菊地成孔・冨永昌敬(司会=福島勲)公開トーク載録 デュラス/ゴダール対話と映画の夜 トークイベント『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』(読書人)をめぐって|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月15日 / 新聞掲載日:2019年3月15日(第3281号)

菊地成孔・冨永昌敬(司会=福島勲)公開トーク載録
デュラス/ゴダール対話と映画の夜
トークイベント『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』(読書人)をめぐって

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フランスを代表する作家マルグリット・デュラス、フランス映画界の巨匠ジャン=リュック・ゴダール。この二人の最新映画が二〇一九年、相次いで日本で公開される。二月二二日から上映がスタートした映画『あなたはまだ帰ってこない』は、マルグリット・デュラス原作の自伝的小説『苦悩』(田中倫郎訳、河出書房新社/原題:La Douleur)を映画化。ナチス占領下のフランスを舞台にレジスタンス運動により捕えられた夫ロベール・アンテルムの強制収容所からの帰還を待ち続ける苦悩の日々を描く(東京・渋谷のBunkamuraル・シネマほか全国で順次公開)。今年のGW(四月〜)から公開される、ジャン=リュック・ゴダール監督最新作『イメージの本』は、イメージと音を多用し、絵画、映画、文章、音楽を巧みにコラージュした五章からなる作品で、ゴダール本人が全編にわたってナレーションも務めている。昨年五月のカンヌ国際映画祭では、映画祭史上初の最高賞「スペシャル・パルムドール」を受賞し、世界中の映画ファンを湧かせたことも記憶に新しい。

これに先立つ一八年秋、読書人では対話集『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』(マルグリット・デュラス/ジャン=リュック・ゴダール著、シリル・ベジャン編、福島勲訳、読書人/原題:DURAS/GODARD DIALOGUES)を刊行した。本書はデュラスとゴダールが過去三回にわたって対話し、その記録の一部が邦訳されていた三つの対話を、フランス現代出版史資料館(IMEC)のマルグリット・デュラスアーカイブに残る資料から完全再現した対談録を翻訳刊行したもので、二人の関係性のみならず、偉大な二人の作家を理解する上でも貴重な証言になっている。本書の刊行、および映画の公開を記念し、ジャズミュージシャンで『菊地成孔の欧米休憩タイム』(発行:blueprint)などの映画批評の本も執筆している文筆家の菊地成孔氏、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(一八年、原作:末井昭)を監督した映画監督の冨永昌敬氏、早稲田大学准教授で本書の翻訳者である福島勲氏の三者による公開トークイベントを、東京・神田神保町の「読書人隣り」で開催した。その一部を紙上再現する。近日、二時間にわたるトークの全容を「読書人ウェブ」にて有料配信の予定。(編集部)
第1回
デュラス/ゴダール本と映画と

福島 
 本日二月二二日は、映画『あなたはまだ帰ってこない』の日本公開初日で、来たる四月にはゴダールの新作『イメージの本』が、ほぼ世界に先駆けて日本で公開される予定です。後者はフランスの方ではいろいろな事情があるらしくまだ公開に漕ぎつけていません。スイスでは自主上映のような、ゴダールの設えた理想的な視聴環境、ある種現代美術のインスタレーションのような形で国内を巡回しているそうです。日本はそのような視聴環境ではありませんが、かなり早い時期の公開です。ゴダールとデュラスというとてつもなく巨大な二人の映画の公開が、たまたま平成の終わりの日本で重なるという偶然に驚いています。実際、昨年十月、『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』を読書人から出版した時は、まさか数カ月後にこの二人が日本で「再会」することになるとは夢にも思っていませんでした。この幸福な偶然を祝し、本日はミュージシャンで文筆家の菊地成孔さんと映画監督の冨永昌敬さんのお二人にご登壇いただき、デュラスとゴダール、映画、そしてこの本について語っていただきます。お二人は以前から一緒にお仕事をされていて、冨永さんの映画に菊地さんが音楽を付けられたり、一番最近では冨永さんの映画『素敵なダイナマイトスキャンダル』に菊地さんがアラーキーこと荒木経惟役として出演されていたり、このとても深い仲のお二人に今日はフリースタイルで自由に語っていただきます。
菊地 
 ゴダールとデュラスの映画が今年日本で公開されるということですが、デュラス原作の映画がデュラス没後に映画化されるのはこの作品が初めてだと思うんです。今日のオブジェクトはゴダールの映画『イメージの本』、デュラス原作の映画『あなたはまだ帰ってこない』、そしてこの本『ディアローグ デュラス/ゴダール全対話』という三題噺だとして、断トツで面白いのはこの本です。映画を見損なっても全然後悔する必要ないし人生に何の影響もないですが、この本を読み落とすとほぼほぼゴダールとデュラスに興味のある人にとっては死ぬほど後悔することになる。ですので、この本は絶対に買って熟読してくださいというのが最初に申し上げることです(笑)。
冨永 
 今日は翻訳者の福島さんもいらっしゃるので、この本のパンチラインをお話ししながら、本書の読みどころをみなさんと共有したいと思っています。
菊地 
 ゴダールは難解な人なので本を読んで挫折した経験を持つ人も多いと思いますが、今回出た本はゴダールとデュラスに関する本の中で一番わかりやすくて面白いです。まず平明に読めますし、かつ面白い。平明である故に中身が薄いということではなく、かなり貴重な話をしているんです。
冨永 
 僕はゴダールの本を一冊読んで挫折したので他の本は分からないのですがこれは断トツ面白かったですね。
菊地 
 何が面白いって、あのゴダールがずっとタジタジしている対談なんです。ゴダール(Godard)はスペルの三文字を取って〝GOD〟と呼ばれていて、カンヌ映画祭でも「今日はGOD(神)が来てます」というくらい神域にいる人、映画の神ですね。『イメージの本』はカンヌでパルムドールを獲ったって雑に紹介されちゃうのですが、実は「スペシャル・パルムドール」といって、カンヌで今年初めて設置された名誉パルムドールみたいなことなんです。今年のパルムドールはみなさんご存知の通り『万引き家族』で、ゴダールの映画は『万引き家族』より上なんだと。その話を聞いた段階でちょっと笑ったのですが、ゴダールがあと何作出すかわかりませんが、全作「スペシャル・パルムドール」にしておけばいいみたいなこんな元も子もないような話は初めて聞いて非常に痛快に思ってますけれど。
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この記事の中でご紹介した本
ディアローグ デュラス/ゴダール全対話 (DURAS/GODARD DIALOGUES)/読書人
ディアローグ デュラス/ゴダール全対話 (DURAS/GODARD DIALOGUES)
著 者:マルグリッド・デュラス、ジャン=リュック・ゴダール
翻訳者:福島 勲
編集者:シリル・ベジャン、明石 健五
出版社:読書人
以下のオンライン書店でご購入できます
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