連載  ベルイマンの映画   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く98|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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ジャン・ドゥーシェ氏に聞く「映画/映画作家/映画批評」
更新日:2019年3月19日 / 新聞掲載日:2019年3月15日(第3281号)

連載  ベルイマンの映画   ジャン・ドゥーシェ氏に聞く98

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メキシコにて(1985年)
JD 
 ベルイマンは偉大な映画作家であることは確かです。ただ、その点については注意しなければいけません。ベルイマンが偉大な映画作家であると理解できるようになったのは、ある時期に突如として、人々の映画に対する見方が変化したからなのです。彼が新たな物語の形式を生み出していると、人々が理解する必要があったのです。
HK 
 ベルイマンの原動力は物語から来ているのでしょうか。確かに、時代を経ても面白い話ばかりです。
JD 
 長年にわたり、人々はベルイマンの物語を理解することができなかったのです。最初期の数本はまだ理解できるも範疇のものです。しかし、彼の持っていたエクリチュールは、すでに、その時代の作家のものではなかった。その時代の映画作家であれば、本来は……サイレントとトーキーの関係から歴史を追いましょう。トーキーが流通し始めるのは1930年からです。映画の耽美主義者たちにとっては、映画の歴史上これほどない大惨事でした。それまでの映画の規則が通用しなくなり、映画という発明を演劇が阻害することになったのです。結果、トーキーの可能性とサイレント映画を信じる人の間には大きな論争が生まれました。ルノワールのように本質的なところでトーキーを必要としていた作家がいた一方で、チャップリンのようにサイレント映画の中で自らの映画を完成させている作家たちもいたのです。その時代のフランスを例にすると、アンリ・ジャンソンに代表されるセリフ作家たちによる映画が、強い力を持っていました。そのようなセリフ作家たちは、会話こそが映画であると強く主張していました。そのために、当時の映画監督たちは言葉というものに対して引け目のようなものを感じることにもなったのです。多くの映画監督たち、それだけではなく映画に関わる多くの人たちは、映画はセリフで出来ており、それに加えて演出を行おうと考えていたのです。これこそが、マルセル・カルネの行ったことです。カルネの映画からは、「私がいかにして偉大な映画作家であるのかを見ろ」という態度が見えるはずです。しかし同時に、彼の映画を生かしているのは、ジャック・プレヴェールもしくは他の偉大なセリフ作家による仕事です。一方でルノワールは、いつも自分自身でセリフまで書いていました。
HK 
 それは、ルノワールが無声の映画をよく知っていたからではないですか。彼の場合は、映像から音を考えることから始めたのではないでしょうか。
JD 
 そのような面もあります。しかしそれは、また別の事柄です。重要なのは、その時代に演劇的会話法の問題があり、同時に映画監督たちがサイレントの時代のようにして映画を作ろうとしたということです。長年にわたり、映画を作るための問題は、、そのような構造の中にあると考えられていたのです。しかし、ベルイマンが現れた時から、問題点がわからなくなってしまった。それまで存在していた「映画を見ろ」という態度は、映画の変化の中で自然と消えてしまうことになりました。ベルイマンの映画は決して洗練された言葉のやり取りではなく、その反対に言葉が過剰でもあったのです。当時の批評家たちは「話しすぎである」と評していました。ベルイマンは、視覚による表現技法の背後にあるものを隠すことなどありませんでした。実際のところ、本当の映画とはベルイマンが作りあげたものであり、カルネが行ったものではないということは、自然とわかるはずです。そして、同じことは他の作家に対するルノワールにも言えます。ルノワールが行ったことは、生に使えるものとしての映画であり、映画で作られるものを見せることではありません。このような理解から、サイレントからトーキーへ移行する中での、映画演出法の進展を理解することは、非常に面白いと言えます。
HK 
 確かに言われた通りかもしれません。僕の理解では、ベルイマン映画の原動力は、音にあります。
〈次号につづく〉
(聞き手=久保宏樹/写真提供=シネマテーク・ブルゴーニュ)
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