第21 回大藪春彦賞 第2回大藪春彦新人賞 贈賞式|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月15日 / 新聞掲載日:2019年3月15日(第3281号)

第21 回大藪春彦賞 第2回大藪春彦新人賞 贈賞式

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左から、馳氏、今野氏、西尾氏、葉真中氏、河﨑氏、藤田氏、黒川氏、大沢氏

三月一日、第二十一回大藪春彦賞、第二回大藪春彦新人賞の贈賞式が港区新橋の第一ホテル東京で行われた。大藪春彦賞は河﨑秋子『肉弾』(KADOKAWA)、葉真中顕『凍てつく太陽』(幻冬舎)に、新人賞は西尾潤『愚か者の身分』(「東京・愚男ダイアリー」改題)に決まった。

まず選考委員の黒川博行氏より、大藪春彦賞の選考経過が述べられた。「今年はおのおのが推す作品がはっきりしていて、もめることなく決まりました。最初に、『凍てつく太陽』と『肉弾』と深緑野分さんの『ベルリンは晴れているか』の三つが残りました。大沢在昌さんと僕は、『凍てつく太陽』を推しました。藤田宜永さんが『肉弾』を推しました。それで結局、ダブル受賞ということにしましょうと。『肉弾』は非常に筆力があった。葉真中さんはリーダビリティがあって、面白い小説を書こうというセンスがあると思いました」と話した。選評は『読楽』三月号に掲載されている。

大藪家の皆さんから受賞者に顕彰盃が授与されたのち、河﨑氏より受賞挨拶があった。「プロフィール欄に、羊飼い・作家と書くと、ネタかと思われますが、実際に羊飼いと酪農の仕事をしておりまして、いつもですとこの時間帯は、牛の搾乳の時間帯にあたります。それがこのような華々しい場所に立たせていただくことになりありがたく思っております。デビューから二冊目ですが、書けば書くほど自分の足りないところや、勉強しなければいけないところをまざまざと見せつけられて、この先に山脈がずっと連なっているように思うのですが、今回素晴らしい賞をいただき、このまま山道を進んでいけばいいんだよと背中を押していただいたような気分になっております」

葉真中氏は、「これまで比較的現代の社会問題をテーマにしたミステリ小説を書いていたのですが、今回は戦争中の、しかも自分の出自と関係のない北海道の少数民族・アイヌの方がでてくるような作品を書かせていただきました。デリケートな部分に触るところもある作品なので、書く資格があるか判断はつかないのですが、こういうかたちで評価をいただいたことで、世に出した意味があったのかなと思うことができました」

次に新人賞について、選考委員を代表して馳星周氏が「最初の一行を読んだところで、読みたくないなと思いました。日本語になってなかったからです。ただ読み終わったときには、この作品を推そうと思っていました。他の候補作品はそこそこ手堅くまとまった作品でしたが、これは大藪春彦の名前を冠した新人賞ですから、やはり突き抜けたものが欲しい。『愚か者の身分』も突き抜けているかというと、そこまではまだいっていません。ただ作者の描こうとしている世界は、普通の書き手とは異質なものだと思いました。出版不況の中、短篇の新人賞でデビューしてもプロとして食って行けるかどうか、そこに至るまでにはいろいろなハードルがあると思います。が、この書き手ならハードルを越えていく可能性があるのではないかと思い、今野さんも賛同してくれて、この作品に受賞が決まりました」と話した。

乾杯の発声は昨年大藪賞を受賞した、呉勝浩氏と佐藤究氏が行った。呉氏は『肉弾』について「非常にパワフル、というより野蛮という領域まで踏み入った作品で、非常に刺激を受けました。このテクノロジーの時代に、野蛮をどのように捉えて、どう書いていくのか、書き手として非常に興味深かったですし、こういう作家が出てきたのは焦りを感じました」と話した。佐藤氏は「両作品とも舞台が北海道であることと、夢のシーンから始まるのが印象的でした。葉真中さんの作品にあった、カムイモシリ(神の世界)とアイヌモシリ(人間の世界)、この二つの間に人間の暴力性が行きかっていることが、大藪先生の世界そのものではないか、と感じました」と挨拶して乾杯となった。
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