【横尾 忠則】空を持ち込め。直感よりもぼくの躰が知っている。|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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日常の向こう側ぼくの内側
更新日:2019年3月19日 / 新聞掲載日:2019年3月15日(第3281号)

空を持ち込め。直感よりもぼくの躰が知っている。

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2019.3.4
 河出書房新社の岩本さん、豊島横尾館の写真と作品を中心にしたガイドブックの編集の追い込みにやや焦り気味。ぼくは綿密な計画に従って作るタイプじゃないのでプロセスでどう変化するか分らないので編集者泣かせかも知れない。
アトリエにて鄭衍偉さんと(撮影・徳永明美)
2019.3.5
 中国のメディア「一条」の取材に6人ばかり、このところ中国、台湾のメディアの集中的な取材を受けているが、今日のインタビュアーは鄭衍偉さんというぼくの自伝「波乱へ」を翻訳した訳者。自伝の翻訳者だけにぼくのことに詳しい。質問も論理的で、普段の話し言葉ではなく、文章言葉で、その上イントネーションが中国的なのか、分らないことが多い。この自伝は翻訳部門の文学賞を受賞しているが、きっと硬い表現で翻訳されているために「文学」として評価されたのかも知れない。なんでもないぼくの文章を観念的な言葉で表現した中国的言語で読んでみたいとも思う。

今日は中国旋風に掻き廻されて、1点しか描けなかった。

自宅の門から玄関までのアプローチが砂利道なので、再度、下駄骨折(足の側面をくねって生じる骨折)をしないようにバリアフリー的舗装に変更する。工事は一日で完了。

夕方、整体院へ。週一の割りで施術を行って貰っているが、凝った筋肉をほぐすと同時に自律神経を整えることを目的としている。
2019.3.6
 〈海外旅行デ頭ガ痛イノハ土産物ノ買物ダ〉というわざわざ夢にするような夢でもない夢を見る。

日本経済新聞出版社の苅山さん来訪。目下計画している本について話している間に、全く別の企画に話が発展してしまう。成り行きに従うタイプのぼくは、サプライズ大歓迎で話があらぬ方向にころがってしまう。

午後、スカイザバスハウスの白石さんが個展の進行具合を偵察に来る。見せる段階ではないが、アメリカの美術誌「アートフォーラム」に広告を載せたいので新作をと言うが、その新作が出来てないので、乱雑に散らかったアトリエの絵具や筆などの写真を載っけたら? と提案する。

夕方まで、小品1点描く。本当はもっと焦らなきゃいけないんだろうが、ヤケに落ちつき過ぎる。
アトリエにて滝沢直己さんと(撮影・徳永明美)
2019.3.7
 昨日は思いもよらず10時間、夢も見ないで熟睡したために、夕べはウツラ、ウツラ。

午前中、アトリエで1点仕上げる。計33点になるけれど、これじゃ少ない。50点は欲しいかな?

天皇、皇后の専属デザイナーの滝沢直己さんが、カルティエの肖像画集に掲載されている自分の肖像画の原画が見たいと、プレゼントに新作のシャツ持参で来訪。また去年ちょっと体調を崩した時、読んだ本に救われたと言って『まんがでわかる自律神経の整え方』(イーストプレス)と『健康の正体』(セブン&アイ出版)、共に小林弘幸著を贈呈してくれる。
2019.3.8
 6時間就寝のあと早朝6時、朝食前に小品1点描く。

『アートコレクターズ』の徳岡さんが、『カルティエ そこに集いし者』(国書刊行会)の著者インタビューに。この本の取材や書評が特に多い理由は何んだろう?

今日も1点。
2019.3.9
 〈西城秀樹が現在フリーニナツタノデ快適ダ〉みたいなことを言っている夢を見る。死んだことを「フリー」と言うのは面白い。現世からのシガラミと病気から解放されて、自由な感触を味わっているのだろう。

昼、久し振りに桂花へ。帰路鯛焼屋に寄るが、群がる女子高生に圧倒されて、そのまま買わずにアトリエへ。

3時頃、桂花の主人が、風月堂のおはぎ3個の差し入れに。鯛焼が化けておはぎに、どっちも大好物。「それにしても、何んでおはぎを?」「何んだかひとりで食べるとバチが当ると思いましてねえ」

おはぎパワーで一気に4点も描けてしまう。
2019.3.10
 〈アトリエ近クニ「オバチヤンノ鯛焼屋」ガデキテ早速買イニイク〉夢は、昨日の現実の続きで、できすぎた夢だけれど、わざわざ夢にすることもない夢じゃないの。夢はもっと超自然的でなきゃ、無意識としての価値がない。

今日の収穫2点、計42点。今まで直感に頼っているところがあったけれど、今はその直感を必要としていないような気がする。次々やることを躰が知っているような気がするので、それに忠実であれば自然に物と事が活動する。だから無とか0ではなく、物と事に空という発想を持ち込めばいいような気がする。というのは空は無限だからだ。(よこお・ただのり=美術家)
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