日本の〝穴場〟探訪 〈第二回〉吉見百穴 田村 収|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日本の〝穴場〟探訪
更新日:2019年3月19日 / 新聞掲載日:2019年3月15日(第3281号)

日本の〝穴場〟探訪 〈第二回〉吉見百穴
田村 収

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Ⓒ田村 収
「百穴」の代表格である吉見百穴は、埼玉県比企郡吉見町にある。古墳時代後期の遺跡で、国の史跡にも指定されている。

東松山駅から路線バスに乗り、その名も「百穴入口」のバス停を降り、歩いて5分。入場料300円を払って中に入ると、小高い山に夥しい数の穴の開いた光景が広がる。後付けされた階段を登り、一般の大人の体格では入りにくい小規模な横穴を覗き見て歩く。総数219基の横穴墓は、江戸時代中期から「不思議な穴」として興味をもたれていたそうだ。明治時代に帝大(現東京大学)の大学院生だった坪井五郎氏が発掘調査を行ったところ、勾玉類・金属器・土器類など多数の遺物が出土したため、その後の調査で横穴墓と確定するまで、「百穴は先住民族(コロボックル)の住居跡である」と言われていた経緯も面白い。

ここのもう1つの特色として横穴墓の他、第二次世界大戦中に地下軍需工場用に掘られた巨大な洞窟がある。トンネルは幅4ⅿで高さ2・2mの馬蹄形、現在公開されている部分は全体の10分の1に及ばず、長さは500ⅿ四方にわたっている。爆撃機のエンジンを制作する工場用地として設けられたのだが、本格的な生産活動に入る前に終戦となった。 中に入ってみると素堀の岩肌の薄気味悪さと、闇間に点灯する蛍光灯やヒンヤリと漂う空気を、怖がる子供が何人もいた。この特異なシチュエーションに飛びついたのが特撮TV業界で、過去に仮面ライダーの敵のアジトやウルトラマンの戦闘シーンなど、いくつかの作品の舞台として登場したという。

ヒカリゴケの生息地でもある吉見百穴では、近接の施設で土偶や勾玉の制作教室も開かれていて、今では子供たちの夏休みの自由研究や工作から、肝試までが体験できる、絶好の場所となっている。(たむら・おさむ=写真士)
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