聞掲載日:-0001年11月30日(第757号)

岡本太郎×金子兜太×寺山修司
現在の前衛とはなにか ――三人の芸術家大いに語る‥‥
『週刊読書人』1969(昭和44)年1月6日号(12/30日合併)

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1969(昭和44年)新年号
2-3面
一九六八年は、ハプニングとかサイケデリック、キネティック・アートなど、様々な前衛風な手法がもてはやされた。また“思想の前衛”を自負する学生運動の闘士たちは体制に闘いを挑み続けてきた。しかし、混沌とした社会的文化的情況の中で、“前衛らしいもの”は百出するが、それらが果して“真の意味の前衛”だと言えるだろうか。そこで、前衛芸術家岡本太郎氏、「天井桟敷」を主宰する寺山修司氏、前衛俳句の金子兜太氏に「現代の前衛とはなにか」を大いに語り合ってもらった。(編集部)
第1回
孤独な像を描く“前衛” 民衆のエネルギーがサイケ調に

金子 
 岡本さんのアヴァンギャルド宣言は、たしか一九四九年だったと思うんですが、基本態度としての対極主義、あれはエネルギッシュで、その爆発力で暴いた日本探検や伝統論は有効だった。
岡本 
 むかしは、インテリというか、エリートが実際前衛だったと思うんですよ。だが、いまは、エリートじゃなくて、むしろピープルのほうが、ある意味では問題を進めているような気がするな。むしろインテリなんか、それに引きずられている。
寺山 
 かつて画家はキャンバスに世界を描いていたわけですが、だんだん、キャンバスに描くことに疑問を感じ出した。画家というのは描く人であって媒体はその手段にすぎない。本質よりも行為が先にあるべきだということから、「描く」ということだけを人格化するようになったわけです。キャンバスの概念を取っ払って、公園のベンチや樹に描いたり人間の肌に描いたりするようになってきた。ゆくゆくは地球を塗りかえるという形で世界概念を考えていく。これは媒体の拡張じゃなくて、行為を画家の本質より重んじはじめたというきわめて原始的な現象です。演劇でもそうです。初体験意識を思い出さなければいけない。
岡本 
 一つ言えることは、前衛という以上一種孤独な像を描かかなければいけないんだけれども、いつでも孤独な存在というのは、そういっぱいいるわけじゃない。いまはやりの、かっこいいことをやっているモダーニストと区別しなければいけないことだな。たとえばいま俗に前衛らしいものというと、サイケデリックとか、キネティック・アートとか、いろいろあるでしょう。――もちろんそのおもしろさはあるけれども、ほんとうに自分の肉体から発したものじゃなくて、パターンとして輸入されたものだ。これはアメリカで公認され、アメリカからきたんだとなると、それに対して反対声明をする人もいないし、商業ペースにもどんどん打ち出されてこれが力になっている。そういうものが前衛であるということは意味ないわけなんで。つまりモードじゃね。レジスタンスがなくて前衛は考えられない。だがそういった意味のレジスタンスを、いまや喪失している時代だ。

と同時にピープルのモヤモヤしている日常の感情が、それを借り出てきている。だからサイケデリックとか何とかだというパターンはどうでもいいんで、むしろ一般民衆のエネルギーみたいなものが、かりそめにサイケ調になって出てきたり、アメリカ風のビート族の形で出てきている。そういうふうに考えたほうがいいんじゃないか。
寺山 
 きのうの前衛は前衛じゃないわけです。過去は一切比喩にすぎない。歴史は必然的なものだとしても、ものを創造するということは偶然的なことだ、という認識が問題だ。前衛とはその意味では現在進行系でとらえるべきであって、体系化を急ぐべきじゃないでしょう。
岡本 
 しかし、そこにも二つの意味があるね。「きのうの前衛」と言うと解りやすいんだけれども実は、現在の前衛に対する孤独な戦いというモメントがあるんで、たまたま「きのうの前衛」ということばを使ったけれども、実は君は「現在の前衛」についても言っているかもしれないんだ。きのうということばに引っかかってしまうと、また問題が、展開できないおそれもある。
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