めくるめく短歌たち / 6654(書肆侃侃房)具体的なエピソードから短歌を紹介 錦見 映理子|書評専門紙「週刊読書人ウェブ」
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更新日:2019年3月19日 / 新聞掲載日:2019年3月15日(第3281号)

具体的なエピソードから短歌を紹介
錦見 映理子

めくるめく短歌たち
著 者:錦見 映理子
出版社:書肆侃侃房
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 本書は、「NHK短歌」に三年半連載したエッセイを中心にまとめたものです。楽しく短歌を知ってもらえるように読みやすく書きました。今生きている歌人の、比較的手に入りやすい歌集を多く紹介しています。

短歌をどのように読むと面白いかは様々な切り口がありますが、本書では、私が歌人たちと交流する中で見つけた具体的なエピソードを通して、それぞれがなぜこのような歌を作るのかを解説しています。
蚊に食われし皮膚もりあがりたるゆうべ蚊の力量にこころしずけし 
内山晶太『窓、その他』

この歌の紹介には、文鳥が放し飼いにされているカフェに歌人七名で遊びに行ったときのことを書きました。七名の中で、内山さんだけがなぜか異常に鳥たちに好かれてしまったのです。頭にとまったり、口の中に入ったりする文鳥の雛たちに翻弄されながら、内山さんは楽しそうでした。一体なぜ彼一人だけが、そんなに小鳥たちに好かれたのでしょう。

「元気な雛たちに顔をつつかれそうになっても何をされても、驚く様子は全くなかった。さすがに目元をつつかれそうになったら普通は防御すると思うのだが、内山さんはしない。されるがままなのだ」。それと前出の歌がどのように関係があるのかを、本書ではこのように解説しています。「蚊に食われた不快より、皮膚の盛り上がり方に力を感じて心が満たされる」「内山さんは全身で感じようとする歌人だと思う。文鳥に触れてその体の感触を味わうことの幸福が強すぎて、異様なほどつつかれても身の危険を感じないのだ。そうした心のありようが、たくさんの秀歌を生み出すのだと思う」。
雪まみれの頭をふってきみはもう絶対泣かない機械となりぬ  飯田有子

今ではもう手に入りにくい歌集も少し取り上げています。二十年ほど前に話題になった飯田有子『林檎貫通式』や本田瑞穂『すばらしい日々』などです。これらは文体やテーマの新しさに時代がついていけず、正当な評価をされないまま今に至っている歌集です。歌集は誰にどのように読まれるかによってその評価が決まるところがありますが、私は本書で、これまでの評価を修正して今こそ再読すべき歌集も、何冊か示したかったのでした。

巻末につけた対談の相手は、穂村弘さんにお願いしました。近年の短歌の世界を担ってきた一人である穂村さんに、私の読み方をどう思われるかお聞きしてみたかったからです。そういう意味では本書は、気軽な読み物でありつつ、ゼロ年代に登場した女性歌人たちの現在の位置づけを修正しようとした書物でもあると思っています。(にしきみ・えりこ=作家、歌人)


インベカヲリ★写真展

神保町画廊にてインベカヲリ★さん
340px用写真のキャプション
理想の猫じゃない
開催中~3月24日(日)
開廊時間13時~19時/休廊日 月・火
神保町画廊(東京都千代田区神田神保町1-41-7安野ビル1F)
この記事の中でご紹介した本
めくるめく短歌たち/書肆侃侃房
めくるめく短歌たち
著 者:錦見 映理子
出版社:書肆侃侃房
以下のオンライン書店でご購入できます
「めくるめく短歌たち」出版社のホームページはこちら
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